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わたしを探さないでください

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通訳・翻訳者リレーブログ

この3カ月ほど、通常営業に加え、ある世界的前衛画家の本に、取り組んでいました。いや、格闘しておりました。個人的にも、前々から好きだった芸術家。その分、気持ちも入り込み、それだけにとても楽しくもあり、少しばかりシンドくもあり。淡々と、黙々と、まるで修行僧のような日々でした。

それも先週で、いち段落。いまホッと一息ついているところ。取り敢えずは。あとはタイトル付けやリードなど、細々とした部分と、文字校とか文字校とか文字校を残すのみ。そんなこんなの諸事情により、まる一週間、のんびり過ごすことにしたのであります。

——月曜日——

大好きな写真家が参加する、合同写真展を観に、新宿の某所まで出かける。しばらく前から開催中で、この日が最終日。滑り込みセーフです。
ひと通り観て痛感したのは、好きな作風は、とことん好きなんだなあ…ということ。今回も15人ほどのベテラン勢参加者中、紛れもなく、もう断トツ。ド真ん中を、また射られました。へなへな。

たいそう御満悦で会場を後に。次の目的地は伊勢丹。大リニューアルしたばかりの、本店の視察です。

おっ、表玄関から凄いぞ! 昔の重厚な装飾が、見事復活したのですね。断然興味が湧いてくる。さっそく参るとするか。
おっとその前に、まずは腹ごしらえだ。これ鉄則。でないと、単なる視察(=ウィンドー・ショッピング)が、あっという間に、恐ろしいことになるから。

店に入るな空腹時。

本日は迷わず、そばの気分。ちょっと贅沢に、季節の野菜天ぷら付きで。あっ、天そばってのは、イケませんゾよ。せっかくのサクサク天ぷらを、わざわざベチャベチャにする意味が、わたしにはまるで理解できない。
この店のざるそばは、薄っすら積もっている程度。分かりやすく言えば、3口で完食…といったところか。でも、味はいつも最高です。
“薄っすら積もっている”…で思い出すのは、むかし数日間アテンドした、某人気ロック・ミュージシャン。日本の食事は、量が信じられないほど少ないと、嘆き悲しみ、注文した料理が出てくるたび、“これは3口”とか、“これは4口”などと、呟いていましたっけ。まあ、気持ちは分かりますが。ステーキ頼むと、ウシ1/2頭分、平気で皿に乗っかってくる、あなたの某御国アメリカと比べたら、まるでアリん子のような日本の食事ですから。

そんな話はさて置き…。
さあ、視察視察。

おっ! 一階イベント・エリアに、いきなり大好きなグッチだ! イタリアから来日している職人が、そのプロの技を御披露目中。“本物”とはなにか。まざまざと見せつけられました。

うっとり見つめている時、場内放送が流れます。
あっ、そうですよね……。

2:46PM——黙祷。

直前まで、あれだけ賑わい華やいでいた買物空間が、その瞬間、音も動きも何もかもが、すべて静止し、その場に居合わせた皆のこころが、ひとつどころを向き、それぞれがひとつのことを想う。3月11日、それぞれの物語を…。
ひとは過去の場面場面を、その時々の空気感、匂い、風の音で、覚えているものですが、2年前のこの瞬間も、こんな感じだったことを、強く覚えています。

悲しみ。それはけっして癒えることはないけれど、それでも各々が、それぞれのこころの中、その悲しみの置きどころを、見出すことはできる。その悲しみと共に、生活してゆく術を、少しずつ身につけていける。歳月は、その手助けしてくれる、優しさたっぷり秘めている。

今年は、被災地に赴こうと思います。それは日本人として、いや人として、一度はやらなければならないこと。その光景と、そこで感じた思いを、自分の中のどこかに、しっかり刻んでおきたいと思う。きれいごとなどではなく。画面に映り出される景色を見るのと、実際そこへ足を運ぶのとでは、まるで違うと思うから。

さて、ふたたび大リニューアル伊勢丹。

上から下まで、バババッと観て歩く。
しかし…うーん…。正直なところ、彼等が何を思っているのか、まだまだ見えてこない。だいたいこの時代、どこを目指せばいいのか。ターゲットは? 眺めている分には、楽しいし、ワクワク幸せな気分になれる。文字通り“ファッション美術館”です。しかし商いとしては、どうなのだろう。大丈夫なのか? などなど。
むかしは、焦点がはっきりしていました。あのとんがり感は、デパートの中で抜きん出ていた。20—30代の頃、つまりシャボン玉まだ周辺浮遊中の時代、とことんお世話になりました。学生時代には、売場でアルバイトもしましたし。なので、陰ながら応援しているのですが…。

そうそう、今回の大リニューアルに際し、送られてきた雑誌は、実にハイ・クオリティーなものでした。文章といい、デザインといい、丁装といい、アートしていて素晴らしい。

その後、H&M⇒ZARA⇒TOPSHOPと、ファースト・ファッション詣で。いつものパターンです。ZARAは優等生OL、キレイなお姉さん系。便利だけれど、面白味に欠ける。H&Mはとんがっていて、ロック寄り。TOPSHOPも同じくですが、価格設定がやや高め。
そうそう、H&Mの“ご自由にお取りください”季節の小冊子も、いつもオシャレでステキです。

話が行ったり来たりしますが…。
このようなブランドとハイファッションとでは、素材も縫製もポリシーも歴史も、何もかもが異なります。それに加え、例えば先のグッチなどの、腕一本で勝負している職人の、その技術&労力は半端ではない。こちらはそれに対する額を払うわけです。敬意を込めて。今更言うまでもなく。
あれはあれ、これはこれ。もちろんどちらもステキ。良し悪しの次元ではなく。しかし最近はどうも、何がなんでも、安ければ良いという傾向にあります。それどころか、タダで何でも手に入れようとする。アプリやネットなど、実際タダで手に入るものが多いので、無理もない感覚ですが。しかし創り手に対する、敬意や想像力だけは、なくさないで欲しいのです。

話がどんどん飛びますが…。
図書館で本を借りるという行為も、同じですよ。以前にもここで書きましたが(『この業界の現実、作り手の思い』07/09/26)、未成年や年金暮しの人は別として、それは稼ぎある者のやることではありません。作家が書き編集者がまとめた、大切な大切な作品を、タダで読もうだなんて、あまりに虫が良すぎる。食い逃げと同じですよ。
考え方は人それぞれ。はい。しかしその行為により、作家と出版社を追い込んでいること、そのことに少なからず加担していること、つまり、あなたが借りる

の一冊により、新たなる一冊が、この世に誕生せずに終わっていること。その事実だけは、どうか忘れないで欲しい。リスペクト・リスペクト!

って、なにひとりでアツくなってるんだ?
いい加減、この日をシメなければ…。

ファースト・ファッション詣でし、春物をチェックし、新宿を後にします。
そうして電車を降り、駅ビルでドーナッツ数種を購入。生クリーム、チョコレート、生クリーム、チョコレート。へへへ。それからその隣で、食材のまとめ買い。いまの密かなmyブームは、万能ねぎなのでR。マグロ丼&万能ねぎ、鯵のたたき&万能ねぎ、豚しゃぶ&万能ねぎ、炒飯&万能ねぎ、じゃがバター&万能ねぎ、味噌汁&万能ねぎ。日々、万能ねぎ。まさに万能だぜyeahネギ! その万能ねぎ&ドーナッツを抱え、ニコニコ帰宅。

さあ、明日はなにしよう。

——火曜日——

“そうだ、大掃除だ!”
朝起きたら、いきなりそんな気分になっていた。思い立ったら夢中で、時間も忘れ取り組める掃除。本日も隅々まで、ゴシゴシ・パタパタ。ピカピカになってくるのが、見ていてたまらない。なんだかこれ、翻訳作業に似ているなあ〜。

その後、陽だまりを見つけ、そこにマット&枕を置いて、日向ぼっこ。
ポカポカ・ポカポカ。光合成、光合成。猫たちはこんなこと、日々しているのか。その時の気分で、昼寝の場所を変えたりと。いいなあ、そういう生活。

そうして、夜になる。だから、寝る。

——水曜日——

レディーズデイってヤツです。だからマウンテンバイクに跨り、最寄り駅のシネコンへ。花々の香り漂う、軽やかな春風に吹かれながら。
しかしなんだ、オンナだからと、割り引くなんて。これ逆差別でないか? 女性占領車輌やら何とやら。気持ち悪っ。
まあそれはさて置き、そのレディーズ値段で、まんまと観たのは、映画ライター友達&脚本家友人お薦めの「ライフ・オブ・パイ」。あのふたりが言うのだから、間違いない…と。

で、まず驚いたのは、チケット売場が人間ではなく、機械になっていたこと。いつの間にか。時代の流れですね。なんだかなあ。

時代の流れと言えば、駅ビルにあった唯一のCDショップが、今月いっぱいで閉店です。次は何が入るのだろう…。数年前に閉じた別のCD店は、某UNIQLOになり、その隣にあった本屋には、いまは某100円ショップが入っている。
あれもこれも、時代の流れですねえ。なんだかなあ。

で、そうそう、肝心のトラVSパイ。
別れも告げず、振り返らず、森の中へと消えて行くトラ…。印象的な場面多々あり。幻想的な映像、詩的な科白、スピリチュアルなプロット。非常に哲学的で深い作品でした。あのTV宣伝は、ちょっとマズかったンでないか?

帰りに、青森のりんご1袋購入。しかし、帰宅後すぐ剥いた瞬間、“うわっ、ハズレ!” や…柔らかい。楽しみにしていたのに…。

それにしても本日の、風の強かったこと。春ナン番? マウンテンバイクはジグザグ進行。ゴーグル持ってて良かった。でも、マスクしていなかったから、喉はガラガラ。

夜、やることがなかったので、さっさと寝る。シンデレラもびっくり。

——木曜日——

友だちを誘い出そうとするも、“当日言われてもさ”…と、ことごとくバッサリ断られる。チェッ。でもまあ、わたしも同じ反応、よくしているし。仕方あるまい。

だからまずは、まとめ洗濯。いまの時季の外干し、気持ちいいですね。
その後ずっと、食っちゃ寝っちゃテレビつけっちゃ読書。

とっても穏やかな一日。

携帯は、仕事部屋に監禁したまま。何もせず、何かに追われることのない、シンプルな日々の、なんとも心地の好いこと。
昼過ぎ、宅配便が来て、慌てて起き上がる。すると、軽い眩暈がする。ゲッ。

荷物受け取り後、引き続き、7キロ&8キロと、陽だまりの取り合い。隣の部屋からは、テレビの音が聞こえてくる。

“パンダは「展示」って言うんだ” ぼんやり考える。
“風疹、流行ってるのか?” その風疹も麻疹もおたふくも盲腸も花粉症も骨折も鼻血も貧血も未経験の人間:アセる。
“華原朋美・復活” がんばって〜!

陽だまりがなくなってきたので、早めの晩ごはん。
そうしたら、やることがなくなったので、さっさと寝る。

——金曜日——

ひきこもり陽だまりダラダラ食っちゃ寝の反動からか、ちょっとアクティヴなこと、やりたくなる。それで、前々から行きたいと思いながら、これまで行く機会がなかった、立川の昭和記念公園へ行こうと思い、前夜リュックサックにカメラ&水筒詰め込み、張り切っていた…のですが……。

文字校の仕事、舞い込む。
…で…その計画は、あっけなく…ジ・エンド。

赤入れ、数時間後に無事終了。
また陽だまりの中で、読書ウィズ7キロ&8キロ。ドーナッツ&紅茶を横に置き、フカフカ絨毯に引っくり返り、本&雑誌の山に囲まれ、時間を気にせず、好きなだけ。

こんな贅沢なことしてて、い〜いんですか?
はい、い〜いんです!

しかし、いま読んでいる小説。本屋で何気なく手にした、某人気女性作家のヒット作なのですが、べとべと甘ったるくて、なんてつまらないのだろう。時間の無駄。よって途中棄権します。次は、東野圭吾氏の最新文庫本です。

食後、むかしの雑誌社仲間たちと、LINEでチャット。
その後、やることがなくなったので、さっさと寝る。シンデレラ、またびっくり。

——土曜日——

気づいたら週末。

で、数日ぶりにパソコンを開け、溜まっていたメールの返事書き。
その後、久々フェイスブックを覗く。急激に興味を失ってしまった世界ですが。だいたい、肝心のカナダ友達は誰もやっていないし。つまり彼らは、健全な日々を送っている…ということなのだと思う。
で、そのフェイスブック。いつもと相変わらずの世界展開中。“これ食べたあれ食べたこれしたあれしたここ行ったあそこ行った”。みんな自分語りに夢中だ。

ああ、やれやれ。

って、あっ、いまのわたしも、同じことしてるジャン。それもエラく長いし…。

まあ、いいや。

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記事を書いた人

サイトデフォルト

高校までをカナダと南米で過ごす。現在は、言葉を使いながら音楽や芸術家の魅力を世に広める作業に従事。好物:旅、瞑想、東野圭吾、Jデップ、メインクーン、チェリー・パイ+バニラ・アイス。

END