アジアのヒーローたち
先週発売のタイム誌(10月10日号)は「アジアのヒーローたち」の特集号でした。今年で4年目を迎えるこの特集は、ビジネスやスポーツ、芸術などの分野で活躍したアジアの人たちを、タイム誌が独自の視点で選ぶという企画です。これまで日本人は、イチローや中田英寿、松井秀喜など、スポーツ界から選ばれることが多かったのですが、今年は俳優の渡辺謙、新生銀行前代表の八城政基、国際的に有名なシェフのNOBUこと松久信幸の3氏が選ばれています。やはり「タイム独自の視点」というのがミソで、日本ではあまり馴染みのない人もいて興味深いですね。
今年の表紙(アジア版)を飾ったのは、中国の李宇春(リ・ユーチュン)という21歳の女性アイドル。中国初のアメリカスタイルの歌唱コンテスト「蒙牛酸酸乳超級女声」で優勝して以来、今や中国で大人気のようです。このほかにも、中国本土からは著書『中国農民調査』で農民を苦しめる不正の実態を暴いた陳桂棣(チェン・グイディ)と春桃(チュンタオ)夫妻、女優の張静初(チャン・ジンチュウ)、香港からは『グリーン・ディスティニー』で有名な映画プロデューサーの江志強(ビル・コン)、台湾先住民族の出身でクラウドゲート・ダンスカンパニーを創設した林懐民(リン・フワイミン)が選ばれています。
今年の特徴は、何と言っても、インドネシア・スマトラ沖地震と津波で大きなダメージを受けながら、人命救助や地域の復興に尽くした無名の人たちにも焦点を当てていることです。家族や家を失っても、一致団結して津波で崩壊した村の再生をめざすインドネシア、アチェの女性たち。津波でおばあちゃんを亡くし、トラウマで口がきけなくなった母親と姉弟を支えながら、ユニセフのワークショップで習った方法で家族に笑顔を取り戻したモルディブの14歳の少女、ザエーマ・イスマイル。こうした取材の姿勢は、タイム誌の報道範囲の広さを感じさせます。