プーチンと話そう
2週間前の雪はとっくに消えて、12月だというのに妙に暖かいモスクワ。向こう10日間の天気予報を見ても、当分雪は降りそうにありません。
早いもので、今年もあと3週間で終わりです。
2008年はロシアの「家族年」で、年初に記念のTV番組がありました。全国から様々な家族が招待され、当時大統領だったプーチンも列席。6歳位の男の子が生真面目な顔をして「ウラディミール・ウラディミロヴィッチ(プーチンのこと。スムーズに発音できなくて思いっきりかんだ。)、子どもの頃、大人になったら何になりたかったですか」と質問。
かわいいなというように、思いっきり目を細めたプーチン。記憶が定かではないけれど、「子どもの頃は、本を読むのが大好きだったから、『物語』に出てくるような戦士になりたいと思ったよ。大きくなってからは、今度は科学という名の『物語』に魅せられて・・・云々」と答えていました。それを聞いていて、プーチンは今『ロシア国民の物語』を書き上げようとしているのか、と思ったものです。
ソ連崩壊後の混乱を経た古くて新しい国ロシアには、国民をまとめ、国民に自信を取り戻させるための物語が必要です。そういう壮大な物語を書けるのはプーチンしかいないような気がします。西側諸国ではネガティブなイメージを持たれがちですが、プーチンがロシアを心底愛し、ロシアという国と国民のために身を捧げていることに偽りはないと思います。
12月4日にTVで「ウラジミール・プーチンと話そう」という3時間の生放送がありました。スタジオでプーチンが国民からの質問に答える番組です。大統領時代から年に一度やってきたのですが、今、プーチンは首相という立場であり、現大統領のメドベージェフがこの手の番組をまだやっていないことを思えば、異例と言えるかもしれません。
質問のほとんどは、事前に送られてきた質問に首相サイドが目を通しピックアップしたもの。首相という立場なので内政中心。ロシア経済も今年後半から苦しくなってきているので、景気回復の見通し、政府の支援策、失業対策、年金、障害者手当等が目立ちました。
このQ&Aから垣間見えたのは、政府が社会的弱者救済策を決定しても、末端の行政がすべきことをしていなくて、必要とする人に支援が届いていない現実。ロシアでは法律が変わっても、地域の役所職員がそれを知らないなんてことは日常茶飯事。職員も怠慢で尊大なことが少なくない。もらえるはずの手当がもらえないと訴えた人が何人かいて、プーチンが「それはおかしい。調べてみよう。」と言うのを聞いて、ふるえあがった担当者もいたのでは?(プーチンはやるべきことをやっていない末端行政にプレッシャーを与えるために、この手の質問を複数ピックアップしたのか?)
ただ、ロシアにはやはりツァーリ(皇帝)信仰みたいなものが今も残っているのかなと思いました。慈悲深いツァーリが民に善政を施してくれるのを受身で待っている。何世代にも渡りロシア人に受け継がれてきたメンタリティ。だからこそ、プーチン「崇拝」みたいになってしまう人が少なくない。
地域の役人の不正・怠慢があれば、ツァーリに訴えて何とかしてもらおうとする。だけど、ツァーリも末端まで目を光らせてはいられない。ツァーリに何とかしてもらうのを待つだけじゃだめなのでは・・・。
それは、日本も同じこと。お上まかせのメンタリティ。しかも、そのお上がいかにも頼りない今日この頃。ニュースを読むたび、ため息が出ます。民がしっかりしなくては・・・。