さるはさるの生き方
先週から通訳・翻訳者リレーブログに登場した昼顔さんのキャラクター(イラスト)がかわいくて、ちょっとうらやましい。裏話を書いてしまうと、私の場合、火曜ブログを担当する話が決まり、「キャラクターを選んでください」 と渡されたのは、さるとカメ。カメの方がかわいかったけれど、つい「ドジでのろまなカメ」(スチュワーデス物語)を思い出したのと、カメだと納期に遅れそうなイメージがどうも・・・ということで、さるに決定。事前にいくつか考えていたペンネームは、キャラクターに合わないため却下。当時8歳だった娘に「さるるん」と名付けられました。
ともあれ、火曜担当になって早10か月。ハイキャリアで他の方々のブログ、エッセイ、インタビュー記事を読むにつけ、「通訳・翻訳者」と一まとめに言うけれど、幅の広い世界だと感じます。山登りに行くと言っても、日帰り登山と、縦走と、クライミングと、山岳写真を撮るための山行では、まったく異なるように。翻訳オンリーの私にとっては通訳の世界は、まったく別世界。似て非なる世界です。同時通訳なんて私には神業としか思えません。山で言えば、岩壁をフリークライミングするようなもの??? 一口に翻訳と言っても、出版翻訳と実務翻訳では全然違うと思うし、専門分野によって、とても同業とは思えないほどの隔たりを感じます。(金融・ビジネス分野を専門とする私には、コンピュータ関連はきびしいし、医薬、機械関連はギブアップです)
私は、IR関連、経営戦略、法務関連を中心に翻訳しており、英日よりも日英の比率が若干上まわっています。翻訳は母語に翻訳するのが大原則であり、日本人が日英翻訳をすべきではないというような説を目にすると気弱になったりもしますが、実務翻訳(特に法務関連)では日本語原文が難解で三回くらい読んでようやく意味がわかるようなことも少なくないので、日本人である自分だからこそ原文の意味を正しく理解できるんじゃないかと気持ちを奮い立たせています。
翻訳した文書がWEBで公開されることもある一方で、企業の取締役会あるいはプロジェクトチームの中のごく少数(場合によっては、たった一人かも)の読み手のために日英翻訳をすることもあります。一度の会議限りの文書で読み手がごく少数だなんて、出版翻訳に携わる人から見たら信じがたい世界だろうなと思います。でも、ビジネス上の判断を下すため、ビジネスを前に進めるための翻訳に、私はわくわくします。ダイナミックなビジネスやプロジェクトの動きに関わるのが楽しいのです。
ビジネスに携わってきた経験に比べるとフリーランス翻訳者としての経験が浅いせいかもしれませんが、セルフイメージとして、翻訳者と言うよりも、ビジネスの助っ人とでも言うのか、fire-fightingに駆けつける様な気持ちで仕事をしていることも少なくありません。(米銀時代、ある部署が一時的に忙しくなった場合、他の部署から対応できるスキルを持った人員を送ることをfire-fightingと呼んでいたのですが、そんな感じです) 特に、同じ企業から継続的にお仕事をいただく場合にはその感覚が強くなります。
翻訳のニーズも多様ならば、翻訳者も多様です。山登りで言えば縦走が好きで縦走向きの私。ロッククライマーや山岳写真家の圧倒的な存在に焦りを感じたこともありましたが、自分の得意分野でがんばるのみです。あ、これ、昨日いぬさんが引用されていた「マグロにはマグロの、クラゲにはクラゲの生き方」と同じことですね。