別れの季節に
年度末。この時期は別れの季節でもあります。
我が家がモスクワに引っ越してきて丸三年が経とうとしています。モスクワの在留邦人数は1400人程だそうです。2007年10月現在の在留邦人数を見ると、第一位ロサンゼルス(61千人強)、第二位ニューヨーク都市圏(52千人弱)、第三位上海(48千人弱)。モスクワという都市の規模を思えば、在留邦人数はやはり少ないと感じます。その過半数が民間企業関係者(家族を含む)なのですが、モスクワでの平均的な勤務年数は三年のようで、今月下旬に知人友人が続々と帰国することになりました。
我が家がモスクワに引越してきた理由は、日本人であり、ロシア人でもある娘にロシア語とロシアの文化を自分のものにしてもらうため。最初からバイリンガル育児をしているご家庭も多いようですが、うちはまずひとつの言語体系の基礎を身につけてから次の言語をという方針だったので、娘は保育園を卒業するまで、ほぼ日本語のみで生活してきました。今度はロシア語を覚える番ということになったのですが、いきなりロシア語オンリーの世界に飛び込むのは無理があると思い、小さいながらも日本人コミュニティのあるモスクワを選びました。モスクワにはロシア唯一の日本人学校があります。うちの子も日本人学校に一年数ヶ月通いました。この春は元同級生のご家庭やお世話になった先生方の帰国ラッシュ。母子ともども寂しがっております。
ロシア語を身につけることだけを考えれば、いきなり現地校に入学させた方が良かったのかもしれませんが、まずは日本人学校に通うかたわら、週末に現地のプレスクールに通い、ロシア語の正しい発音を身につける目的で合唱団にも入り、ロシア語に慣れてきたところで、現地校に入学し直しました。まわり道だったかもしれませんが、間違った選択ではなかったと思います。
小学一年生というのは実に興味深い時期で、学校生活の中で、子どもの日々の成長にこんなにも驚き、感動するのはたぶんこの一年がいちばんでしょう。(動物クンが人間の仲間入りしていくような、ドラマチックな変化です) その時期に、日本人学校ですばらしい先生にめぐり会い、チャレンジ精神が育ったことは一生の宝になるはずです。
そして、今通っている現地校。入学に際して、教育の第一義的責任は家庭にあると、親の自覚を促されました。(全面的に同意します) また、親の心がまえについてのプリント各種も配られ、その中の「親の掟10カ条」(!)には、「子どもが親の望むように育つことを期待するのではなく、子どもが自分自身の生き方をするよう手助けせよ」「子どもにしてあげたことに見返りを求めるな」「この世で一番大切な出会いは子どもとの出会いだということを忘れるな」等々が書かれていました。教育水準は高いように思います。ロシア語の授業に力を入れ、とにかく大量に読ませ、考えさせることはいいことだと思っています。
日本の教育、ロシアの教育、どちらも長短あります。数年おきに日本とロシアを行き来するつもりでいましたが、実際に現地校に通うようになり、家庭で漢字をはじめとする日本の勉強もするというのはきびしく(現地校の宿題と習い事で手いっぱい)、何度も行き来するのは困難だろうと感じています。子どものロシア語の基礎ができるのに、最低でもあと一年はかかる見込みです。基礎ができたあとは、どうしようか・・・。帰国ラッシュの中、「うちはいつまでここにいるんだろう?」と先が見えず、少々ブルーです。