地下鉄爆破テロ
昨日のモスクワでの地下鉄爆破テロのせいで、気持ちが沈んでおります。うちの家族や知人は皆無事でしたが、ルビャンカ駅も、パルク・クリトゥールィ駅も、よく利用する駅だけに・・・。特に、パルク・クリトゥールィは、我が家から都心に出るために必ず通る駅で、我が家では「山手線」と呼んでいる環状線への乗換駅でもあります。昔、東京で中央線沿線の阿佐ヶ谷に住んでいたのですが、我が家は阿佐ヶ谷近辺、パルク・クリトゥールィは「新宿」といった位置関係です。ちなみに、先週のブログに書いた韓国料理店も、この駅の近くでした。
昨日は、私が風邪で体調を崩していなくて、かつ、テンナインから特急の翻訳依頼が入っていなければ、日本大使館に行かなければならない用事があったので、娘を学校に送って行った後、地下鉄を利用して出かけていたかもしれません。そうしたら、時間的に、ちょうど爆破の起きた頃に、パルク・クリトゥールィにいたと思います。爆破そのものに巻き込まれなくても、駅はパニック状態だったそうなので、言葉のわからない私は混乱していただろうと思います。
爆破テロが起きたと聞けば、誰もがカフカス(コーカサス)、特にチェチェンか、と思います。身近なところでテロが起きたことはショックですが、やはり起きたかという思いもあります。ソチ五輪に向けて、ロシアは北カフカスの問題を何とかしようとする、おそらく過激派の掃討作戦に出るだろう、そして、それに対する抵抗が激しくなるだろうとは思っていました。昨年11月には、ネフスキー・エクスプレスの爆破もあったし。モスクワでの地下鉄爆破テロは6年前にもあったし、劇場占拠事件やアパート爆破の記憶もよみがえり、またモスクワでもテロが頻発するのではないかと気持ちが暗くなります。
でも、「テロ」とか「テロリスト」とかいう言葉は、何か本質を見えにくくするような言葉だと感じています。私の理解では(浅薄な理解かもしれませんが)、チェチェン問題は、民族独立を願うチェチェン人と、石油利権の関係でそれを抑えつけるロシアという構図ではありません。ロシアが許せないのは、チェチェンを(石油を活動資金にするため)活動拠点のひとつとして、暴力的手段を用いることをいとわず中東・中央アジアひいては全世界に及ぶイスラム帝国を築こうとしている、国民国家を否定するイスラム原理主義過激派です。チェチェンの主人公であるはずのチェチェン人は、ロシア軍と過激派の双方に苦しめられているというのが実情かと思います。この過激思想は、現在の国際社会の秩序(と言えば聞こえのいいグローバリズムあるいは帝国主義)とは相容れないもので、理解し合えるとも共存できるとも思えず、暗澹たる気持ちになってしまうのです。
モスクワは、イースター(4月4日)、対独戦勝記念日(5月9日)に向けて、警戒を強めるとのことです。ここで、もうひとつ気がかりなのは、ロシア議会が、対独戦勝記念日のほかに、9月3日を対日戦勝記念日(第二次大戦でロシアが日本に勝利した日)として定めようとしていること。今この時期に記念日を設ける理由が理解できないし、9月3日という日付は8月15日に日本が降伏した後も侵略を続けたソ連を正当化するものだから看過できません。なぜ日本政府、外務省は声をあげて反論しないのでしょう。