固有名詞
このところ太陽が顔を出すことの少ないモスクワ。気温も下がり、外出時には東京では冬に着ていたようなショートコートを着ています。気温が低いのに地域暖房が入らない秋口と春先は、部屋が冷えて体調を崩しがち。気をつけていたのですが、少々風邪気味です。作業机は窓辺にあるのですが、目張りをしてもすきま風が入ってくるので、長袖3枚を着込んで膝掛けをかけて作業しています。
この週末取り組んでいた日英翻訳は固有名詞が多くて作業に時間がかかりました。企業名、商品名等を訳す場合、「唯一の正解」となる訳語を調べて使わなければならないので、数が多いとなかなか大変。また、扱っている商品が食品、飲料、玩具だったりすると、「お〜、こういう商品があるのか」とつい翻訳には必要ない検索へと脱線してしまうこともたびたび。部屋に入ってきた娘がPCをのぞき込み、「お母さん、それお仕事なの?」
こういう固有名詞が多いと、あちこちからピースを探し集めてジグソーパズルを作っていくような感じで、言葉を扱う仕事をしているという気はしません。もっとも私の場合、職業は何かときかれたら「翻訳者」と答えますが、気持ちとしては「ビジネスの助っ人」として仕事に必要な書類作成をお手伝いしているという方がしっくりきます。
固有名詞で苦労すると言えば、人名、部署名、肩書きです。いつも悩んでしまうのが、株主総会での役員選任にあたっての候補者略歴をまとめた資料の日英翻訳。部署名、肩書きなどは本来「唯一の正解」があるはずですがこちらでは調べようがない場合が多いため、依頼主に確認の上、一般的に使われている名称で訳す対応を取るのですが、いつも「この訳でいいのかなあ」と申し訳ないような気持ちになってしまいます。また、略歴に出てくる会社名が合併その他の理由で現在は存在しない場合も多々あり、調べるのに手間取ることが少なくありません。
ビジネス文書全般に人名はよく出てきますが、事前に読み方を教えていただく場合と、一般的な読み方で訳して納品時にその旨の申し送りをする場合があります。中国名の読み方は「どんと来い、中国語」というサイトのピンイン変換ツールを使って推定しています。
こんな具合に固有名詞には苦労しますが、なじみのない専門用語に比べればまだ対応が楽です。知らない専門用語の場合、そもそもそれが何を指すのか理解し、訳語を調べ、どんなコロケーションでその用語が使われるのか確認するのに時間がかかります。だから、専門分野以外の翻訳依頼も基本的には受けるようにしていますが、納期に余裕がない場合は受けられないのです。