BLOG&NEWS

小公女

さるるん@ロシア

通訳・翻訳者リレーブログ

このところ、娘は、先日実家から送られてきたDVD「小公女セイラ」(2009年秋の実写版テレビドラマ)にはまっています。「おもしろいから、お母さんも見て!」と誘われているけれど、私はまだ見ていません。

「小公女」や「小公子」は、私の子どもの頃のお気に入りの本だったなあ。屋根裏部屋での貧しい暮らしにものすごく憧れていた。伝記「キュリー夫人」を読んでいても、電気代(暖房代?)を払うお金がないけれど、とにかく勉強したくて図書館に通っていたという部分に妙に心動かされたりした。貧しくても、逆境にあっても、まっすぐに努力して誇り高く生きて、最後は報われるというのは私にとっては王道のストーリー。憧れが昂じてミカン箱を机代わりにして勉強したり、北海道の冬の寒い日にストーブのない部屋で勉強したり・・・。要は、ヘンな子どもでした。

しかし、夢みる力というのはおそろしいもの。ロシアに来てから、小公女を愛読していた頃の夢がかなった?と思うできごとがありました。

モスクワで最初に住んだアパートは、暮らし始めてそろそろ1年という頃に突然大家さんから立ち退きを要求されました。売却することになったのだそうです。そこは至れり尽くせりの家具付きアパートだったので、自分たちの家具はほとんど何もない状態。それで、また家具付きアパートを探したのですが、見つかった(今住んでいる)アパートには、台所以外には家具がありませんでした。そこで、家賃の値引き交渉をしたところ、急遽、最低限の家具を入れてくれることになったのですが・・・。

引越当日、新しいアパートに着いて、目を疑いました。
カーテン4組は、カーテンリングの袋と共に部屋の真ん中に置いてあるだけ。洋服ダンス、勉強机、ソファベッド(すべて中古)は、組立作業に挫折した状態でパーツが放置されている。この洋服ダンス、誰かが粗大ごみとして捨てたのを拾ってきたとしか思えない代物。これで「家具付きアパート」と呼べるのか? 確かに家具はあるけど。

当時、ダンナは朝から夜遅くまで外で働いており、引越当日も、夕方から仕事に出かけたので、仕方なくひとりでカーテン取り付けました。こっちは天井が高いので、カーテンの位置も高くて、結構取り付けが大変でした。他の家具も翌日以降、私がひとりで組み立てました。ソ連時代からのきまりで、夜10時以降は大工仕事や工事ができない(らしい)ので、私が昼間に金槌を使うしかなかったのです。

いろいろ買い足さなければならなかったのですが、予定外の引越しで散財し、必要な家具を買い揃えるのに時間がかかりました。今の私の仕事部屋は、しばらく洋服ダンスとダンボール箱だけのガラーンとした物置みたいな状態で、「これって、小公女を読んでいた頃の夢がかなったということ?」「夢とか憧れは、ほんとうに叶ってほしいものを心に抱かなくちゃ大変なことになるのね」と思った次第です。私の憧れたストーリーは「どんなに貧しく、逆境にあっても、誇りを失わず、信念を持って生きて、いずれはハッピーエンド」だったので、日々精進しようとも思いましたが。

子どもの頃の愛読書と言えば、「ロビンソン漂流記」や「十五少年漂流記」も大好きで、そういう暮らしを夢想するのも大好きだったけれど、この夢(?)は叶ってほしくないなあ。

Written by

記事を書いた人

さるるん@ロシア

米系銀行勤務後、米国留学中にロシア人の夫と結婚。一児の母。我が子には日露バイリンガルになってほしいというのが夫婦の願い。そのために日本とロシアを数年おきに行き来することに。現在、ロシア在住、金融・ビジネス分野を中心としたフリーランス翻訳者(英語)。

END