BLOG&NEWS

親が子に贈る本

さるるん@ロシア

通訳・翻訳者リレーブログ

娘に頼まれ、『怪盗ルパン』シリーズの本を何冊か日本から取り寄せることになりました。私も子どもの頃、ルパンが大好きだったのでリクエストされたときは、とてもうれしかった! 3年前にこちらの日本人学校のバザーでルパンシリーズが何冊か売りに出されていたので2冊買ってみたのですが、当時の娘にはまだむずかしかったらしく、反応は今ひとつでした。自分が子どもの頃好きだった本を娘に読ませて反応が薄いと結構へこみます。ようやくルパンを面白いと思える年齢になったんだな〜と、ほくほくしながら、Amazonのサイトをのぞいてびっくり。

昨年末から昔の表紙を復刻した文庫版(上の写真)が出ていたのですね。昔ルパンが好きだった人は、書店で見かけて懐かしいと思っていたのでは? 日本で暮らしていれば意識しなくても得られるこういう情報に疎くなるのが海外在住の悲しいところ。

 
3年前に買ったのは2005年発行のシリーズ(上の写真)で、文庫本よりもひとまわり大きなソフトカバーのもの。両方とも南洋一郎バージョン。シリーズものは同じサイズで揃えたいという気持ちと、懐かしい復刻版の表紙に惹かれる気持ちの間でただ今揺れ動いております。

人生ではじめて覚えた翻訳者の名前は、ルパンシリーズを訳した南洋一郎さんだ、と思っていたのですが、調べてみると、ご自身も冒険小説の作家だった南さんは、翻訳ではなく児童向けのリライトをされたということだったのかもしれません。復刻版の表紙を見ても「原作ルブラン」という文字よりも「南洋一郎」という文字の方がずっと大きいし(だから子どもの記憶に残った)、2005年のシリーズでも「南洋一郎文」(「訳」ではない)と表記されています。ルパンシリーズは今では複数の出版社から、新訳も含め、いろいろな翻訳が出ていますが、やはり娘には私が子どもの頃夢中になった南洋一郎バージョンを読んでほしいのです。

ちなみに、私が子どもの頃買ってもらってうれしかったのは、講談社『世界の童話(全12巻)』。イソップ、グリム、アンデルセン、アラビアンナイト、アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、ソビエト、北欧・南欧、東洋、日本の全12巻。月1〜2冊しか本を買ってもらえなかった当時、これがドーンと届いたときは興奮したなあ。子どもの頃に感じる喜びって爆発的なんですよね。おもしろくて、わくわくする話がたっぷり読めて、世界一周旅行をしているような気分にもなれて、本当に、本当にうれしかった。

親が子どもに贈った本で素敵だと思ったのは、児童書の古本屋海ねこのウェブサイトに載っていたもの。
大正12年、お父さんからの海外のおみやげ
http://www.umi-neko.com/2007/omiyage/omiyage.htm

今から87年前に海軍の仕事で海外勤務になったお父さんが娘に送ったイギリス、フランス、アメリカの絵本が紹介されています。その中のThe Little Dog That Would Not Wag His Tail(しっぽを振らない子犬)とThe Little Kitten That Would Not Wash Its Face (顔を洗わない子ねこ)の2冊には、お父さんが海軍の便箋に鉛筆で手書きしたカタカナの訳文が付いているのです。サイトでは手書きの訳文の写真も紹介されています。まだうちの父も生まれていなかったような時代に、こうやって海外で絵本を選び、娘のためにおそらく自分で訳した訳文を付けてプレゼントしたお父さん。素敵です。よろしければ是非ご覧になってください。手書きの訳文付きで売っているこの絵本、ほしいけれど、私個人が所有するなど恐れ多くてできません。

海ねこはロシアの絵本も充実しているので、のぞくのが楽しいのです。

Written by

記事を書いた人

さるるん@ロシア

米系銀行勤務後、米国留学中にロシア人の夫と結婚。一児の母。我が子には日露バイリンガルになってほしいというのが夫婦の願い。そのために日本とロシアを数年おきに行き来することに。現在、ロシア在住、金融・ビジネス分野を中心としたフリーランス翻訳者(英語)。

END