春は近いけれど
日が長くなってきたモスクワ。この間までは、朝7時はまだ真っ暗だったのに、今はうっすら明るいし、夕方も5時をすぎてもまだまだ明るくて、春が近づいてきたと感じます。うれしい。ただし、気温は春には程遠く、今朝の気温は、マイナス22度。この一週間は、最低気温がマイナス25度前後の日が続くとの予報が出ています。
モスクワで暮らし始めて、5回目の冬ですが、今年が一番寒いです。いっそのこと、一日くらい、私にとって未体験ゾーンであるマイナス30度以下にならないかな、と思ったりもします。ちなみに、学校は気温がマイナス25度を下まわったら休校になるらしいです。
学校と言えば、先日、甥っ子が東京の私立中学校を受験し合格しました。インターネット上にその学校の入試問題が公開されていたので、算数の問題を見てみたら・・・解けなかった。特に、図形問題が全然だめ。笑ってしまいました。 学生時代、数学は結構得意だったのに。昔は微積分の問題だって解けたのに。あの頃学んだ知識は、どこに行ったのだろう。
うちの娘も日本で暮らしていれば来年は中学生。それこそ日本の私立中学校に入れるくらい、日本の学習要領に則した勉強もさせたいと思っていましたが、両立はなかなか難しいです。将来、娘が日本で暮らすか、ロシアで暮らすか、どちらを選んでも言語・文化面での不自由なくやっていける能力を身につけさせたいというのが親の願い。ならば、サポートする立場の私がしっかりしなければと、あらためて思った次第です。
日本とロシアの双方が娘の祖国なので、最近の日露関係のこじれには、本当に心を痛めています。2月7日の北方領土の日のこと。ロシアでは、日本の右翼過激派によるロシア国旗毀損について朝から報道されていました。通信社のサイトには、落書きされ破られた国旗の写真も出ていました。これまで近隣国での日本の国旗毀損の映像を見るたびに不快な思いをしていましたが、日本でも同じようなことが起きたことがショックでした。あの写真を見たら、ロシア人は誰だって日本人をとんでもないと思うでしょう。ロシアでは、その後、これに尾ひれがついて、インターネットやラジオでは、「日本でロシアの国旗が燃やされている」と騒がれました。
日本の政府は、これにしっかりとした対応を取っていないようです。先日の前原外相の訪露は、真意を伝えるチャンスだったと思うのですが、出発前に「政治生命を懸ける」と行っていたわりには内容がなかった模様。北方領土は日本のものだと主張し続けるにしても、この国旗棄損のような行為はすべきではない、不快な思いをさせて申し訳なかった、しかし、あれが日本人一般の姿ではないと伝えてほしかった。 この件が日本に対するネガティブなイメージを広めたことを、政府はどれだけ理解しているのか・・・。
それから、菅首相のロシア大統領の北方領土訪問に対する「許しがたい暴挙」発言。これも、大きく取り上げられました。首相は深く考えずに(おそらく、勢いで)この言葉を発したと思われるので、その言葉を使った真意を考えるのは無駄かもしれませんが、どういう意味で「暴挙」と言ったのでしょう。許しがたい「ルール違反」という趣旨を強い言葉で表わしたと想像するのですが、ロシア語では、
непозволительной грубостьюと訳されていました。これは、英語にすれば、unallowable rudeness。微妙に意味がずれていると思います。あるいは、意図的にずらしているのかもしれません。
日本の政治家の発言が、他言語に訳されたときに、違和感を覚えることは少なくありません。不正確に訳された発言をめぐる対立を見ると、それを正したくなります。政府見解や政治家の発言が多言語にどのように訳されているかチェックする機能は日本にあるのでしょうか。もっとも、日本の政治家の発言は日本人が聞いていても真意がわかりにくいことが多々あるので、それを何とかするのが先決か?