SHE
卒業の季節。日本で暮らしていたなら、娘もこの3月で小学校を卒業していたんだなあと思う今日この頃。モスクワ生活はまだまだ続きます。と断言するはずが、今週はいろいろあって、やはり3月いっぱいで日本に帰ろうかと気持ちが揺れております。
さて、今月は我が家を取り巻く「She」のお話を。
我が家の言語環境は、母子=日本語、父子=ロシア語、夫婦=英語+簡単な日本語です。三カ国語が飛び交う環境ですが、いずれの言語の会話でも、一人取り残されます。私はロシア語が、ダンナは日本語が、娘は英語で会話をするのは困難だからです。三人が共通の言語でこみいった話をすることはできないという環境です。
娘にはまず日本語とロシア語を身につけてほしいので、家では娘に積極的に英語を身につけさせようとはしてきませんでした。でも、娘の方は、学校で習った英語を積極的に家で使おうとしています。学校で英語を学んだことにより、昔はさっぱりわからなかった両親の会話がところどころわかるようになってきて、英語で口をはさめるようになってきました。娘は、私たち夫婦が「She」という単語を用いて議論をしていると、何か自分のことを言っているのではないか、何を言っているのかわかるようになりたいと思うようです。
そう言えば、私も似たような経験をしたな。義母が我が家に滞在しているときに、義母がダンナと話し込んでいる会話にロシア語のSheにあたる「アナ」が多用されると、私のいたらぬところを訴えてるのでは?とドキドキしたものです。
でも、ロシア語の「アナ」は、人間の女性を指すとは限りません。名詞は、男性、女性、中性の3つの性に分かれていて、生物ではなくても、男性や女性の扱いになり、それを受ける人称代名詞が「オン」(Heにあたる)や「アナ」になるのです。鉛筆がHeだったり、新聞がSheだったりするのです。
だから、ロシア人の英語初心者には、英語では生物以外の名詞をすべて「It」で受けるというのが、どうもピンとこないようで、ありえないところで「He」や「She」を使おうとします。(うちのダンナが英語を教えている生徒さんたちが、まさにそうなのです)
そうそう、70年代のソ連のコメディアンのこんなジョークがあったそうです。
「なんで、人生で大切なものは、みんな女性名詞なんだ? クヴァルティラ(アパート)、メーベリ(家具)、ザルプラータ(給料)、プリバフカ(昇給)、ペンシア(年金)・・・」と山ほどリストアップして「男性名詞で思いつく大切なものは・・・アヴァンス(前借り)だけだ。」