音楽なしでは心がもたない
モスクワに戻ってきて3週間。東京はいまだに気温が30度を超えているのですね。モスクワはすっかり秋で、日中でも気温が20度を超えることは少なく、朝晩は10度以下に冷え込みます。
このところ、日本のニュースを見るたびに、ため息しか出ません。尖閣国有化。竹島。従軍慰安婦。延命しか考えていない民主党政権。原発の是非を単独で議論し、ピークオイル問題への対応も含めた包括的なエネルギー政策を論じようとしないこと等々。この国はどうなるのか、と暗澹たる気持ちになってしまいます。
心のバランスを取るためにも、クラシックコンサート(ピアノ)に通っている今日この頃。最近、一番感激したのは、アンドラーシュ・シフのピアノリサイタルです。シフはハンガリー出身の巨匠。この日のプログラムは、第1部がハイドンのソナタ第62番変ホ長調、ベートーヴェンのソナタ第32番 Op. 111、そして第2部がシューベルトのソナタ第21番 D960というもの。
軽やかな指さばきで、美音を聴かせてくれたハイドン。第1楽章の激しい演奏も、第2楽章の静寂や高音のピアニッシモのきらめきも素敵だったベートーヴェン。第1部が終わって、会場からブラボーの声が飛び交います。
心の奥深いところで感動すると結構疲れるもので、休憩時間にコーヒーとケーキで疲労回復をはかろうと思っていたのですが・・・なんと第1部のカーテンコールに応えたシフが再びピアノの前に座る。えっ、まさかベートーヴェンは第3楽章まであったのに、曲の途中で拍手して中断させちゃってた?それとも、第1部のアンコール?と疑問符だらけになったのですが、弾き始めたその曲はシューベルトのD960。まさかの休憩なしの続演。
D960は私がこの世で最も美しいと思う曲のひとつ。これが目当てでこのリサイタルに来たのです。演奏をじっくり味わうためにも休憩がほしい!
初めは「ひと休みしたかった」とくすぶる気持ちがあったのですが、すぐに演奏に引き込まれました。期待どおり、素晴らしい。この曲で最も好きな第2楽章の演奏も、それはそれは美しくて涙が出ました。第3楽章、第4楽章は愉しんで演奏しているという印象。この演奏を聴けて良かった。
会場はブラボーの嵐。アンコールは3曲。約2時間、休みなしでの演奏でした。シフは50代後半。聴いていただけの私でもぐったりなのに、驚くべきスタミナと集中力です。いろんな意味で忘れがたいリサイタルになりました。
おまけとして、来月から始まる「チャイコフスキー国際コンクールの新星」と銘打ったコンサートシリーズのチケットを買いに行ったときの写真を載せます。2011年の同コンクールで人気を集めたピアニストが毎月登場するという企画です。これが会場となるパブロ・スロボトキンセンター。
モスクワの観光名所アルバート通りにあります。アルバートにはお土産屋さんが軒を連ねており、路上にもたくさん出店があります。
これが、コンサートチケット。デザインがとてもきれいで、テンションが上がります。