知ってほしい
フリーランスで働く怖さは、やはり明日の保証がないこと。そんな不安を抱えている身であればこそ、口蹄疫のことが気になって仕方ない。口蹄疫が発生するまで、今日と同じorより良い明日を信じていたであろう畜産農家を思うといたたまれないのです。
インターネットであれこれ調べているうちに、宮崎県川南町の酪農家ムッチーさんの「川南町のムッチー牧場だよ〜ん」をはじめとする現地の方々が発信するいくつかのブログにたどりつきました。マスコミの報道では知り得ない現地の状況を知ってからは、10キロ圏内全頭殺処分決定や、避難させていた種牛の感染のニュースを知るたびに泣けてきました。
現地の声に、「どうか意識して国産の農畜産物を食べて下さい。それだけで日本の農畜産業が守られ、それが宮崎の農畜産業の再起を可能にするのです。」という声があります。何とかしたいけれど何もできないと思っていた方も、これならできるのでは?(残念ながら在ロシアの私にはできないけれど)。国のあり方は私たち一人ひとりにかかっていると思います。海外組の私にも、ささやかな募金と、情報の拡散だったらできます。
以下に川南町のひじりさんの日記を転載します。長文ですが、ソースが会員制SNSの日記なのでURLを貼っても会員でなければアクセスできないため、そして抜粋によりひじりさんの伝えたいことが抜け落ちるのをさけるため、全文転載します。ただし、日記の最後に書かれていた下記コメントは、最初にご紹介した方が良いと思うので、先に引用させていただきます。
(引用開始)
私が伝えたい事は、現場の悲惨さはありますが、今まで家畜と共に生活してきた農家の方々の愛情を知って欲しいと思い、彼(さるるん注:養豚農場で働く友人)の言葉で書く事にしました。
決して、政府批判でもなく、対応の悪さについて言及するものではありません。転載されるのは構いませんが、間違った方向にもっていかず
私たちと同じく何気ない生活を楽しんできた農家の方々の愛情をお伝えくださいませm(_ _)m
(引用おわり)
*** 以下、ひじりさんの5月21日付日記「殺処分」を引用 ***
「殺処分」と簡単に言うけど・・・
5月9日、とある養豚農場で働く友人に会うことができ話を伺うことが出来た。
(もちろん、お互いに防疫対策を施したうえでだ)
口蹄疫感染の疑いが出て全頭処分が決定した農場である
彼は本当に豚さん達と真剣に向き合って肥育していて、口蹄疫問題が起きる前までは、いつも面白おかしく豚舎での話を聞かせてくれていた。
「ちょっと巻き毛の母豚がいてな…俺には懐いてくれちょっちゃけどよ。
一度マジ切れしてさ、思いっきり拳で殴ったら、自分の手は怪我したのに母豚は平然としやがってよ「ちくしょーー!(笑)」
ただ、こいつがさ、なかなか上手に水を飲めないやつでな、いっつも俺が飲ましてやっててさ、時々、俺のひざに頭をのっけて休むんよ(笑)200kgもある母豚やかい、頭だけでも重いっつどぉ(笑)。
ただなぁ、こいつになかなか子供が授からんでなぁ、何度も仕込ませてみたんやけど…
なんでかこいつだけ子供ができんかったっちゃわぁ。
「お前どうしたっかぁ。ごめんなぁ俺が悪いんかもなぁ。女の幸せをあじあわせてやれんなぁ。子供産んでみたいやろう。次こそ頑張ろうなぁ。」言って、首に抱きついてあげたりしてたんだわ
でもよ!
先月ついに受胎したことが分かってな。「やったーやったー!よう頑張った!!!やっとお前も赤ちゃんが産めるな(^^)」って喜んでその母豚カードにでっかく「成功」!って書いたばっかりやったのによ
・・・・もう殺さにゃいかんとよ。
自分の赤ちゃんを産ませてあげられんやないかい!!
どうすっとかい! (泣)
・・・・ごめんなぁ。言うしかなかった
せめて今だけは、腹いっぱいエサ食えよ。って大量に準備してあげてるっちゃが。
感染した子豚たちの蹄からは出血が始まり、上手に歩けなくなってビービー泣いている
母豚は乳首のところがただれ始めて真っ赤になって血を流しているのもいる。それでもむしゃむしゃエサ食うやつは食うんよ。
また、明日そいつらの所に行って、声かけてあげにゃいかんちゃろうけどよ。どんな顔して、なんて声かければいいっかえ!」(泣)
と、語ってくれた。
数千頭の豚を養っているこの農場では、この時はまだ埋め立て地が決まらず殺処分はされていなかった。
そういや、彼が私に語りはじめた時、最初に言った言葉は「あ〜・・・終わった。肩の力が抜けて楽になれた気がするよ・・・(泣)」だった。どんだけ気を張り詰めた生活を送ってきたんだろう
防疫のための消毒活動を徹底的にやっていた彼。
自分の車の中まで消毒液を振りまいていた彼。
毎日毎日石灰を道路に撒いていた彼。。。
必死に目に見えない敵と戦い、守ろうとしてきた家族を失う彼。
「やれるだけやって出てしまったもんは仕方ない。はっきりしたことは、来月から俺は職を失うってことだ。ただ、急いで処分をしないと、他の農場に迷惑かけちゃうな。」
お腹に赤ちゃんを宿した母豚にすがり泣く彼のことを思うといたたまれないのですが、その感染を確認した豚舎では日に日に症状を示す豚が増えてきて、エサが食べられなくなったり、亡くなったりしてきて、豚舎内が消石灰をかけられた死体置き場へと変わっていき、腐敗していく。
5月6日に口蹄疫感染疑いが発表された養豚場。その時点で全頭処分が決定していたわけですが、埋設処理が始まったのは・・・5月14日です。すでに8日が過ぎています。ここまでの数日間、彼はどんな光景を見てきたのだろうか。どんな思いで、豚舎を見て回っていたのだろう。。。
殺処分の様子は、本当に地獄絵図のようでした。
この養豚農場には、人間よりも大きな母豚が数百頭、青年豚がさらに多く、子豚が数千頭いる規模の大きな農場です。 口蹄疫の症状の出ていないまだ元気な豚もたくさん居ます。
「 何十人と獣医師が来たけどよ。かき集められた経験の浅い獣医師たちは母豚を怖がってまともに注射も打てんちゃが
首筋の静脈に注射を打たにゃいかんのによ、柵の外から身を乗り出してお尻に打とうとするわ、バカじゃねーか!豚だって生きちょっし痛いから、ひょいとお尻を動かして逃げるわな。
しょうがねーかいよ、俺が柵に入って豚の首をガシっ
押さえつけてやる始末。
危険やっちゃけど仕方ないわ
ただ、集められた獣医師は豚専門の獣医師ばかりじゃないし静脈の場所はわかりにくいからしょうがないっちゃけどよ、ダメじゃわ・・・
もう、豚の首は突き刺した注射のあとだらけ、痛々しいわ。豚はギャーギャー暴れるわ
ちくしょーーちくしょーーー!もっと安らかに死なせてやってくれよ。 (注※集められた獣医師さんは頑張ってます。しかし、家畜専門ではない方々も集められているから戸惑われたことと思われます。実際、母豚はデカイ!から怖いでしょう。でも、獣医師免許を持っていないと殺処分が出来ないから、とにかく集められています。いろんな意味で彼らもつらいと思います。)
獣医師の免許をもっちょる奴しか殺したらいかんかいよ。手がだせん・・・
かわいそうでよ
もちろんベテランの奴はさすがに上手いし早くてよ関心するんよ。
みんな目に涙を浮かべながらも作業してくれてるし手を合わせてくれる人もいる。
命を救うための獣医師がよ。
今まで、命を助けるために動物に声をかけ、一生懸命働いてきた獣医師がよ・・・
この注射を打ったら、こいつが死ぬって分かりながら注射を打ちこむんよ。
そりゃあ人としてつらいし、心が痛いわなぁ。歯を食いしばるしかないのかよ!
俺はさ、もともと出荷のための豚ならなんとかあきらめがつくんよ。出荷だと思えばいいちゃかい。
でも、母豚はよ。ずっと面倒見てきたっと、性格もよく分かる。顔見りゃ名前も、出産した回数も、病気した時、喜んだ時。悪ん坊や、甘えん坊、気性の荒い奴、優しい奴、み〜んな分かる。共に生活してきた家族やっちゃかい。
口蹄疫に感染してしまって痛々しい症状が出てる奴は、鼻や口の水疱が破けて痛いもんやからエサが食えんなっちょる。それでも腹はへるかい、えさを探すわな。豚は鼻が命じゃ。人間で言う手のようなもんで物を探るのは鼻で探るんよ。
痛いやろうに・・・
まともにエサが食えんかい。俺が手で食べさせてやってた。
鼻も口元も蹄も乳首も痛々しいのに、俺を見つめる目はやさしくてよ。なんだか、向こうがごめんよ〜言ってるみたいや。ありがとう言ってるのかなぁ(T-T)
注射打たれる姿に耐えられんで離れたところから見てたら、獣医師の腕をふりほどいてこっちに走ってくっとよ。
蹄が炎症起こして血を流してるもんは痛いから立ち上がれんでずっと横になってギャーギャー言ってる。でも、立ち上がらせて殺処分するところまで連れて行かんと重いかいよ。まず鎮痛剤打つっちゃわ。
そしたら痛みが取れるもんじゃかい、ひょいっと立ち上がる。でも蹄からも血が出て腐りよっかい
蹄が取れていくとど・・・赤くなった蹄だけが地面に転がってるんやど・・・
それでも、蹄が無くなった足で、俺の所に駆け寄ってくる
はやくなんとかしちゃれよーーーー!(T-T)
ある程度の大きさの奴は電気で殺すっちゃわぁ
でっかい火ばさみみたいな物でまず頭を挟んでな、スイッチを入れると高圧電流が流れ失神する。
そしてそのあとに胸の所を挟んで心臓に電流を流すとガタガタガタとしびれて心臓を止めて殺すとど・・・かわいそうやんけ。
さっきまで震えて泣きよったやつが。突然静かに死体となるんよ。
たださ、時々その動かなくなった豚を運んでたり、穴の中に落とした時に生き返って動き出すやつがおるんよ。気絶してただけなんやろうな。哀れでなぁ、また殺さにゃいかん・・・。
まだまだ元気な奴らはさ、どんどん穴ん中に落としていく。みんなで板を使って追いやって穴に落としていく。
一番下に落とされた豚たちは熱と重さで圧死ししていくけどよ。後から後から落とされた豚は、どんどんジャンプして穴から必死に飛び出ようとするんよ。
その生きようとする動物の必死さにまた泣けてくっちゃわぁ・・・たまらんよ(TへT)
その上からブルーシートをかぶせてよ、コンパネの板を上において、飛び出してこんように俺たち人間が上に乗るっちゃわぁ・・・
それでん、下から・・ドンっ!ドンっ!て必死にぶつかってくっとよ。
ブルーシートの隙間からホースを入れて中にガスを流し込むんよ・・・
すると、だんだん静かになってきてよ…しばらくするとシーンとなるんよ(T-T)
ちくしょーーーーーーー!
作業員達があちこちで殺処分をしていってる。
地獄を描いてる絵があるわぁ。鬼が人間をいたぶっている絵よ。あのまんまって感じ(*_*)
豚舎の中がギャーギャーって今まで聞いた事もないような泣き声があちこちから聞こえるかいよ。
赤ちゃん子豚が不安な様子でジッとしちょっちゃわ。
病気に感染した奴は蹄から血を流して痛いしおっぱいが飲めんかい
コロっコロっ死んでいく。
それでも豚舎が違ってたりで感染していない元気な奴もいっぱいおる。
敷地が一緒やかいて、経営者が一緒だってだけで
殺さにゃいかんとか・・・
本当に、この子達も殺さにゃいかんとか!
・・・
周りの異常な雰囲気を感じちょっちゃろうね
ひょいっと両手で掴み上げるわ
すると身体をグッと堅くして不安げに身体をブルブル震えてるのが手のひらから伝わってくるとよ。
ごめんなぁ、ごめんなぁ。俺が泣き出してよぉ
その幼い身体に注射針が刺されて、静かにぐったりと手の中で重みだけを感じる物体になる
さっきまで硬かった子豚の力が抜けて何の力も入らない柔らかい物になるんよ。
もうどんだけの涙が流れ出たかわからん
あと残ってた豚舎はウィンドレスの豚舎じゃかい・・・
せめて安らかにと思うてかいよ
帰ってくる時・・・空気を送り込むファンのスイッチを切ってきた。
家に帰ってよ。風呂に入ってよ。飯はよう食わんかい。焼酎飲みながらテレビをみてるとよ
俺・・・いつのまにかボロボロボロボロ泣いてるっちゃわ
今頃、眠るように死んでってるんだろうなぁ・・・・。
お前よ。豚は言葉がしゃべれんけんどよ。もしもよ、お前の子供をよ、「なんで?」って言われながらよ。国からの指示やかい言うて・・・大好きなのに・・・手の中で殺せるか。」
地獄絵図と書いたが、中にいたのは鬼なんかじゃなく愛情に溢れた人でした。
殺
分が終わった次の日
彼は、何もなくなり・・・・何の声も聞こえなくなり静まりかえった豚舎を見たとき、何を感じ、どんな思いが巡っただろうか。しばらくは現実が受け入れられなかったんじゃないだろうか。
・・・あの赤ちゃんを宿した母豚は、いつまで彼に甘えることができ、またどんな瞳で彼を見続けていられたのだろうか。。。
本当にいたたまれない・・・
全国にはたくさんの農家がある。
あまり消費者の目に届くことはないところで、私たちが安心して安全なものを食べていけるよう精魂込めて接してきている人達がいる。私たちは彼らなしには美味しいものを食べることが出来ないのです。
農家の方々の愛情をいただいて生かされているようなもんなんですね。
こんな時だからこそ、いつもより町内で買い物をします。
こんな時だからこそ、宮崎産という文字を探します。
是非、みなさんも自分の地元で地産地消を心がけていただきたいものです。
発生から1ヶ月が過ぎ、5月20日、159軒で13万258頭の殺処分が言い渡されました。
絶対、このウィルスを、全国に広めるわけにはいかない。せめて、せめて、今この範囲で終わらせようと必死に頑張ってます。
それでもまだ、この目に見えないウィルスとの戦いは終わらない
しかし、これ以上の被害農家を出さないために、今、元気で生きている牛や豚の為にも
どうか、自分自身の意識を高くして、「徹底消毒」をお願いします!!!
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