BLOG&NEWS

だいじょうぶ、だいじょうぶ

かの

通訳・翻訳者リレーブログ

 夫が車をぶつけてしまった。
 日曜日。子供たちを連れて近くの大型店へ行ったときのこと。駐車場に入ろうとするとそこは一方通行。夫があわててバックしたとき、後継車にぶつかってしまったのだ。幸いスピードは落としていたので大事には至らず、けが人も出なかった。
 実は12月にもリアドアをフェンスにこすって塗装が多少はがれてしまい、そのときは買い替え直後だったので私のショックも大きかった。でも今回は一度「免疫」がついていたこともあり、まあ仕方ないなあと自分に言い聞かせるべく、頭の中ではひたすら「だいじょうぶ、だいじょうぶ」の二語がリフレインしていたのである。ちょうど図書館で絵本「こんとあき」(林明子作、福音館書店)を借りた後だったので、このフレーズが頭にあったのかもしれない。「こんとあき」は、きつねのぬいぐるみの「こん」と女の子の「あき」が電車に乗っておばあちゃんの家へ出かけるという話なのだが、こんは電車のドアに尻尾を挟まれても、砂丘の中に埋まってしまっても「だいじょうぶ、だいじょうぶ」と言う。読んでいて心が前向きになれる作品だ。
 さて、ぶつけた日の夜、夫の実家で夕食をとりながら事の顛末を話した。すると義父が開口一番、「いや〜、それは良い経験をしたねえ」としみじみ。私は内心お口あんぐり状態だったのだが、義父によれば事故というのは自分がどんなに気をつけていても遭うときには遭ってしまう。その際、警察への届出や保険会社との交渉などをやらなければならない。今回それを経験できたのは実に貴重だということらしい。夫の実家はとてもポジティブ志向でこれまでもその前向きさに救われる場面が何度もあったのだが、考え方ひとつで物事変わるものだなあと今回も改めて思った。
 これは通訳の仕事にも言えるだろう。大量の資料を事前に読みこなし、単語帳も作成し、関連サイトをしらみつぶしに調べても、当日何が飛び出すかわからないのがこの仕事。顔なじみのクライアントさんであっても第一声の通訳は非常に緊張する。でも不安になっていても仕方がない。やるべき予習をやったのなら、あとは「だいじょうぶ、だいじょうぶ」と自分に言い聞かせて現場に臨みたいと思っている。

Written by

記事を書いた人

かの

幼少期を海外で過ごす。大学時代から通訳学校へ通い始め、海外留学を経て、フリーランス通訳デビュー。現在は放送通訳をメインに会議通訳・翻訳者として幅広い分野で活躍中。片付け大好きな2児の母。

END