新聞の読み方
以前、テンナインの工藤社長が「新聞が読めない」とコラムに書いていらしたが(「工藤浩美のビシッと愛のムチ」5月15日。http://www.ten-nine.co.jp/hc/kudo/)、これを読み、自分の経験をふと思い出した。
私がこれまでで一番新聞をためてしまったのは長男出産直後のこと。当時私は海外で放送通訳をしていた。昼夜の境目のない新生児のお世話で、気がつくと新聞2か月分があっという間にたまっていたのだ。放送通訳という職業柄、新聞はいわば「ライフライン」に匹敵する重要資料。しかも海外で購読していたので、一部あたり日本円にして300円ぐらいする。読まずに捨ててしまうのはあまりにももったいないのでとっておいたのだ。
しかし、時間がないときというのは本当にどうしようもないぐらい時間がないもの。床にドサッとたまりゆく新聞を日々横目で恨めしく見ながらも、結局思い切って捨ててしまった。少しずつ変色した新聞の山は「仕事に必要な重要記事があるのでは」と思わせるぐらい「宝の山」に見えていた。でもあのとき読まずに潔く捨てたことで、「新聞との接し方」が私なりにできたように思う。
まず「新聞は生き物である」ということ。日々のニュースを伝えるという特色上、その日に読まなければ意味がない。現に数日たってしまうと、新鮮な情報源としての新聞の価値は一気に薄れる。このため、早く読むことが肝心だ。私の場合、一週間以上たまったらとにかく捨てることにした。
もうひとつは「読み方の工夫」。我が家には幼児二人がおり、下手に家で新聞を広げようものなら「あ、おかーさん、新聞ちょーだい!クルクル丸めて剣、作るんだ〜」(息子4歳)あるいは「ビリビリするの〜」(娘3歳)とあっという間に解体されてしまう。そこで私の新聞タイムはもっぱら電車の中。乗車駅から終点まで35分。最初の20分で日経新聞を1面から読み進める。ポイントは立って読むこと。座るとページがめくりづらいからだ。立ったままだと新聞全体を俯瞰できるので、自分にとって重要な記事がすぐ目に入ってくる。切り抜きたい記事があれば、その記事の余白に「060522 N」(2006年5月22日。N=日経)と記入。そしてそのページ番号を1面の余白に書いておく。こうしておけば、新聞読了後、1面にメモしたページ番号から切り抜くべき記事がすぐわかる。
終点駅までの残り15分は英字新聞。こちらは駅の売店で購入している。あえて買うのは、「わざわざお財布を鞄から取り出して買った」という手間を実感することで、できるだけ早く取り組めるからだ。読み方は日本語新聞に同じく1面から開始。読み始めるページを決めておけば、中断しても「どこまで読んだっけ?」と迷うこともない。
私の場合、一番効果があったのは、読む際に制限時間を設けたことだと思う。おかげでどんなに騒々しい車内でも集中して読めるようになった。