さりげない仕草
毎日あわただしく生活している中で誰かがさりげないながらも心に残る仕草をすると、それを見ただけで私は幸せな気分になれる。ほんの一瞬のことではあるけれど、後々まで印象的なものとして記憶されるのだ。
たとえば通訳現場でのこと。私のシフトが終わり、「お先に失礼します」と言ったとき、先輩の通訳者がPCのマウスを動かす手を休めた。そして手を重ねてひざに置き「お疲れ様でした」とおっしゃったのだ。立ち上がるほどではないけれど、それでも左手を右手に重ねるだけでものすごく美しい印象を受ける。ちなみに作法の世界の場合、右手を下にするのは、「私は何も悪いことはしませんよ」という意味なのだとか。
もうひとつ印象的だった仕草。それは息子を連れてスポーツクラブに行ったとき、あるインストラクターがわざわざひざをついて息子の目線まで下がって話しかけてくれたのだ。スポーツクラブゆえ、しっかりした社員マニュアルがあるのだろうけれど、それでもあえてかがんで子どもの目を見て話してくれたのは親として嬉しかった。以来、このインストラクターのクラスは欠かさず出るようにしている。レッスン内容と仕草は直接的な関係はないが、それでも好印象だったので私のレッスンに対するインセンティブが上がったのは事実だ。
一方、さりげない仕草で印象が台無しになってしまうこともある。今でこそ車内でのお化粧は珍しくなくなりつつあるが、個人的にはマイナスな感情を抱いてしまう。どんなに車内でのお化粧が美しく仕上がったとしても、「お化粧時間を惜しむぐらい寝坊してしまうの?」と思ってしまう。「その10分を頑張って早起きすれば良いのに。自宅で綺麗にメイクをしてきちんと車内で座っていたほうがもっと美しいのに」というのが私の印象だ。
車内でもうひとつ気になること。それは女性の座り方だ。私が子どもの頃は足をピッタリそろえて座るようしつけられた。でも最近は両足を堂々と広げて座っている女性が多いように思う。しかもミニスカート!反対側に座る人はどこに視線を向ければよいの?パンツルックが主流になってそれに慣れてしまい、座り方も豪快になったのかしら?ドカッと広げていないにしても、ひざだけつけて脛から足首までは開いている場合も多い。この「ひざだけくっつけ座り」、最近はモデルさんの写真にも出ているので、違和感を失いつつあるのかもしれない。とは言え同性でも何だか目のやり場に困るのだ。