おさんぽ大好き
3歳の娘は保育園に通っている。ビルの2階にあるのであいにく園庭はない。それで先生や他のお友達とよくお散歩に出かけている。近くの公園だけでなく、1キロほど離れた市役所や消防署まで繰り出すこともあるという。園児たちが疲れると先生は「となりのトトロ」のオープニングテーマ曲「歩こう」を歌ってくれるらしい。それで娘も「おさんぽ、だいすき〜♪」としょっちゅう歌っているのである。
かく言う私も歩くのが大好きだ。学生時代、山手線半周ウォークに参加したり、ロンドンに暮らしていた頃も半日ぐらいひたすら歩いたりした。日本は湿気が多いため真夏に歩くのは大変だが、ロンドンは気候も良く、街並も美しいので歩くのは本当に楽しかった。おかげで靴を何足履きつぶしたか知れない。
しかし最近は仕事と子育てであわただしく、日本の蒸し暑い中を歩くよりは手っ取り早くスポーツクラブで汗を流すようになっている。スタジオレッスンに参加した後、ランニングマシンで30分ほど走っておしまい。すぐにシャワーも浴びられるし、何よりも時間の節約になる。アメリカを始め世界的にスポーツクラブが急増しているのも、世の中が「時間不足」になっていることの反映だと思う。
ところが先日、何と娘の「とびひ」が私に移ってしまったのである。8月上旬にかかった例の「毛虫皮膚炎」で私の抵抗力も弱まっていたからだろう。皮膚科へ行ったら「アルコールと運動は当面禁止」と言われてしまった。うーん。元々ビールは飲まないほうなので我慢できるが、スポーツクラブ通いは日常生活の一部。これには参ってしまった。ドッと汗をかけない毎日なんて・・・。
それで仕方なく歩くことにしたのである。幸い今年の夏は涼しいので、ペタンコ靴に日傘さえあれば快適に歩ける。先日も市ヶ谷から池袋まで1時間かけて歩いた。地図では平面にしか見えない所も、実際歩いてみると起伏が多く、他にも「こんなところにオシャレなケーキ屋さんが!」「間口が小さいのに、何だかステキなレストラン」と様々な嬉しい出会いがあった。
ある和食店の外には「春夏冬中」と書かれた看板があった。「ん?」と思ってよく見ると、「あきないちゅう」のふりがな。他にも「医院」の「医」が「醫」だったり、「歯科」の「歯」が「齒」の旧字体だったり。コトバを生業にしていると、歩いているだけでも楽しい発見がある。今や再び「お散歩大好き」人間だ。