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そしてわが身を省みる

かの

通訳・翻訳者リレーブログ

 通訳という職業柄、春と秋は多忙になる。この秋もそうだった。通訳学校の授業準備に加えて会議や放送の通訳。大量の資料を読みこなして会議通訳を一つ終えたら、次の通訳の資料が机の上にデンと待ち構えている。
 「はい つぎ、はい つぎ。
  はい はい はいっ。」
 「いそがしくって いそがしくって めがまわる。」
 これは息子の愛読する絵本「ねこのはなびや」の一節。仕事の資料を読みこなしながら、子どもたちに読み聞かせたこの文章がずっと頭の中でリフレイン。そんな秋だった。
 同業者の夫も同じような状況。夜、私は子どもたちを寝かしつけると疲れのあまりそのままバタンキュー。朝、目が覚めて夫に「わ〜、お久しぶり!」という感じであった。当然、子どものことや仕事、家のことなど夫に話したいことがたくさんある。メールで済ませられるときは日中にメールで連絡を取り合っているが、やはり込み入った話は面と向かって話すほうが手っ取り早い。私たち夫婦にそれができる唯一の時間帯は朝食時。それで二人で色々と話し始めるのだが、それが子どもたちには不評。もちろん、まだブーイングするほどではないけれど、ここぞとばかり「自分も話すぞ!」と息子も娘もおしゃべりパワー全開になる。しかも話に脈絡がないので、二人のトピックはてんでバラバラ。息子が海の生き物についてなぞなぞをしてくるかと思えば、娘はとりあえず、覚えたてのフレーズをひたすら使いまくろうとする。一度に数人が話すので、食卓はカオスになってしまう。
 この間はちょうど夫婦の会話がノッてきたところでワーワー言われたので、つい娘を叱ってしまった。「お母さんは今、お父さんと大事な話をしているんだから」という具合。娘としては別に悪気があって話に割り込んだわけではないので、泣き出してしまった。あ〜、またやっちゃった。朝は気持ちよく目覚めてゴキゲンに過ごして保育園に送り出そうと思っているのに。そう思いつつ、表面ではプリプリしてしまったのである。
 後になって冷静に振り返ってみると、まだ3年しか生きていない子どもなのだから、もっと大目に見てあげたらよかったのにと反省しきり。自分だって都合の良いときだけきちんと聞いて、時によっては子どもの話の流れをさえぎって「あれしなさい」「これやって」と言っているではないか。
 子どもが生まれて思うのは、自分の人間的な未熟さ。子どもはまっさらな状態でぶつかってくるだけに、わが身を省みることになるのだ。

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記事を書いた人

かの

幼少期を海外で過ごす。大学時代から通訳学校へ通い始め、海外留学を経て、フリーランス通訳デビュー。現在は放送通訳をメインに会議通訳・翻訳者として幅広い分野で活躍中。片付け大好きな2児の母。

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