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ガンバレ!受験生

かの

通訳・翻訳者リレーブログ

 先週木曜日。
 珍しく早朝の仕事が入った。家を出ると空は朝日の光でうっすらと赤みがかっている。空気もひんやり。いつもと違う雰囲気、異なる光景だ。車内も人気がまばら。座ってのんびりと新聞を読み、予習をすることができた。
 途中、小学生と思しき男の子が母親と連れ立って向かい側に座った。ランドセルはしょっていない。おや、私立に通学しているのかな?でも随分背丈も大きいから、お母さんの付き添いで通学というわけでもなさそうだ。今日は開校記念日か、それとも地元の市制記念日か何かで祝日なのだろう。そう思った。
 男の子は地図帳を取り出し、母親と世界の国旗を眺めている。楽しそうだ。私も国旗が大好き。色とりどりの旗から遠い国々のことを思い描くとワクワクする。わが家も息子が大きくなったらあのような親子の対話をするのかなと数年先のことを想像した。
 終着のターミナル駅に着くと、なぜか小学生が多い。それでようやく気づいた。今日は私立中学の入試日なのだ。ちらほらと見かけるお父さんお母さんたちは、付き添いで入試会場へ向かっているのである。
 もう一組、印象的な親子を見かけた。背のすらりとしたお父さんとショートカットの女の子。並んで私の少し前を歩いていた。二人の話し声は雑踏にかき消されて聞こえない。けれども仲の良さそうな様子は何となく後姿でわかった。お父さんはその後、女の子の背中を軽くポンポンと叩いていた。きっと「試験、大丈夫だよ」と言っていたのだろう。西洋のように大げさに肩を抱き寄せるでもなく、ハグするのでもない。わずか二度叩いただけ。でもそれだけで親子の絆を見たような気がした。
 お父さんの髪には白いものが沢山混じっていた。会社ではそろそろ管理職にたどり着く頃かもしれない。職場でも家庭でも責任がどんどん重くなる時期だ。でも少なくともその親子を見る限り、責任に押しつぶされている感じはしなかった。今そのときを精一杯生きているのだろう。
 ガンバレ!受験生。ガンバレ!お父さん。

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記事を書いた人

かの

幼少期を海外で過ごす。大学時代から通訳学校へ通い始め、海外留学を経て、フリーランス通訳デビュー。現在は放送通訳をメインに会議通訳・翻訳者として幅広い分野で活躍中。片付け大好きな2児の母。

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