子育ての方向性
ここのところ良書との出会いに恵まれた。本は好きでよく読むほうだが、買っても買っても琴線に触れないときがある。新聞の書評やネットのランキングを参照したのに、である。かと思うとたまたま書店で手にしてパラパラとめくっただけで買ったところ、私の中で大ヒットとなることもある。要はそのときの心境や関心事にもよるのであろう。
子どもたちは日々成長しており、長男の嵐のような「3歳児反抗期」が過ぎたかと思いきや、今度は娘が何かにつけて「いや!」「言わないでよ!!」と大抗議。松田道雄先生の「育児の百科」をベースに色々と子どもの心理を理解しようと努めてはいるが、それでも私自身カッとなってつい叱りすぎてしまうことも。「叱る」というよりは、私の怒り爆発という感じでエスカレートしてしまう。いい年した大人が幼い子どもになぜこんな態度しか取れないのだろうとあとで猛反省。その繰り返しが続いていたのである。
そんな中出会ったのが渡部和子著「愛と祈りで子どもは育つ」であった。著者は著名なシスター。きっと生まれながら敬虔なクリスチャンだったのだろうと思っていたら、若い頃は劣等感にさいなまれていたという。あるとき、勤務先の上司に「あなたは宝石のような人だ」と言われてようやく自分の価値を認め、自分自身を受け入れられるようになったと書いている。
本書を読み進めるにつれ、いかに私が今まで表面的にしか子どもたちと接していなかったか、反省させられた。たとえば夕食時。息子が食べるのをそっちのけで恐竜の解説をしたり、娘が歌を歌い始めたりすると、私は「そうなの」「お歌、上手だねえ」と言いつつ、心の中では「早く食べ終えて、歯磨きして、9時までには寝かしつけしないと明日早く起きられない」と計算ばかりしていたのである。目の前の子どもたちよりも、生活をまわすことしか頭になかったのだ。
子どもを育てるというのはまず親自身が自分を成長させ、育てていかなければならないこと。また、家庭内におけるほほえみを惜しまず、子どもの良いところを見ようとつとめるべきであることなど、言葉の宝石が随所に光っていた。読後すぐに良い母にはなれないかもしれないが、自分の中で一つの方向性が見えてきたように思う。