美をとるか、環境をとるか
商談通訳という職業柄、毎回様々な会社に出向いて業務を行なっている。そこで必ず利用するのが「お手洗い」。単に身だしなみを整えるためだけの空間と思うなかれ。俗に言うこの「トイレ」、実は多くを物語る会社の「顔」でもあるのだ。
以前読んだ記事で某企業の社長が「トイレを見るとその会社のすべてがわかる」と述べていた。私個人としては化粧室だけを覗いて企業の内部まで100%うかがい知ることはできない。とは言え、色々な共通点はあるように思う。
まず、備え付けのペーパータオルがなく、各自のハンカチで手を拭かなければならないトイレを見てみよう。このような場合、たいていは水周りも濡れたまま。鏡に水滴が飛び散っていることもある。トイレットペーパーがロールごと洗面台の隅に置いてあり、それで手をぬぐう人が多いのか、ペーパーのかすなども落ちている。ゴミ箱はそんなペーパーでいっぱい。どんなに定期的に清掃係がきれいにしていても、やはりすぐ元の状態になる傾向があるようだ。
一方、ペーパータオルが備え付けられている場合はどうか?紙の使用量は確かに多い。2枚も使って手を拭く人もいるし、化粧直しにペーパーをバンバン使う人もいる。しかしなぜか最後に水周りもきれいに拭いて出てくる人が少なくないのだ。つまりペーパータオルがある所のほうが細かいゴミも散らばっておらず、清潔感がある。こういうトイレは外部の人間からみると気持ちよく、「あ、きちんとしている会社だな」とのイメージを抱かせる。
こうなると、きれいさという美をとってペーパーを大量消費するか、それとも環境を優先して何となく「ぐっちゃ〜」としたままにしておくか。会社にとっては迷うところだろう。しかし、人間外見ではないけれども、何も知らない人にとっては視界に入ったことしか判断のしようがない。その傍ら、企業にとってはイメージも大事になる。美と環境のバランスをどうとるか。これは今後の課題と言えそうだ。