「ラジオは脳にきく」
私の仕事は主に放送通訳なのだが、現場でひたすら画面を見るせいか、家ではほとんどテレビをつけない。地デジPRが盛んなものの買い替えもせず、いまだに1989年製のブラウン管テレビ。夫がバイト代をせっせと貯めて買った貴重な(?)一台だ。子供たちも普段は絵本やお制作に夢中なので、見るのもビデオぐらいである。
一方、テレビの代わりとなっているのがラジオ。ほかの事をしながら聞けるので本当に便利だ。料理をしながら今日のニュースに耳を傾けられるし、今もこのブログを書きながらクラシック音楽をBGM代わりにしている。我が家にとってラジオは必需品なのである。
「ラジオは脳にきく」(板倉徹著、東洋経済新報社、2006年)にもラジオの効用が色々と出ている。著者の板倉氏によれば、ファミコンやテレビばかりを見ていると脳が受身の状態に慣れてしまうという。脳には意欲や意志をつかさどる前頭前野という機能があるのだが、脳を働かせていないとこの機能がどんどん低下してしまうらしい。そこでラジオという、いわば聞きながら頭の中で想像力を鍛えられるような手段が効果的だと書いている。
板倉氏はさらにこう述べている。
「なぜ、ラジオが脳にとっていいのか。
それは映像による情報がなく、音声情報しか脳に届かないため、脳は得られない情報を補おうと働くからだ。」(37ページ)
つまり脳は限られた情報を頭の中で視覚化しようとする。それが脳に刺激を与えるのである。
これは通訳訓練にも使えるだろう。ノート・テーキングの練習では聞こえてきた音声を必死にメモするが、「メモのためのメモ」にもなりかねない。メモを元に通訳しようとしても、頭の中でビジュアル化できていないので単語や記号のオンパレードにパニックしてしまうのである。
だからこそラジオを使って想像力を訓練するのはとても効果がある。著者はラジオニュースの内容を絵に描くことを勧めているが、これなど通訳トレーニングにうってつけだと思う。
ところで我が家にとってのラジオのもう一つの効用。それは子供たちが朝のお支度をする際、タイマー代わりになってくれることだ。まずは午前6時半、NHKラジオ第一放送の「ラジオ体操」がめざまし代わり。その後NHK-FMにダイヤルを変えるのだが、6時55分になると「バロックの森」のエンディング音楽が流れる。これを聞きながら朝食を食べていれば良いタイミング。7時20分に「ミュージックプラザ」の音楽が始まったら、そろそろ歯磨きや着替えをして登園のサインだ。
この3つのテーマ曲に沿って準備をするようにしたところ、子供たちも「あ、音楽始まっちゃった!お支度しなきゃ!」と自主的に動いてくれるようになった。毎朝美しいクラシックの音色から元気をもらい、一日が始まる。これぞ、我が家にとっては最大のラジオ効果だ。