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かの

通訳・翻訳者リレーブログ

 6月上旬、息子が幼稚園の床で頭を打った。
 先生によると、ゴーンとものすごい音がしたとか。幸い気絶したり気分が悪くなったりもせず、冷やした後は元気に遊んでいたという。その後、家でもいつもどおり過ごしていた。
 ところが1週間たったある日の夕方。息子がこう言った。
 「あのね、僕、気持ち悪いの。お弁当はがんばって食べたけれど、吐きそうだったの。走ったりするときも、何だかうまく手足が動かないんだ。」
 うーん、すでに転倒から数日たっているけれど、場所が頭だけになあ。育児書によれば、吐いたり失神したりしていなければ大丈夫というが、念には念を入れて脳神経外科で診てもらうことを決める。ところが翌日は授業。夫は仕事で身動きが取れず、義父母も不在。よほどのことがない限り、欠勤や休講はしないと決めているのだが、今回ばかりは事が事だけに、大急ぎで学校へ電話して休講をお願いした。
 最初に出かけた病院は、以前救急で訪ねたことがある。「はじめての救急車」のブログにも書いたが、息子は数年前、車内で転倒。頭に傷を負い救急車で運ばれた。そのときMRIを撮った病院だ。診察券もあるし、同じような検査になるから息子も怖がらないだろうと思って連れて行った。
 ところが受付の担当者に、小児科がないので診察できないと言われる。「え〜、前は診てもらえたのに」と内心思いつつ説明を聞くと、前回は急患扱いだったが、今回は脳神経外科で検査しても薬を処方するのは小児科なので、診られないとのこと。仕方なく車で30分の総合病院へ。
 すでに数十分のロス。次の総合病院はごったがえしていた。この具合だと初診受付から診察まで相当かかるだろうなあと覚悟しつつ、受付へ。ところが受付いわく、脳神経外科は本日休診。だ〜っ!案内係に「この近くで脳神経外科と小児科を併設している病院」を2件紹介してもらう。自宅を出てからすでに2時間経過。どちらも家から遠いが、ゴチャゴチャ考えている暇はないので、ちょっとだけ家に近いほうの病院へ電話。脳神経外科と小児科で今日診てもらえるか確認し、タクシーで向かう。
 ようやく3件目にして診察。すでに息子は移動でぐったりだ。だが幸いレントゲンもMRI検査も異常はなく、風邪の前触れか疲労という感じだった。ふー。会計を済ませるとすでにお昼近い。息子を疲労困憊のまま幼稚園へ行かせてもと思ったが、本人は登園するという。ただバスの中ではぐったりしていた。
 ところが幼稚園に着いて上履きに履き替えるやピューンとお教室へ。お友達が「わ〜、来たよ!来たよ!」と大歓声。本人も「いや〜、遅れちゃったねえ。ぼく、病院に行ってたんだ!」とまるで武勇伝のごとく診察状況を逐一報告していた。息子なりの世界があるのだろうなあ。
 今回は病院たらいまわしという感じで一時はどうなるかと思ったが、実に多くの人との接点があった。事情を丁寧に説明してくれた受付の人、「端数はいいから」とおまけしてくれたタクシーの運転手さん、「おっ!キミの園服、めずらしいねえ」と明るく豪快に診てくださった脳神経外科の先生。今日出会った誰もが明るく前向きであった。
 病院には病めるもの、苦しむもの、辛い気持ちを抱えている人がたくさん来ている。それでもみんな元気になろうという気持ちで精一杯生きているのだ。頭を打っただけに「頭蓋骨にヒビ?脳内出血?」とも考えた私だったが、こうしてホッとできたことに感謝している。

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記事を書いた人

かの

幼少期を海外で過ごす。大学時代から通訳学校へ通い始め、海外留学を経て、フリーランス通訳デビュー。現在は放送通訳をメインに会議通訳・翻訳者として幅広い分野で活躍中。片付け大好きな2児の母。

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