気になるクセ
子育てをしていると、毎日新たな発見がある。たとえば難しい単語を子どもが自発的に使ったとき。先日もそんなことがあった。
お客様が見えた際、子どもたちはかわいいブタのぬいぐるみをいただいた。そのとき息子がクリクリの尻尾を見るや、「じゃばらみたいだねえ」とひとこと。最近は大人でも蛇腹なんて日常的に使わないので、びっくりしてしまった。そんな感じで、子どもの発達には目を見張るものがある。
しかし、成長だけを喜ぶわけにもいかない。しつけもしないといけないので、日々の「観察」の中から改めるべき点を指摘し、修正していく。
たとえば無意識にやっているクセ。息子の場合、幼稚園に入るまで指しゃぶりがとまらなかった。もっとも、育児書には「無理に強制しなくても必ず直る」と書かれていた。歯並びが悪くなることもないので心配無用とのこと。しかし本人は指しゃぶりが終わるや爪かみ。こちらはさすがにバイ菌が入っては大変と、私も躍起になった。「ホラ、だめでしょ」と言うと本人はすぐ引っ込める。しかし、また気づかぬうちにやっている。爪かみ防止バトルは結構続いて、私もなだめたりすかしたり、たまに脅したり。それでもいつの間にかかまなくなっていた。
一方、娘の場合、特に目立ったクセはない。強いてあげるならば、おちゃらけが多いこと。夕食時、おかずで片頬を膨らませて、
「おは〜はん、みへ〜、あむすたあ」
(お母さん、見て、ハムスター)
と言ったり、おとなしいなあと思っていたら、口の中に水を含んでじーっとその食感を味わっていたり。とにかくそのたびに「ダメ!ちゃんと食べなさい!」の連続だ。たまに息子から「お母さん、口の中に食べ物が入ってるのに、注意しちゃダメでしょ」と逆襲(?)されることもある。
人間には無意識の習慣やらクセやら色々あるわけだが、本人がまったくそれに気づかず、平気でやっているのも問題だ。特に通訳者の場合、それはクライアントの評価にもつながる。
たとえば通訳者にとって、数秒の空白は恐怖に等しい。そのせいか、「〜が」と言えば済むところを、「〜でありますが」と長くなったり、「しかし」と一言でまとめられるところを、「しかしながらですね」などと語りかけ調になったり。他にも緊張するとキツイ口調になる、あるいはボソボソ声で聞きづらい、または助詞の部分だけイントネーションが上がるなどなど。
A言語をB言語に正確に置き換え、メッセージを伝えるのが通訳の仕事なので、最優先すべきは正しい情報の伝達だ。しかしその一方で、聴衆はひとたびイヤホンから聞こえてくるクセが気になると、ずっと耳障りに思ってしまう。トータルなパフォーマンスをいかに効果的にするかも通訳者に求められるのだ。