今年の夏休み
今年もわが家の旅行先は鳥取だった。
夏の鳥取は今年で4回目。夫の生まれ故郷でもあり、おば一家など親戚が今も暮らしている。夫からすれば第二のふるさとだ。
一緒に出かけるまで、私にとって山陰は遠かった。鳥取も島根も同じにみえたし、あまり観光名所も知らなかったのだ。ところが行けば行くほどその魅力を感じている。
今回はネットで見つけた国民宿舎を拠点に、レンタカーで回ってみた。おかげでフットワークも軽く、走行距離はなんと500キロ!かなり運転したことになる。行き先も市内や海岸、農村地帯など多岐にわたった。
まずは代表的な鳥取砂丘。今までも何度か訪れたが、絵本「こんとあき」が大好きな子どもたちにとって、ここはお気に入りの場所だ。「こんとあきはこの丘を登っていったんだね〜」などと話しながら、一時間近く砂丘の砂とたわむれた。日焼け止めをたっぷり塗った私も「砂丘焼け」である。今回は息子と夫が遊覧馬車に、私と娘はラクダに乗り、徒歩とは違った視点で砂丘を楽しんだ。
他に訪ねたのは白兎(はくと)海岸。ここは古事記の伝説、「因幡(いなば)の白うさぎ」の舞台になったところだ。この伝説は、日本海の沖で暮らすうさぎが本土に渡ろうとしてサメをだましたところ、サメに気づかれて皮をはがされてしまい、苦しむうさぎを見つけた大国主神が助けてあげる、というもの。童謡にもなっており、今では同名の和菓子も有名だ。私は夫と結婚するまでこの出雲神話をまったく知らなかった。マザーグースとか聖書に出てくる逸話などはときどき読んでいたが、考えてみたら、日本の古典には疎く、古事記も日本書紀もまったく手つかずなのだ。自分の不勉強を反省する。
今回の旅行では、子どもたちに日本の自然や伝統を肌で感じてほしかった。それで紙すきを体験したり、流し雛の美術館を訪ねたりした。行く先々で、日本文化の奥深さを知ることができ、もっともっと日本について学びたいとの気持ちが私自身、旅行のあともずっと続いている。
鳥取は過疎問題に直面しており、UターンやIターンで就農希望者を募ったり、子育てしやすい街づくりをしたりと、さまざまな工夫をしている。人口が少ないのは大きな課題だと思うが、その分、自動販売機も少なく、不必要な看板もなく、日本の自然がそっくりそのまま残されていて本当に美しかった。地理的に山で隔離されていたからか、昔から自給自足が盛んで、今も海の幸、山の幸が豊富にある。行く先々のレストランも地産地消に励んでおり、食べるものすべてが実においしい。こういう所でのびのびと子育てができたらなあ、翻訳業に特化して鳥取に移住できないかなあというのが、目下、帰京後の夫婦の話題だ。