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かわいい子には団体旅行

かの

通訳・翻訳者リレーブログ

 先月末のこと。市の主催するツアーで奥会津へ行ってきた。目的は「稲刈り」。一泊二日の週末旅行で、あいにく土曜日に仕事のある夫は参加できない。しかし子どもたちには良い体験になるだろうと思い申し込んだところ、抽選に当たったのだ。幸い市内発着のバス旅行だったので、荷物と子ども二人でもあたふたすることもなく出かけることができた。
 私にとって、子ども連れの団体バス旅行は初めて。今まで旅行といえばもっぱら家族で電車や自家用車を使っていた。しかも夫が一緒なので、チョロチョロ動く子どもたちへの目も行き届く。しかし今回は何と言っても大人は私一人。若干不安な中、バスは出発した。
 幼稚園での集団生活に慣れているせいか、子どもたちはバスの中でも意外と静か。緊張していた私は拍子抜けしてしまった。念のためと思ってつけさせたシートベルトもおとなしく着用している。これなら福島までの道のりも何とかなりそうだ。
 ところが途中で立ち寄ったサービスエリアでのこと。売店のおにぎりが食べたいと言う。しかしレジは長蛇の列!がんばって並んでみたが、どうみてもバスの出発時間に間に合わない。仕方なく商品を元の棚に戻し、バスへ戻る。子どもたちは当然、ゴキゲン斜めである。ただでさえ早起きさせられて、長時間のバスだ。空腹なので辛いだろうなと思いつつ、こういう状況も体験あるのみ。そこで私は団体旅行では約束の時間を守る必要があること、自分ひとりのために周りに迷惑をかけてはいけないことを教えることができた。良い機会だった。
 いざ会津に着くと、そこにはのどかな風景が待っており、一面は金の稲穂で埋め尽くされていた。早速、地元の農家の方が鎌の使い方やワラでの束ね方を指導してくださる。お話によると、左手で4束つかみ、右手で鎌を斜めに入れて刈る。その後ワラで束ね、「はで」という乾燥用の棒にかけていくのである。
 早速私たちもやっていたが、意外と難しい。まず腰をかがめて左手で4束つかむだけで一苦労。それから鎌で刈ろうとするものの、刃が入らないのである。何とか刈ってワラで結ぶのだが、これが一番難しかった。結び方が何度教わってもうまくいかないのである。今でこそすべてコンバインで収穫するが、昔の人はこれだけ大変な思いをして稲を刈っていたんだなあと思いながら刈る。
 何度かくり返すうちにそれでもできるようになり、作業も軌道に乗ってきた。ふと子どもたちを見ると、稲刈りそっちのけで稲田の中にずんずん入り、追いかけっこをしている。稲は子どもたちの胸ぐらいの高さ。遠くから見ると頭だけが飛び出して見える。そのうちに「おかーさん、イナゴ見つけたよ!」「ほら、とのさまがえる!!」と次から次へ生き物を見せに来た。他の参加者から「すごいねえ」「こっち来てごらん。もっといるよ」と声をかけられ、大喜びであった。
 稲刈り後は市の保養施設で地元食材満載の夕食をいただき、温泉につかった。翌日は漆塗りや会津焼工房を見学し、会津若松市の鶴ヶ城も訪問。今まで知らなかった日本の美や伝統に触れることができ、私自身、大いに感動した。
 しかし今回最大の発見は、子どもたちの新たな一面が見られたこと。私が思っている以上に子どもたちは成長していた。素手で生き物をつかまえたり、他の参加者と積極的に話したりと、少しずつ自立しているのがわかったのである。
 「かわいい子には旅をさせよ」と言うが、この団体旅行で子どもたちはさらに成長していくのだろうな、と思う。

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記事を書いた人

かの

幼少期を海外で過ごす。大学時代から通訳学校へ通い始め、海外留学を経て、フリーランス通訳デビュー。現在は放送通訳をメインに会議通訳・翻訳者として幅広い分野で活躍中。片付け大好きな2児の母。

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