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トンボ帰りのシンガポール(前編)

かの

通訳・翻訳者リレーブログ

 先週末、子ども二人を連れてシンガポールをトンボ帰りしてきた。行った理由は、友人のお見舞い。彼女はフィリピン人だが白血病にかかってしまい、地元の病院では治療ができないとのこと。それで3カ月ごとにシンガポールの外来で診察を受けているのだ。
 彼女と知り合ったのは、12年前に参加した青年交流でのこと。アセアンからの参加者が客船で各国を回るというプログラムだった。彼女とは当時、寄港先のシンガポールで同じホストファミリー宅に泊まり、仲良くなった。しかしお互い引っ越しやら転勤やらが続き、ここ数年は連絡が途絶えていたのである。今年夏、久しぶりのメールをうれしく読み進めていたら、発病のことが書かれていて私は大いに衝撃を受けた。なぜまだ若いのに彼女が、というのが正直な気持ちだった。
 私ができることは少ないけれど、やっぱり会いたい。そう思ったら、いてもたってもいられなくなった。11月10日には今年の参加青年を乗せて船がシンガポールへ寄港するので、彼女は治療日程をそれに合わせてシンガポール入りするという。よし、私もシンガポールへ行こう。そう思ってすぐに格安ツアーを探した。あいにく夫は仕事で日本を離れられない。こうなれば一人で子どもたちを連れていくしかないが、まあ何とかなるだろう。幸い国内旅行よりも破格のネット限定ツアーが見つかった。
 一方、私がシンガポールを訪問すると聞きつけた当時の参加仲間が、あれよあれよと私と彼女を囲む再会パーティーを企画してくれた。私の日程は9日(金)夕方成田発、夜中シンガ着。10日(土)丸一日を現地で過ごせるものの、帰国便は11日(日)の夜中である。ものすごいタイトスケジュールだ。それでもかろうじて日曜午後に集まることになった。
 現地入りした金曜真夜中、なんと仲の良かった別のシンガポール参加青年がわざわざ空港まで来てくれた。「ツアーなので迎えはあるから大丈夫」と言っておいたにもかかわらず、である。ハードな一日の仕事を終えてから顔を見に来てくれたのだ。これには感激した。しかも「携帯は?ない?じゃ、これ使って」と貸してくれるではないか。友人は今、消防署で司令官を務めており、翌土曜日も仕事だという。なのにわざわざここまでしてくれるなんて。私は言葉に詰まってしまった。しばらく音信不通にしてしまった不義理を、私は心の中で申し訳なく思った。
 土曜日午前はツアー会社による市内観光。肌寒い日本から来たため、蒸し暑いシンガポールに子どもたちはグッタリだ。でもマーライオンを見たり、ホーカー(屋台)で食事をしたりと楽しいツアーだった。午後ホテルでたっぷり休養をとったあと、夕方に再び消防隊の友人がホテルまで迎えにきて、チキンライスのおいしいお店へ連れて行ってくれた。そのあとはナイトサファリへ。猛獣のショーやトラムによる園内一周などに子どもたちは大喜びだった。連日の寝不足はあったものの、忘れられない思い出ができた。
(来週に続く)

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かの

幼少期を海外で過ごす。大学時代から通訳学校へ通い始め、海外留学を経て、フリーランス通訳デビュー。現在は放送通訳をメインに会議通訳・翻訳者として幅広い分野で活躍中。片付け大好きな2児の母。

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