世代交代
日ごろ通っているスポーツクラブ。体力作りも仕事のうちなので、週に少なくとも1回は時間を見つけて顔を出すようにしている。地元のクラブに行けないときは、他店舗のタイムテーブルとにらめっこして、仕事の前後に行けないかどうか検討するほど。幸い、このスポーツクラブのスタジオレッスンは全国共通のプログラムで同じ曲を使うため、どこの支店に行っても同一内容を楽しめる。実家にいたころ、私は別のスポーツクラブで長いこと幽霊会員だった。なので、今はこのプログラムのおかげで続いているとも言える。
さて、私がいつもお世話になっている地元支店では、社員の異動などにより、レッスン担当者がここ1年で大幅に変わった。一時期スタッフが足りず、店長自らが週に10本以上も受け持っていた時期もある。いくらプロとは言え、体力的に大変なのではと心配していたほどだ。その後、新入社員も増え、スケジュール自体も変わり、今月からはずいぶん新しい編成になっている。
よく見ると、これまで大忙しだった店長は今や週3本だけ。残りはかつて研修中だったバイトのスタッフや新入社員が受け持つようになった。かなり変わったねとクラブ仲間に話すと、「世代交代よ」の一言。
うーん、なるほどそうか。スポーツクラブのように、体力一本で勝負する職場では、先輩が後輩へ技術をどんどん伝授しながらスムーズに世代交代をする必要がある。そうすることで最高のサービスを利用者に提供して、満足していただかなければならない。「まだ動けるから」「今までの経験を生かして」ということも言えるだろうが、それよりも「若くて元気があり、新しい空気でお客様に活気をもたらすこと」もスポーツクラブ業界では大事なのだ。
では通訳業界はどうだろう?こちらは経験者が常に重宝してもらえる世界だ。通訳者としてデビューする際、一番ネックになるのは経験の有無。エージェントに連絡すれば「これまでの経験は?」と必ず聞かれる。経験を積みたいから仕事を求めているのだが、仕事がなければ経験はない。その部分をどうクリアするかが問われる業界だ。
よって通訳の世界では、経験が多ければ多いほどクライアントも安心してくださり、性別も年齢も問われない。通訳者自身も、常に向上心と向学心さえあれば、生涯現役でいられるのだ。
ただ私個人としては、どのようにして未来の通訳者を育てるかも大事な任務だと思っている。医師である友人が、新しい赴任先からこう書いてきた。「ようやく念願の遠隔地医療に携わることができます。これからの僕の仕事は、地元の医療サービスの向上と、後進の指導です。」
いつかは世代交代の時期が来る。彼のように、しっかりと後輩を導けるようにしたいと思う。