手間の貯金
「今日も笑顔で台所」という本を読んだ(本谷恵津子著、婦人之友社)。
最近流行しているレシピ本と比べれば、決して華やかな書籍ではない。しかし随所に印象的な文があり、とても良かった。
中でも私が気に入ったのは、「手間の貯金」ということば。ほんのひと手間をかけておくことで、お料理がやりやすくなるのだそうだ。たとえばあらかじめ野菜を切っておくこと。なーんだと思われそうだが、私のように毎日子育てや仕事にアワアワしている人間にとって、これは目から鱗だった。
本谷氏いわく、玉ねぎならば目的によって「皮だけ剥いてビニール袋に入れておく」「炒めておく」「炒めて冷凍しておく」といった、いくつかのステップがあるとのこと。それで私も早速色々と試してみた。
人参や白菜、ダイコンなどは火が通りやすいよう、一口サイズに切る。これを朝食準備中、まないたを使ったついでに切ってしまう。タッパーに入れたら冷蔵庫へ。これをやっておくと、夕方、切る手間が省けるので、お味噌汁でも炒め物でも鍋物でもOK。あとはフライパンやお鍋に入れて味付けするだけだ。仕事から帰宅したあと、慌ただしく材料を洗って切ってという部分が省略されるので、これだけでも心理的バリアは取り除ける。このおかげで仕事がある日の夕食準備時間は30分で済むようになった。
一方、我が家はホームベーカリーが好きで、パンはもっぱら自家製。前の晩にタイマーでセットしておくと、翌朝、香ばしい香りが家中に漂う。これが好きでここ数年は市販のパンを買わなくなったほどだ。ひじきや青のり、シナモンやコーヒーなど、自分なりにアレンジすることも可能だし、無添加なので安心。で、こちらも前夜に強力粉やお砂糖などの材料を一通り計量した際、ついでにもう2セット分を計ってジップロック2枚に入れておくのである。一日おきに焼いているので、計る手間が毎回省けるだけでも助かる。ちなみにパン焼き機使用の際は必ずバターが10グラム必要なので、バターも1パック買ってきたら、すぐに10グラムずつ切っておく。ホームベーカリーをセットするたびにナイフで切って、まな板とベタベタのナイフを洗う作業を省けることになる。
他にも、近所の農協でホウレンソウやブロッコリを買ってきたら、冷蔵庫へしまう前に一気に茹でてしまう。火から下ろしたら、その日に食べる分はタッパーへ、残りはビニールに入れて冷凍庫へしまう。買い物から帰宅後、この作業をやっても1時間はかからないし、こうして茹でてしまえば野菜室が満杯になることもない。以前の私は買ってくるとすぐに野菜室に入れてしまい、「いつか時間がある時に」と思いつつ、そのまましなびてグッタリさせてしまうことが少なくなかった。
次の日の朝食で使うトマトやりんごは前の晩にあらかじめ洗っておくだけでも、忙しい朝は助かる。なお、我が家は冷蔵庫の中に「朝食セット」というトレイを用意しているのだが、この中には朝食で使うヨーグルト、スライスチーズ、キャンディーチーズ、ジャム、ソーセージが入っている。朝は冷蔵庫を開けて、トレイごと取り出すだけ。一つずつ出すよりも一気に出せるので便利だ。
まさにほんのちょっとした作業なのだが、この「手間の貯金」、ぜひお勧めしたい。