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ピアノと運動会と不採用通知と稲刈り

いぬ

通訳・翻訳者リレーブログ

22日から大学の授業が始まった上に、いろいろなイベントが目白押しで、あっという間の1週間でした。

月曜日。久々の授業でR大学に行くと、聴講生が3人から5人に増えていました。実はこの授業、正規の受講生が1人しかおらず、しかもその人が授業に出てきていません。そんなわけで、全員聴講生という状態で授業を進めてきたのですが、前期に出席していた聴講生が、さらに友人を2人連れて来たというわけでした。こちらとしてはthe more, the merrierなので大歓迎です。

23日火曜日は、娘のピアノの発表会。連弾(と言っても伴奏するだけ)をやるので、私もステージに上がりました。和気藹々とした発表会で、とてもよい雰囲気でしたね。問題があったのは私の演奏だけです。う〜む、いつまで連弾してもらえるのかな。同じくお嬢さんと連弾しているお父さんがいらっしゃったので、写真撮影の時にちょこっとおしゃべりしました。でも、あの方はソロでも弾いてて、とても上手かったし、同じ次元では語れませんよねえ。

水曜は朝から夜まで授業が6コマ。D大学で4コマ教えた後、電車に飛び乗ってA大学の夜間部で2コマです。木曜日はR大学で授業が1コマ。授業が無い時間も授業準備と、その他の事務処理で埋まります。金曜日は事務処理に明け暮れ、夕方からは妻の友人が遊びに来てくれて、子供たちは大喜び。我々2人も遅くまであれこれとおしゃべりしていました。

土曜日は息子の運動会。「開場は午前6時半。時間厳守です」という学校からのお知らせに首をひねりつつ、運動会が始まる1時間半ほど前の午前8時ごろ校庭に行くと、保護者席はすでにビニールシートで埋まっていました。花見の場所取りですかっ!

一瞬呆然としましたが、皆さんシートを広げた後はいったん帰宅されたようで、周囲に人影はありません。強風が吹きすさぶ中、吹き飛ばされてしまっているシートもかなりあったので、開いたスペースを実効支配することに決め、ピクニックシートを広げて領有権を主張した後、用意してきた本を取り出して腰をすえて読み出しました。ちょっと寒かったですが、青空の下で本を読むのはなかなか爽快でした。ただ、昇る朝日の威力をあまり考えていなかったため、現在私の顔は左半分だけ真っ赤に日焼けしています。

さて、運動会は息子が私に似ずになかなかの運動神経であることが判明したり、保護者参加の綱引きで、温和な教頭先生が突如として猛々しい掛け声をかけたのに仰天しつつ一緒になって野生化して2連勝したり、息子が私に似ずに、ダンスもなかなか上手いことに驚いたりと、手に汗握ったり笑ったり食べたり飲んだり拍手したりしているうちに閉会式になりました。

帰宅してみると、6月の頭に専任教員の面接を受けたある大学から封書が。不採用通知でした。覚悟はしていたというか、とっくに諦めていましたが、それでもやはり「あなたは不要です」と言われるのは、ちとこたえますね。これでそろそろ二十連敗ぐらいでしょうか。5〜6連敗したあたりから数えていないので、正確には分かりません。

どこかで腰を落ち着けて、自分が納得の行くような教育が出来ると良いのですが、そうそう夢のような条件はないでしょうし、現時点で出来る事をコツコツとやりつつアピールを続けるしかないなと思っています。

翌日は稲刈りの体験に一家で出動です。虫を追いかけることに専念するかなと思っていた息子も、「僕もやってみる!」と子供用の鎌を持って、やる気満々です。

大人用の鎌には、鋸のような歯がついていて、一株ぐらいの稲は簡単にスパッと刈れます。息子と話しながら一度に4〜5株ぐらいを刈って、刈った稲を揃えて田んぼに置いて、という作業を繰り返しますが、これに不思議とのめりこんでしまいました。

稲を刈ることそのものは、結構無心になれて楽しかったのですが、刈った稲を脱穀のためにコンバインに入れるのが、ちょっとしたコツがあって少々面倒でした。その後は落穂拾いをやりつつ「ああ、この稲穂も脱穀すればちゃんと食べられるのに、何かの拍子にコンバインからこぼれ落ちて踏ん付けられちゃって・・・。俺もこの落穂みたいな存在なのかなー」などと昨日の不採用通知ショックを暫く引きずっていましたが、そのうちに作業に没入してしまい、「このぐらいでお昼にしましょう!」という声を聞いた頃には、すっかり気分も晴れていて、お腹が鳴っていました。単純なもんですね。

それにしても、食べ物を作るというのは本当に大変なことです。今朝、我が家のパン焼き器が故障したために、慌ててコンビニにパンを買いに走ったのですが、考えてみればそんなことが出来るのがイレギュラーなんですよね。いろんな意味で。

あとは、稲刈りをしていると、いろいろな生き物に出会いました。イナゴにバッタに蛙にトカゲ、あとは干上がったタニシとか。水田が様々な命を育んでいるのだなと思う一方で、本来は人間も、こういう生き物に囲まれているのが当たり前の状態なんだなとも思いました。昔と比べると家の中でもいろいろな生き物に遭遇する機会がグッと減りました。自分の生活空間から他の生き物を排除することで、人間は何を得て、何を失ってきたのでしょうか。

そんな思いも、また巡ってきた慌しい一週間に飲み込まれてしまいそうです。

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記事を書いた人

いぬ

幼少期より日本で過ごす。大学留年、通訳学校進級失敗の後、イギリス逃亡。彼の地で仕事と伴侶を得て帰国。現在、放送通訳者兼映像翻訳者兼大学講師として稼動中。いろんな意味で規格外の2児の父。

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