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いぬも歩けば・・・

いぬ

通訳・翻訳者リレーブログ

妻と一緒に駅中のスーパーで買い物をして出てきたところ、募金活動か何かをしている人が連れてきたらしき、ゴールデン・レトリバーが階段の手前にペタンと伏せていました。

「お、かわいー」

などと声を出すと、こちらを見てしっぽをふりふり。階段を下りてからそちらを見ると、目が合ったところで、またしっぽをふりふり。たまらず近寄って行くと、しっぽがピタリと止まりました。どうやらそれまでは、気を使ってくれていたようです。

ハンドルネームの通り犬が、特に大型犬が好きなのですが、イギリスにいるときには住んでいた場所の近くに大きな公園があったので、よくそこを全力疾走する大きな犬たちを見ていました。盲導犬もよく通勤電車で乗り合わせたのですが、日本と違って触っても良いようで、「どうぞ撫でてやって。喜ぶから」といわれてなでなでしたものです。座席の間からこっちを見上げるクリクリした目が印象的でした。

ラブラドールにしてもゴールデンにしても、本来はガンドッグ(狩猟犬)で、撃ち落した獲物を取ってこさせたりしていたようです。それなので、人間のためにいろいろな作業をすることに、本能的な喜びを見出すようですね。

通訳者や教育者という職業も、ある意味では他人のためにいろいろ働きかけることに喜びを見出せないとやっていけない仕事のような気がします。使命感に燃えた表情でハーネスをつけた犬たちを街中で見かけるたびに、自分もああでないといけないなと思うことしきりです。

さて、ぼちぼちカミングアウトしても良いと思うのですが、「いぬ」はこのたび、野良犬を卒業して、飼い犬になることになりました。

2002年に帰国して以来、通訳専業から通訳教育・英語教育に軸足を移したい、そのために大学の常勤講師になりたいといい続けてきたところ、いろいろな先生方のご協力があり、まず2004年以来、いくつかの大学で非常勤講師として勤務することが出来ました。

しかし、常勤講師になるためには研究業績が圧倒的に不足しており、そこがネックで(いや、それ以外も自覚のない「ネック」だらけだったのでしょうが)公募を受けても連戦連敗。せいぜい書類審査を突破したところどまりでした。

野良教員と言いますか、犬で言えば飼い主のいない野良犬状態が長く続いていたのです。かなり「すね犬」状態になった時期もありまして、「いーんだ。もう一生この状態で教育と通訳の仕事が出来れば」などと言っていた時期もあったのです。

ところが、以前にも書いた「ごっつぁん人生」の次章がありまして、多くの先生方のお力添えとご協力(そして恐らくは多大な買いかぶり)のおかげで、ある大学の常勤講師として4月から勤務することになりました。

あちこちを転戦していた生活に終止符を打ち、一箇所で腰をすえて戦闘、いやいや教育と研究に打ち込めることになります。そして、今度こそは「結果を出す」ことが求められているのも自覚しています。せっかく評価していただいた先生方と、こんな自分を拾ってくださった大学のご恩に報いるためにも、しっかりとやって行こうと考えているところです。

詳しくは4月以降にお話しすることになりますが、そんなわけでこのところ事務処理と授業準備に忙殺されておりまして、書きたいことはあるものの、思うようにコラムを書く時間が取れずにいました。とりあえず舞台裏の事情を読者の皆様にご報告しようと思った次第です。

一体この先何があるのか、期待で武者震いがしますが、とにかく背伸びをせず、全力で取り組んでいくだけです。

一生懸命な人の援護射撃をすることが生きがいですから、放送通訳にしてもそのニュースを知りたいと思っている視聴者の方々のために出来る限り良いアウトプットをして行きたいですし、授業にしても英語力や通訳力を身につけたいと思っている学生さんたちに、最大限の助力をして行きたいと思います。そして研究は・・・。研究。あああ、ど、どうしましょう、みなさん。いやいや、そこで他人に尋ねてどうする、自分。

最後の最後でお約束通りずっこけるのは、相変わらずです。今後ともどうぞ宜しくお願いいたします。

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記事を書いた人

いぬ

幼少期より日本で過ごす。大学留年、通訳学校進級失敗の後、イギリス逃亡。彼の地で仕事と伴侶を得て帰国。現在、放送通訳者兼映像翻訳者兼大学講師として稼動中。いろんな意味で規格外の2児の父。

END