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オリエンテーションキャンプ

いぬ

通訳・翻訳者リレーブログ

今週は大学が福島に持っている宿泊施設で、新入生オリエンテーションキャンプが行なわれました。本音を言うと、もっと早い時期に「オリエンテーション」をした方が良いとは思うのですが、それでも日常を離れて同じクラスの学生同士で過ごすのは楽しいものです。

行きの新幹線の車中では、教員同士で座ったので何となく緊張してしまいましたが、考えてみたら私も教員なのでした。いまだに学生気分が抜けていないようです。

現地についてすぐに食堂で食事を取っていたのですが、カウンセラー兼案内係として同行している2年生が、「先生の通訳翻訳課程の学生さん、すごいですよ。他のクラスは大騒ぎしているのに、黙々と勉強してました」と話しかけてきました。

「よーし、良くやった!」と思う気持ちが半分、「旅行の時ぐらい、要領よくサボりゃいいのに」というもどかしい気持ちが半分。とりあえず学生たちが食事をしているテーブルに行って、「頑張ってたんだって?僕も鼻が高いよ。でもまあ、せっかく来てるんだから、ちょっとは楽しもう。金曜日のテストは、合格基準を緩くしてあげるからさ」というと、みんなの目が輝きました。いやいや全く、素直で可愛いです。

午後は就職部の先生のお話。いろいろ共感できることが多かったです。第一印象の大切さを力説されていました。どうやって「その他大勢」から抜け出すかもお話されていましたね。その一方で感じたのは、やはり今の日本で圧倒的に需要があるのは、第三次産業なのだなあということ。

プラグマティックかどうか、良い印象を与えられるかどうかが、非常に優先されているのだと感じました。例えばあるエアラインはエントリーシートを手渡しするのだそうですが、その際に第1段階のふるいにかけられているんだそうです。印象が良い人だけが生き残れるわけですね。

まあ、客室乗務員であれば、良い印象を与えられるかどうかが最優先課題なわけですから、それでも良いでしょう。非常に重要なことは理解できますが、就職活動におけるポイントが、良い印象を与えること「だけ」という、誤った考え方を学生さんたちがしないかどうかが、ちょっと心配になりました。評価の仕方もいろいろあると思いますけれども。

しかし、そこまで他人に与える印象を云々する割には、感じの悪い大人が増殖してきたような気がするのですが・・・え?鏡を見てみろ?失礼致しました。

それはともかく、学生さんと将来何になりたいか話していると「ホテル関係」「客室乗務員」というお話がよく出てきます。なるほど、と思う一方、大学で提供される教育と、そのような進路との間の関連性をしっかり見出していく必要があるなあとも感じます。

夕食をとった後は、学長の講話です。通訳翻訳課程の学生諸君には、「メモをとりながらしっかり聞くように。お話が終わった後は、必ず質問をするように」と伝えておいたので、みんな一生懸命聞いていました。

外務省での経験なども非常に興味深くお聞きしたのですが、通訳者として興味深かったのは、一対一の、内々の首脳会談(tete-a-tete meeting)における通訳についてでした。

まず、日米の首脳会談であれば、日本側の通訳者が日英、アメリカ側の通訳者が英日の通訳を行なうそうです。自分の母語に訳すのが普通なのかと思っていましたが、後でお聞きしたところ、外交上の駆け引きなどもあり、そのような慣習になっているということでした。

また、議事録なども残らないため、通訳メモを元に議事録のようなものを作るのだそうです。これは頭が下がりました。私の場合、たとえメモを見返しても、よほど印象的なやり取りでない限り、通訳したことを一字一句までは覚えていられません。日本のマスコミは特に「語られたとおりの言葉」を求めるとのことで、それに答えるのは大変だろうなと思いました。外務省内部で、そのような通訳者を養成しているのだそうです。素晴らしい方々だなと心から尊敬しました。

講話の後は質疑応答に入ったのですが、まあ、大人でも上手な質問は難しいですからね。「何ヶ国語話せるんですか?」などという微笑ましい質問が飛び交っていました。惜しむらくは我が通翻課程の学生さんたちが講堂の端に座っていたことで、みんな目をギラギラさせて手を挙げていたのですが、指名されませんでした。

しかしその分、講話の後に施設内にあるイングリッシュ・パブで学長と通翻クラスの男子学生3人組と一緒にあれこれ話せたので、本当に実りある夕べでしたね。そうそう、私が大学に入った頃は、新入生相手のコンパなどが良くあって、「お酒は20歳になってから」などという言葉は有名無実と化していたのですが、今は厳しいんですね。学生たちはソフトドリンクを飲みつつ盛り上がっていました。

11時過ぎにパブがしまった後は、ネイティブ教員と一緒に部屋で1時過ぎまで飲みつつ話していました。いろんなバックグラウンドがある教員ばかりで、有意義なひと時を過ごせました。高校時代に「トミー植松のイングリッシュ・ギャラクシー」とか「百万人の英語・軽井沢サマースクール」などに参加したことがあるのですが、何となくそんなイベントの雰囲気を思い出します。ちょっとノスタルジックな気分も味わえました。

ぐっすりと6時過ぎまで寝て、シャワーを浴びて朝食。その後はクッキングやカリグラフィーなどのアクティビティーに分かれます。私はカリグラフィーを見学したのですが、これが面白かったです。思わずカリグラフィー用のペンをお土産に買ってきてしまいました。ちなみに、クッキングのクラスはスコーンを作ったようで、学生さん2人から1つずつおすそ分けを頂き、半分ずつ食べて、残りは家族のお土産にありがたく頂戴しました。

学生たちも親睦を深められたようですし、私自身もいろいろ考えられて、とても充実した2日間でした。後はこれを今後の指導にどう反映させていくかだな、と思っているところです。

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記事を書いた人

いぬ

幼少期より日本で過ごす。大学留年、通訳学校進級失敗の後、イギリス逃亡。彼の地で仕事と伴侶を得て帰国。現在、放送通訳者兼映像翻訳者兼大学講師として稼動中。いろんな意味で規格外の2児の父。

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