藍より出でて……
トナカイさん、はじめまして。いぬです。どうぞよろしくお願いいたします。
さて、今週は2回嬉しいことがありました。
まず一つ目は、通訳翻訳課程の教え子たちが、自主的に勉強会を始めたことです。言い出したのは1年次から教えていて、新2年生になった男子学生2人なのですが、「キツイ、キツイ」と言いつつ進級した一期生なので、これから大丈夫かなあと内心ちょっと心配していたところでした。
ところがある日、通翻課程の簡易メーリングリストで、彼らから勉強会のお誘いメールが流れたのです。英語を中心に、幅広くいろいろなことを学ぶつもりのようで、まだ具体的何をということは決まりきっていないようですが、単なる「語学試験対策サークル」ではないようです。
真面目な一方、「先生、どうしましょう?どうしたらいいんですか?」と途方にくれた声をあげることが多い学生たちでした。こちらも「大丈夫かなあ、大丈夫かなあ」と見守ってきたわけですが、ここに来て意外な成長ぶりに驚きました。一本取られたって感じです。取られて嬉しいんですけれどもね。
「こんなのはどう?」「こういうことも学んだら?」とあれこれ言いたくてたまらないのですが、そこをグッとこらえて、彼らがどう動こうとしているのか、しばらく暖かく見守りたいと思います。もちろん質問などがあったら、一肌もふた肌も脱ぐ気はありますが。
二つ目は、通訳学校の教え子たちが、それぞれの道を逞しく進んでいることが分かったことです。土曜日に、かつての生徒たちから声がかかり、同窓会のようなものをやりました。
会場でビールを飲みながら数えたのですが、かれこれ4年前の教え子になります。「通訳準備科」というクラスで、それまで一番基礎的なクラスだった「入門科」のさらに下位クラスとして設置されたそのクラスの、記念すべき一期生たちです。
授業に際して、私自身もどのようなレベル設定をしていいのかイメージが十分わかず、とりあえず「鬼軍曹モード」で始めましたが、皆さんとにかくひたむきで、必死に食らいついてくれました。教えがい、鍛えがいのある生徒さんだったことを良く覚えています。
「いやー、最初の頃の先生、無茶苦茶怖かったですよー」
「えっ、いやー、ハハハ、申し訳ない」
「ホントホント。どうしようかって思いましたもん」
「そんなに?いや、申し訳ないです。でも、今すぐには出来ないことでも、基本的な姿勢のようなものは、叩き込んでおかなくちゃって、必死だったもんで」
「私たちだって、必死だったんですよ、もー!」
などと楽しい逆襲を受けつつ杯を重ねました。今はどうしているのかと尋ねると、それぞれ映像翻訳や英語関連の団体での仕事やら、国際交流団体のお手伝いやら、逞しく前進しています。
2時間ほど経ってから、やはりそのクラスを受講していた男性が、結婚したばかりの奥さんを伴って駆けつけてくれて、座は大いに盛り上がりました。彼は5月から、会社に派遣されてボストンに駐在することになるそうです。
当時の私の言ったことを、皆さんあれこれ覚えていて、それを「先生はこんなことも言った。あんなことも言った」と口々に再現してくれます。
「先生が言ったことが書いてある当時の授業メモは、今でも時々見返したりするんですよ」
などと言われて、気恥ずかしいやら「あ、そのネタはその頃から使ってたか」と再確認するやら。でもやっぱり、嬉しいものです。特に、自分が言ったことを支えにして、立派に独自の道を歩んでくれていることが、教師冥利に尽きるなと思います。
丹精込めて育てた木々が、色とりどりの花を咲かせたようでした。そんな「花見」が2度も出来て、幸せだなと思った1週間です。