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あるべき「学び」の姿とは

いぬ

通訳・翻訳者リレーブログ

子供たちの小学校の授業参観に行く。最初は娘の算数の時間。繰り上がりのある足し算をやっているのだが、子供たちみんなが興味を持って楽しんで学んでいるのがとてもいい雰囲気だ。

隣のクラスからは、国語の教科書をクラスみんなで朗読している声が聞こえる。それにかぶるように、2年生の教室からだろうか、「ハイ!ハイ!」と手を挙げる声がする。

息子の教室に妻と向かいながら、音楽室や家庭科室、工作室なども寄り道してのぞいてみる。

こういう空間が、自分にとってとても好ましい感じがするのはなぜなのだろう。「学ぶことが楽しい」という雰囲気が横溢しているからだろうか、と思う。

息子も娘も、元気に手を挙げては「指されなかった〜」とがっかりしている。まあ、娘の場合は、せっかく指名されたのに2回とも「……忘れました!」とキッパリ言って元気に着席していたが。相変わらずの社長っぷりだ。息子は息子で、ずっと消しゴムのかすを丸めて転がしたり鉛筆を定規を滑り台にして転がしたりしているくせに、課題だけは先生が回ってくる直前に要領よくちゃっちゃかやっている。まあ、僕もあんなもんだったよなあ。決して模範生ではなかった。

それにしても、小さいころは、こんなにも楽しく学んでいるんだから、なるべく僕の教え子たちも、教室で目を輝かせてもらえるように教えたいものだ。

人間は、いくつになっても学びたがりの知りたがりだと思う。その気持ちにどんな形でうまく寄り添うか。それさえうまくいけば、授業も学生たちの「学び」も、その時点で8割がた成功しているのだが。

大学は専門教育の場ではあるが、語学教育は究極的にはスペシャリストの養成ではなくジェネラリストの養成だと思う。何らかの形で、幅広い「学び」の機会がある小学校の特性を、うまく大学教育に取り入れて、本当の意味で「実践的な」語学教育をしたいものだ、と思った。

授業参観のあと、体育館で開かれたマリンバ・コンサートも楽しかった。マリンバが本来は「マ・リンバ」(突き出した棒の意味)だとは知らなかった。マラカスが「マラカ」という植物の実の複数形ということも初めて知った。実に興味深い。3人のグループで、とても上手だった。

マレット(撥)の硬さによって音色が違うそうで、硬いマレットで「剣の舞」、柔らかいマレットで「白鳥」を弾いてくださったが、今まであまりマリンバをじっくり聞いたことがなかったので、実に心地よく聞き入ってしまった。良い音色だなあ。

そのほかにも「天国と地獄」とか、ディズニーのメドレーとか、「となりのトトロ」のメドレーを弾いてくださった。「となりのトトロ」では、子供たちがみんなで元気よく歌っていて可愛いこと可愛いこと。

クラーベという拍子木のような楽器も、みんなで手拍子でリズムをとったりして楽しかった。「クラーベ」というと、ついついローマ法王就任の時の「コンクラーベ」を連想してしまうのだが。

大満足で妻と帰路につく。ただ、できればアンコールで「今日の料理」のテーマをやってほしかったなあ。

開けて日曜日。

昨日はあれから学生たちを呼んでパーティーをやったので、今朝はみんなでのんびり。久々に「題名のない音楽会」を聞きながら朝食。その後学会に出した論文の修正をひたすらやる。

昼は昨日の寿司の残りにサラダなどなど。論文の修正を続ける。息子は自転車で図書館に行ったらしい。娘はぬいぐるみの猫と一緒に畳に寝転がって、妻の電子辞書であれこれ引いてみては遊んでいる。妻は「食べ過ぎた」と言って、2駅ほど先まで散歩に行った。

夕食は学生が持ってきてくれたナスとインゲンを食べる。焼きナスと、レンジで蒸して、両方とも生姜醤油で食べたら実に美味だった。子供たちもぺろりと食べる。

子供たちは辞書が面白くなってきたらしく、あれこれ辞書で引いてみてワアワアと大騒ぎ。そのうちどちらが使うかでケンカを始めたので、僕の電子辞書も貸してあげた。いろいろな場所にある英語の単語を検索しては、「そういう意味だったのか!」と息子は大興奮。

「辞書を持って旅に出よう!」と言って、辞書片手に家中を回りだした。娘は音声再生機能が面白いらしく、何度も使っている、息子も使ってみて、上手に真似していた。

ベイブレードの名前を引いては「そうか、だからかあ!」と納得の声をあげたり、gasという言葉を引いて、音声再生をしてみて「ああ、『ギャス』って、ガスのことなんだ!」と言ってみたり。

面白がって何度も聞いて真似をするから、実に正確に音を再生する。息子も娘もだ。徹底した反復練習と集中。さらに自発学習。これだよなあ、本来の「学び」というのは。

うまいことこの楽しさを大学教育に生かせないものかな、と思う。

子供たちを寝かしつけてから、妻と学生が持ってきたクッキーを食べつつおしゃべり。今日の散歩で書店に入ったら、「TOEICこれさえやれば」「傾向と対策」みたいな本ばかりでげんなりしたという。小川邦彦先生の本をアマゾン経由で買って、それが面白かったとのこと。

小手先のノウハウではなく、できるだけきちんとした「学び」のために末永く活用してもらえるような本を、出してみたいものだなあ。まずはT&Iの教科書のようなものを作ってみて、それのダイジェスト版のようなものを作れないだろうか。

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記事を書いた人

いぬ

幼少期より日本で過ごす。大学留年、通訳学校進級失敗の後、イギリス逃亡。彼の地で仕事と伴侶を得て帰国。現在、放送通訳者兼映像翻訳者兼大学講師として稼動中。いろんな意味で規格外の2児の父。

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