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数十年ぶりの「基地」建設

いぬ

通訳・翻訳者リレーブログ

今週はNHKの早朝勤務やらなにやらでバタバタしましたが、ようやくCALL教室も完成して通訳の授業などはそちらで出来るようになり、研究室にもちらほら学生が遊びに来るようになって、徐々にいろいろなことが軌道に乗ってきたなという感じです。

居心地が良いというか、とにかく学科の教員同士の関係が非常に良好で、1人で昼食を取っていると何となく同僚が集まってきて大笑いしながらの食事になったりします。また、いろいろと深い話を聞けるのも興味深いです。

先日はI先生と昼食をご一緒したのですが、ニューギニアの言語を研究されているということで、思わず引き込まれてお昼休みギリギリ一杯まであれこれお話を伺ってしまいました。ザッと内容を箇条書きにします。

・ニューギニアには7百もの言語がある
・人間が東西、南北に移動した、ちょうど十字路に当たる土地と考えられ、様々な言語の特徴がある
・わずか10数キロしか離れていない部族の言語が、基本語彙から全く別物ということもある
・一つの言語を維持するのに必要な人数は、一概には言えないが、I先生がフィールドワークで関わっていた部族の人数は1800人ほど
・生活が変わると、現地語で表現する必要性がなくなる→言葉が滅ぶ
・ニューギニアに日本軍が来た際には、現地人も徴用された
・今もご存命の高齢者が覚えている日本語は「ブタ」(食糧)と「女」

以前学会の発表でオランダのマーストリヒトに行ったことがあるのですが、あそこは非常に特殊な場所で、周りをドイツに囲まれています。細い回廊のような土地で一応オランダとは地続きなのですが、実質的には飛び地と言っていいかもしれません。

マーストリヒトのオランダ方言と、周囲を囲むドイツ語の方言は非常に似ており、お互いにその方言で話すと、意志の疎通が可能だということでした。まあ、あのあたりは取ったり取られたりしていましたし、国境の概念もそれほど強くなく、しかも交流も盛んですからニューギニアと同列には論じられないでしょうが、それにしても基本語彙すら異なるとは面白いなと思いました。

他にもいろいろ伺ったのですが、カーゴ・カルトの話も面白かったです。いつの日かお宝(最新機器など)を満載した船が現れる、という信仰の一種だそうです。調べてみたら、しっかりウィキペディアにも載っていました。実に興味深いですね。

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AB%E3%83%BC%E3%82%B4%E3%83%BB%E3%82%AB%E3%83%AB%E3%83%88

その他にも、ニューギニアの人と千葉に住む人の生活を交換するという内容のテレビ番組が、いかににひどい作りかというお話も興味深かったです。ニューギニアで日本人が体験して行ったことは、例えて言えば、日光江戸村に行って忍者ショーを見てちょんまげの鬘をかぶって記念写真を撮って「日本生活を体験した」と言うに等しいことだ、とのこと。なるほどねえ。

4月から私の所属する学科には、私と私より若い新進気鋭の研究者の2人が採用されたのですが、彼が何と鳥取出身で、しかも私の親戚が住んでいる鳥取市内の出。水曜日に行なわれた我々2人の歓迎会では、「加露の港が・・・」とか「海陽亭が・・・」などと超ローカルな話をして楽しみました。

我が家の子供たちも小学2年と幼稚園の年長となり、朝も手がかからなくなって来ました。妻も相変わらず忙しく、通訳で早朝勤務などに入ることも増えたので、朝は1人で子供にご飯を食べさせてお弁当を作り、娘を幼稚園に送らないといけないこともあるため、大変助かります。

息子は一生懸命お手伝いしてくれるし、娘の方も、木曜日の朝、幼稚園に送って行こうと車に乗せると、「ねえ、お父さん、もうドア閉めて良いよ」と言います。

「ベルトは?」と聞くと「一人で出来るようになったんだ!」と実に得意げです。エンジンを始動させたあたりでシートベルトの金具が「カチン」と音を立てていました。本当に子供は日進月歩で成長していきますねえ。私も頑張らねば。

金曜日。一通りの授業をこなして研究室に戻ると、メディアセンターから電話がありました。注文しておいたPCが届き、月曜日に研究室に据え付けてくれるそうです。これは実に嬉しい知らせでした。学生さんたちと一緒に、大部屋でPCを使う日々からようやく解放されるわけですね。作業効率も上がりそうです。

大学近くのニトリに本棚などを見に行ったり、研究室の学生たまり場コーナーにどんな本を置いてやろうかな、などと考えたりしています。子供の頃、友達と「秘密基地」作りに熱中したことがありましたが、何だかそれに似た楽しみですね。

土曜日は妻が申し込んだ親子落語講座に一家で行ってきました。図書館併設のホールに、橘家蔵之助さんと春風亭ぽっぽさんがいらしてお話をしてくださったのですが、これが実に面白かった。

・舞台向かって右が上手(かみて)、左が下手(しもて)
・花道があるのが下手
・出囃子は噺家によって違う。テーマ音楽のようなもの
・一番太鼓
最初にカラカラと太鼓の胴を打つ。「場内は『カラ』です、入って下さい」、の意味
さらに「ドンドン、どんと来い!」と聞こえるように打つ
ばちを「入」の形に太鼓に当てたりしてゲンを担ぐ
・二番太鼓(開演5分前に叩く)
・中入り(休憩)
・追い出し太鼓(出し物が全て終わった後に叩く)
「出てけ出てけ、てんでんバラバラ」と聞こえるように打つ
カラカラと胴を叩いて、場内がカラになったことを表現。
最後に皮を止めてある鋲をばちでギギーッとこすり、戸を閉めてカギをかける音を描写する

落語も2席聴けました。ぽっぽさんのフレッシュな語り口も良かったのですが、圧巻は蔵之助さんでした。あっという間に世界に引き込まれます。細かな表情や、自分の方に目線が飛んでくることで、自分自身も落語の世界にいるような気分になるというのは、テレビでは味わえないことです。知っているようで、実は全然知らなかった世界があったのだな、としみじみ思いました。

その後は息子を空手の道場に連れて行き、稽古の合間に買い物を大急ぎで済ませ、日曜日は部屋の片付けと仕事のメールのやり取りで明け暮れました。その合間に家族で久々の外食に行けたのが、なかなか楽しかったです。

とにかく、忙しかったり先が見えなかったりする部分はあるものの、実に楽しく日々が遅れているわけで、これは幸せなことだなあ、ありがたいことだなあと思います。そういう恵まれた立場にいる以上、いろいろと勉強して学生さんたちに、そして社会に出来る限り還元

て行きたいと思っているところです。

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記事を書いた人

いぬ

幼少期より日本で過ごす。大学留年、通訳学校進級失敗の後、イギリス逃亡。彼の地で仕事と伴侶を得て帰国。現在、放送通訳者兼映像翻訳者兼大学講師として稼動中。いろんな意味で規格外の2児の父。

END