この世の美しい瞬間たち
自然と調和する日本の山寺の、なんとも美しいこと…。
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八尾万(やおよろず)の神。自然崇拝。
大地に抱かれながら、静かに深呼吸。
細胞のひとつひとつが、ゆっくりと、浄化されてゆく。
自然界のあらゆるものの中に、神が存在する。改めて、実感する。
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雪降る頃——
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新緑の頃——
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花咲く頃——
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紅葉の頃——
……季節ごとに、異なる顔を見せてくれる地は、それだけでも、強くこころ惹かれる。
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朝方。陽が昇る頃。
あのひとも、このひとも、この瞬間、眠りから覚めようとしている。
あっちと、こっちと。この陽の下、この地球上で、しっかりと繋がっている。
そう思うと、とても幸せな気持ちになれる。
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夕方。陽が沈む頃。
過ぎゆこうとする“今日”を、やさしく抱き締めたくなる。
……時間(とき)の移り変わりゆくそのさまも、また、愛おしくてたまらない。
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旅の途中、ふと足元に目がゆく。
そこには、自然の織り成す芸術作品が、一面に広がっている。
同じ色や形の葉は、ひとつとしてなく…
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木々に寄り添う影もまた、時間と共に、刻々と変わりゆく…
すべては、まるで奇跡のよう。
自然の神秘に、畏敬の念を抱く。
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落ち葉の追いかけっこ。
自然の奏でる音楽が、身体に心地好く沁み渡る。
大空も、草木も、花々も、小川も、小路も、みんな、美妙な旋律を紡いでいる。
その音色に、耳を傾けながら、思わずスキップしたくなる。
ちょっとだけ、寄り道。小川沿いを、のんびり歩いてみる。
そうして、ふと川向こう、ちょっとだけ遠くへと、目を向けてみる。
するとそこに、仲良く微睡(まどろ)む、可愛らしいふたりの姿が…。
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周囲の光景と、不釣り合いのようでいて、でも、とっても溶け込んでいて。
思わず微笑んでしまう。
その情景を想いながら、歩いていると、その日ずっと、ほんわか穏やかな気持ちでいられる。
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シラサギも——
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カメたちも——
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シカも——
……旅の途中で出逢った子たちは、みんな、とても温和な顔をしている。
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歴史を感じさせるもの、朽ちかけているものたち。
じっと耳を澄ませ、見つめていると、こちらになにか、語りかけてくるかのよう。
その凛とした佇まいを前に、時の経つのを忘れる。
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あちらこちら、寄り道している内に、いつの間にか、辺りは薄暗くなっている。
“そろそろ家路に就くかな”。
そう呟きながら、ふと頭上を見上げると、紺碧色の空から、月が顔を覗かせている。
その神々しさに、身体が震え、そうしてこの地球が、無性に愛おしく感じられる。
“来年もまた、この場所へ戻ってこよう”。その瞬間、そう、こころの中で誓う。