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伏線の張り方

工藤浩美

工藤浩美の東へ西へ

「英語が会社の公用語になる日」をたくさんの方に読んでいただき、感謝しています。

私はずっと前にシナリオの勉強をして、長文の書き方を学んだことがあり、今回のビジネス小説でもその技法を使いました。

小道具を使って人物関係を語るのも一つの手法ですし、伏線を張るの、物語を進めるのにいいスパイスになります。

この本はあくまでもビジネス小説なので、物語は心情の描写より「台詞」で進めていかなくてはなりませんでした。

ただ伏線を張ることによって、よりその人の置かれた立場や台詞が生きることがあります。推理小説ではないので、そんなに伏線は張っていないのですが、例えばこのシーンです。

最初に主人公の杏が遅刻しそうになって電車に駆け込むシーンがあります。

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本文より

走り出した電車の中で杏はふと中づり広告を見上げた。それは以前通っていた英会話スクールの広告だった。杏はその広告に背を向けて、大きなため息をついた。そのため息に押されるように、電車は前へ前へと進んでいった。

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この描写で、杏がその英会話スクールが続かなかったということが分かります。そしてこれから杏は決して英語が嫌いな訳じゃないこと、興味はあるけど、長続きしないという性格も表現しています。

例えばセリフで「私は昔英会話学校に通ったけど、続かなかったのよ」と主人公に話させるより、何となくこのようにシーンで表すほうが表現できたりします。

説明セリフを使うより、シーンで見せたり、小道具を使うことによってよりリアルに表現できることはたくさんあります。そういう目で映画やドラマを観たり、本を読むのも面白いと思います。

Written by

記事を書いた人

工藤浩美

白百合女子大学国文科卒業後、総合商社勤務。
その後通訳・翻訳エージェントに2社、合計11年間勤務。通訳コーディネーターとしてこれまでに数百件の通訳現場のサポートを行なう。 2001年7月に株式会社テンナイン・コミュニケーションを設立。趣味はシナリオ執筆。

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