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通訳現場での対応

工藤浩美

工藤浩美の東へ西へ

通訳の仕事には、キャンセルや変更がつきものです。どんなにコーディネーターが事前に確認していても、実際に通訳さんが現場に行ってみると、「聞いてないよぉ〜」ということが起こります。

「マリコが行く」にもそんなエピソードがいくつか出てきますね。実際にフリーランスで通訳の仕事をやっていらっしゃる方は、ほぼすべての方がご経験していると思います。

「逐次だと聞いていたのに、ウィスパリングして欲しいと言われた」
「ただの社内打ち合わせだと聞いていたのに、プレゼンだった」
「英日だけだって言われていたから受けたのに、日英も訳して欲しいと言われた」

聞いてないよって叫びたい気持ち、本当によくわかります。でもそこで大騒ぎしても、すでに会議はあと数分でスタートしてしまうのです。

そういう場合に、「できません!」とか「聞いてません」とか言う通訳さんと、少々無理しても臨機応変に対応していただける通訳さんと二つのタイプの通訳さんがいます。

確かに聞いていないとこを、その場でやれと言われたら誰だって頭にくるし、嫌だと思います。でも結果的にクライアントの評価が高く、常にリクエストが来るのは、後者の臨機応変に対応してくれた通訳さんなのです。通訳パフォーマンスではなく、そういった対応で万が一NGがついてしまうと、本当にもったいないと思います。

聞いてないよ!という怒りの気持ちは、会議が終わってコーディネーターにいくらでもぶつけてください。テンナインではそういう通訳者の気持ちを100%受け取るようにと常日頃言っています。そしてコーディネーターからクライアントに後で今後このようなことがないようにするにはどうしたらいいか、解決策を提案いたします。

通訳の皆さんに忘れて欲しくないのは、通訳になったばかりの頃、仕事が楽しくて、楽しくて、何時間でも通訳したい時期ってあったと思うのです。お声を掛けていただく仕事だったら、通訳の経験を積める仕事だったら、どんな仕事でも引き受けたいと思っていた時期。

その気持ちを何年経っても、ベテランになっても忘れて欲しくないと思います。

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記事を書いた人

工藤浩美

白百合女子大学国文科卒業後、総合商社勤務。
その後通訳・翻訳エージェントに2社、合計11年間勤務。通訳コーディネーターとしてこれまでに数百件の通訳現場のサポートを行なう。 2001年7月に株式会社テンナイン・コミュニケーションを設立。趣味はシナリオ執筆。

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