BLOG&NEWS

原則はあくまでも原則

工藤浩美

工藤浩美の東へ西へ

通訳者が高いパフォーマンスを出すには、お客様のご理解は不可欠です。通訳者は1日中機械のように通訳をすることはできないし、一旦通訳をした内容を後で教えてくださいと聞かれても、答えることはできません。

でも「原則はあくまでも原則」であり、通訳者に求めらられているのは現場での柔軟な対応です。

先日村松増美さんの「ミスター同時通訳の私も英語を話せなかった」という本を、再読しました。

村松さんはシアトルで、総理のスピーチの逐次通訳を担当された時のこと、そのスピーチを聞き取れなかった記者から「さっきいのスピーチの大意でいいからもう一度訳して欲しい」と頼まれたそうです。

通訳者の方々はお分かりだと思いますが、一度行った通訳を、一語一句厳密に再現することはできないし、意訳するにしても、通訳者と記者の間で大切だと思う主観が違うのでそれもできません。

でも村松さんは総理来米の目的やPRを考えて、現実に即して対応されたとのことです。

「そんなことは出来ません!」とその場で断ってしまうのではなく、「原則を守りながらも、現場で柔軟に対応する」姿勢がある通訳者は、お客様からのリクエスト率も高くなります。

Written by

記事を書いた人

工藤浩美

白百合女子大学国文科卒業後、総合商社勤務。
その後通訳・翻訳エージェントに2社、合計11年間勤務。通訳コーディネーターとしてこれまでに数百件の通訳現場のサポートを行なう。 2001年7月に株式会社テンナイン・コミュニケーションを設立。趣味はシナリオ執筆。

END