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ビジネスの土地勘

工藤浩美

テンナインヒストリー ~挑戦への軌跡~

起業して毎日飛びこみ営業をしていた話を前回書きましたが、2001年の7月は記録的な猛暑でした。あまりに暑くて蜃気楼を見た瞬間を、今でもよく覚えています。お金がなかったので喫茶店にはなかなか入ることが出来ず、もちろんタクシーも使えないので、ペットボトル片手にホテルや銀行のロビーでよく涼んでいました。

最初に取れた仕事は外資系の携帯電話会社です。日本に進出するという新聞記事を読んで、その準備室に飛びこみ営業を掛けました。「営業する暇があったら、通訳候補者を紹介してください」と言われたのを覚えています。起業から2ヶ月目に一人派遣通訳者が決まりました。そのクライアントはそれから数年で大きな取引になりました。

一日中歩き回っていましたが、どんなに忙しくても12時から1時間お昼休みは欠かさず取っていました。忙しくてランチを抜くなんてことは、18年間一度もありません。毎日くたくたになって夕方5時頃オフィスに戻ってきました。その後は外資系企業のHPのお問い合わせメールに営業メールを送っていました。毎日100通ぐらい送っていたと思います。

ほとんど返事はなかったのですが、一件だけある大手外資戦略系コンサルティング会社から、「通訳の件は弊社の○○までご連絡ください」と担当者の連絡先が送られてきました。早速担当者に「御社の○○様からのご紹介でご連絡します」というメールをしました。結果やっと一件アポイントが取れました。それはコンサルティング会社と大手アパレルメーカーの数カ月に渡る大きなプロジェクトで、通訳需要がたくさんありました。

考えてみたら営業の手段は何百種類もある訳ではありません。「テレアポ」「パンフレット送付」「飛込み営業」「ビラ配り」など限られています。全部やることだってできます。私はその中で一番経費が掛からない飛込み営業を一番に選びました。ただ闇雲に飛込み営業をしても成果は上がりません。ビジネスでは土地勘が大事だと言われています。ビジネスにおける土地勘とは、「どこに通訳・翻訳需要があるのか?」知っているということです。私はそれがよく分かっていたので、短期間でクライアントを得ることが出来たのだと思います。

また「通訳・翻訳の需要」を一番知っている人は誰だろうと考えました。それは通訳者・翻訳者です。私は通訳者を誘って、一緒にランチしました。すると通訳者から「○○社が通訳者を募集していますよ」「○○社のトップが今度外国人になりますよ」という情報を教えてもらって、そこにアプローチしました。当時私が発掘したクライアントは、いまだにご依頼をいただいております。本当に感謝の気持ちでいっぱいです。

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記事を書いた人

工藤浩美

白百合女子大学国文科卒業後、総合商社勤務。
その後通訳・翻訳エージェントに2社、合計11年間勤務。通訳コーディネーターとしてこれまでに数百件の通訳現場のサポートを行なう。 2001年7月に株式会社テンナイン・コミュニケーションを設立。趣味はシナリオ執筆。

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