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カンタン法律文書講座 第五回 契約書に登場する代表的な条項とその特徴 (3)

江口佳実

カンタン法律文書講座

英米法によるカンタン法律文書講座
第五回契約書に登場する代表的な条項とその特徴 (3)

一般条項(共通して見られることの多い条項)の続きです。
今回は、「不可抗力」、「譲渡」、「修正」、そして「可分性」の条項についてです。
では、さっそく具体的に見ていきましょう。

※(1)~(4)の数字の部分をクリックしてください。説明が出ます。

Article 19. Force Majeure (1)

Neither party shall be held liable for any delay or failure in performance of any obligations it has hereunder if and to the extent such delay or failure is caused by an event which is beyond reasonable control of such party (“Force Majeure event“), including but not limited to act of God, flood, earthquake, fire, war, riots, insurrection, acts of government and any other similar occurrences. The party so affected shall immediately inform in writing the other party of such Force Majeure event stating the date it occurred, the nature of such event and anticipated period of time during which such Force Majeure conditions are expected to persist.

(1) 第19条 不可抗力

いずれかの当事者が、本契約に基づくいずれかの義務の履行における遅延または不履行を犯し、かかる遅延または不履行が、かかる当事者の合理的な支配を超える事由(「不可抗力事由」)に起因する場合、かかる当事者は、かかる遅延または不履行について責任がないものとする。かかる事由には、天変地異、地震、火災、戦争、暴動、内乱、政府の行為およびその他類似の出来事などが含まれるが、これらに限定されないものとする。そのような影響を受けた当事者は、他方当事者に対し、直ちに書面でかかる不可抗力事由を通知するものとし、かかる通知には、不可抗力事由が発生した期日、その内容、およびかかる不可抗力の状態が継続すると予測される期間を記述するものとする。

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Article 20. Assignment (2)

This Agreement or any part of it shall not be assigned or transferred by either of the parties to any third party without obtaining prior written consent of the other party which shall not be unreasonably delayed or withheld. Any such assignment or transfer without such consent shall be null and void.

(2)第20条 譲渡 

本契約またはそのいかなる一部も、いずれかの当事者によって、他方当事者の事前の書面による同意を得ることなく、第三者に譲渡または移転してはならないものとする。かかる同意は、不当に遅延または拒絶されてはならない。かかる同意を得ることなく行なわれた譲渡または移転は、無効であるものとする。

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Article 21. Amendment and Modification (3)

No amendment or modification of any provisions hereof shall be effective or binding on the parties hereto unless it is in writing and signed by duly authorized representative of the each party hereto.

(3)第21条 修正

本契約のいずれの条項に対する修正または変更も、書面化され、本契約の各当事者の正式に授権された代表者により署名されない限り、有効ではなく、本契約の当事者に対する拘束力はないものとする。

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Article 22. Severability (4)

If any of the provisions hereof shall be held to be invalid or unenforceable, the remaining provisions of this Agreement shall continue to be fully valid and enforceable. The both parties hereto then shall discuss each other in good faith and modify such provision held invalid or unenforceable so that it shall become valid and enforceable while maintaining its original intention contemplated by the parties hereto.

(4)第22条 可分性

本契約の条項のいずれかが、無効または強制不能であると判断された場合でも、本契約の残りの条項は、引き続き完全に有効かつ強制可能であるものとする。本契約の両当事者はその後、誠意をもって相互に協議を行い、無効または強制不能とされた条項を、本契約の両当事者が当初企図した意図を維持しながら、有効および強制可能なものとなるように変更するものとする。

契約書の条項にはどれも、なぜこの契約書にその条項を盛り込まなければならないかという理由があり、その背景には、英米法上の契約に対する考え方がある、といったことを今回の解説ではご紹介してみました。

英米法上の契約の考え方や特徴的な表現については、回を改めて説明したいと考えています。

一般条項は多くの契約書に共通して登場し、内容・文章の表現はどの契約書でも大きな違いがないことが多いのですが、一つ一つ、その意味や理由を知っておくと、訳出する上でも役立つことと思います。

次回は、一般条項の最後の回になります。お楽しみに!

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記事を書いた人

江口佳実

神戸大学文学部卒業後、株式会社高島屋勤務。2年の米国勤務を経験。1994年渡英、現地出版社とライター契約、取材・記事執筆・翻訳に携わる。1997 年帰国、フリーランス翻訳者としての活動を始める。現在は翻訳者として活動する傍ら、出版翻訳オーディション選定業務、翻訳チェックも手がける。

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