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通訳・翻訳者リレーブログ
投稿者:アース の記事

いかに集中力を維持するか(続き)

[2015.12.14]投稿者:アース
先回は、自宅で仕事をしていると、集中を妨げる現象(?)が実に多い、というお話をしました。

まず、言うまでもなくインターネット。翻訳業務には必須のアイテムですが、気をつけないと、ネットのぬくぬく温泉に浸かったまま、出てこられなくなります。わたしの場合、動物のおもしろ映像が特にキケンです。ネコちゃんのホケホケ映像とか。ハムスターのオバカ映像とか。

そして在宅ならではの問題もあります。郵便や宅配はもちろん、家事そのものも気を散らす原因になります。洗濯機やホームベーカリーが終了の合図をすれば対応しなきゃならないし、夕方になれば、夕飯どうするかな、とつい考えてしまいます。

会社員さんの場合は、洗濯も夕飯も当然ながら仕事終了後に対応するわけなので、在宅仕事であってもそのようにきっぱり分ければいいのですが、やはり同じ屋根の下にキッチンがあり、洗濯機があると、「せっかくだから」と、仕事と同時進行させたくなります。それゆえ、下手をすると15分に一回は立って火加減を見たりしちゃうわけです。これで集中できるわけがありません。(もちろん納期が厳しい場合は、何もかもうっちゃってひたすら仕事部屋にこもりますが)

そして、集中力を削ぐ最大の原因が「音」です。家の前を通る人(高笑い、叫び声)や犬の声。道路工事や住宅建設の音。救急車、消防車、パトカーのサイレン。エアコンの室外機や、屋外に置いてある温水器などの音も結構気になることがあります。どれも気にしなければいいと思うのですが、イライラしたり、腹が立ったりしなくても、「はやく止まないかな」と考えてしまった時点で、つまりは気を取られているということなんですよね。

訳出中は大丈夫でも、見直し中は本当にダメで、何度も同じところを読み返すハメになったりします。単に集中力が低過ぎるだけということも考えられますが(笑)。

とはいえ「継続音」は、特に不愉快な音でない限り、そのうち慣れてしまいます。しかし突発的に聞こえる音は大敵。オフィスであれば、少々雑音や突発音が聞こえても平気なはずなのに、在宅オフィスですと、なぜか気になります。「仕事中!!」という雰囲気を自分一人で醸成するしかないからでしょうか。

大嫌いな上司だろうと、やる気のない同僚だろうと、お気楽な後輩だろうと、常に誰かに見られている(可能性がある)というのは、本当にすごい強制力として働きます。一人だと、あくびしようが歌を歌おうが、いっそ寝てしまおうが、だ〜れも注意してくれませんので。

ともあれ、そういう外部の音に対抗するには、それに対抗できる音を部屋の中で鳴らすか、あるいは耳栓やヘッドホンをするしかありません。

以前、家の近くで長期にわたって工事が続いたため、たまらず高性能の耳栓を買ったことがありました。しかし耳栓はシャットアウトできる周波数が決まっていますし(高い音はカットしても、重機などの重い音はほぼスルー)、なにより耳がかゆくなります。

それから、音楽用にノイズキャンセリングヘッドホンを持っているので、それも試してみました。しかし「防音ヘッドホン」ではないので、外部からの低音はすっと軽くなるものの、まったく聞こえなくなるわけではありません。なにより長時間装着していると疲れますので、毎日朝から晩まで使うには現実的ではありません。

となると、外の音を打ち消す音を部屋の中で鳴らすしかありません。

普通の音楽でそれをやろうとすると、相当なボリュームにする必要があり、これまた現実的ではありません。それに音楽ですと、曲の切れ目がありますし、歌詞が入ることがあるし、静かな曲、うるさい曲といろいろなので、なかなか難しいのです。(翻訳で使用している言語は思考の妨げとなりますので、歌の入った曲は極力回避、です)

こうした試行錯誤の末にたどりついたのが、「波の音」と「飛行機の音」の組み合わせです。

youtubeなどで「集中力」等のワードで検索すると、波の音や滝の音などのヒーリング系のものに加えて、飛行機が上空を飛んでいる時の音や、ラジオのホワイトノイズなど、何の役に立つのか分からないような音源が大量にヒットします。しかも数分ではなく、数時間とか、長いものでは10時間などというのもあります。

わたしも最初は、飛行機の音が何の役に??と不思議でしたが、実際に聞いてみたところ、これが悪くない。

国際線では、夜の時間になると機内の明かりが強制的に消されますが、あのときの感覚がよみがえります。どうしても眠れずに、手元のライトで本を読んでいると、周りはすっかり静まり返ってしまい、聞こえてくるのはゴーーという飛行機の音だけで、妙に集中してしまう、あの感じです。

これをスピーカーで流すと、案外、周りの雑音が消えてくれるのです。工事の音や車の音、それに家の中に自分以外の家族がいても、その生活音も消してくれます。音にほとんど変化がないので、じきに流れていることを忘れます。

それから波の音。浜辺に打ち寄せるちゃぷちゃぷという静かな音ではなくて、「日本海の荒波」みたいなザバーンザバーンという音が最適です。こいつは人の声に強くて、子どものキーキー声から中高生の大声、奥様方の高笑いまで、かなりかきけしてくれます。

で、わたしのワガママも際限がありませんで、

  • どうせならすべての騒音をシャットアウトするため、波の音と飛行機の音を同時に流したい
  • 外の騒音を消せるのなら、できれば好きな音楽を聞きたい
  • 切れ目なしに最低でも3時間くらいは音が流れてほしい
などと考え始めます。そこで諦めないのが、わたしの長所といいますか短所といいますか、とにかくなんとかならんかと頭を絞るわけです。

波と飛行機の音は、元々がyoutubeですので、そこにアクセスすれば何度でも聞くことはできます。しかしそれも面倒なので、音だけをダウンロードし、さらに音楽制作用のGaragebandというソフトを使って、波の音と飛行機の音を重ね、それを切れ目なく繰り返して3時間程度としたトラックを作成して使っています。これをバックに流したうえで、自分の好きな曲を流せば、もう文句なし!!!!

と、ここまで書いてきて、「ただ集中すればいいだけの話でしょ!!」と9割くらいの方に言われているような気がしてきました(笑)。実際、これだけのことをする気力があるなら、集中力を高める努力をしなさいよ、と自分でも思いますが、ま、いいんです。好きでやってることですから。

というわけで、いまこの瞬間も、波の音と飛行機の音を重ねたトラックを流しつつ、インターネットラジオでジャズを聴きながら、これを書いています。

   ★

さて突然ですが、このブログの担当を今回で終了させていただくこととなりました。2013年8月から2年余り、この通訳・翻訳者リレーブログのなかでは特に短い期間となってしまいましたが、これまでつたない内容のブログを読んでいただき、ありがとうございました。

上のエピソードから分かるように、翻訳者としてはどうよ、という感じのわたくしアースですが、来年1月より、恐れ多くも、このハイキャリアで金融翻訳に関する講座を担当させていただくこととなりました。

来年1月からは襟を正しまして、金融翻訳についてまじめに語ろうかと思っております。金融翻訳に興味のある方だけでなく、翻訳者を目指す学習者さんにも役立つ内容にできればと考えています。現在、具体的な内容を鋭意企画中。どうかご期待ください!



いかに集中力を維持するか

[2015.11.09]投稿者:アース
在宅翻訳者に限らず、家で一人で仕事をしている人は誰でも、いかに気を散らさずに仕事に集中するか、悩んでいる人が多いと思います。わたしもそうです。

もちろん、納期が迫っていたり、内容に興味があったりする場合は、自然と周りをシャットアウトできます。この点、人間の特技ですよね。仕事開始と同時に音楽を聞き始め、信じられないほど集中して、ふと気がつくと、アルバムを1枚聞き終わっていた、いや、アルバムを1枚まるまる無視していた、なんてこともあります。

でも、当然ながらいつもそうではありません。納期に余裕があってダラダラしてしまうケースはあまりありませんけれども、興味が持てないとか、いつもと代わり映えしない内容の原文に集中することは、至難の業・・とまでは言いませんが、ときに気が散りがちになることも確か。あるいは、逆に難し過ぎて意味不明の原文の場合、「は〜」とため息をつきつつ外に目をそらし、うっかりトンビでも飛んでいようものなら、しばらく眺めてしまったり。

言うまでもなく、インターネットも諸刃の剣。これがなければ、もはや翻訳の仕事は不可能ですけれども、SNS等をやっていなくとも、興味深いサイトは多いし、キーボードの上でほんのちょっと手をひらひらさせるだけで、ネコちゃんのオバカな映像を見られたりしちゃうこの時代、ほんとうらめしいです。

そして音。

実はいま住んでいる家の周辺は、田んぼがたくさんあるわけでもないのに、なぜか水路が多く、晴れていても雨の日も、いつも水がさらさら流れています。見かけは完全に側溝(どぶ)なのですが、流れる水は、どしゃぶりにでもならない限り、完全な透明。家庭菜園をやっている人は、その水を野菜にやったり、そこで野菜を洗ったりしています。近くに高い山があるわけでもなく、実に不思議なので、いつか「源流を訪ねる旅」をやってみようと思っています。

そのきれいな側溝、わたしの部屋の横にちょうどカーブがあるので、いつもちゃぱちゃぱと水音がします。いまや滝の音や波の音が「癒し音」になるご時世で、わたしも様々な水の音だけが録音されたCDを持っていますが、ここに引っ越してきてから、いつでも自然の水音を聞けるようになりました(笑)。

水の音は聞いていて心地よいですし、それほど快適な音でなくとも、「連続音」は案外気になりません。地下鉄でどんな轟音が鳴っていようと、ぐうぐう寝られるのはそのせいでしょう。しかしそこで何か突発音でもすれば、はっと気がついて辺りを見回してしまうのは、生き物として当然の反応です。

そう考えてみると、周りで突発音がしても、それを無視して集中し続けるなんて、人間にしかできないことなんですね。動物なら、自分に危険が迫っているかもしれないのに、絶対に無視なんてできませんから。つまりそんな姿は本来、生物として不自然である・・すなわち仕事中に突発音がしても無視し続けるのは体に悪いと・・フムフム。

いや、言い訳を考えるためにこの文章を書いているのではないのであった。

さて、われわれ翻訳者の集中力を削ぐ音は、家の周りに氾濫しています。わたしの仕事部屋(1階)の場合ですと、すぐ横に狭い道路がありますので、そこを行き来する人の声がもっとも思考の邪魔になります。

話の内容がすべて分かってしまう場合はもちろん、分かりそ〜で分からない場合、(主に奥様方の)高笑いが頻繁に含まれる場合、親の怒鳴り声、抵抗する子どもの叫び声、小学生の調子っぱずれの歌。

わたしの仕事部屋の真ん前の十字路で、「ここ!ここゴールね!!」と言って、坂の上から絶叫しながら全速力で駆け降りてくる子どもたち。いや、あっちをゴールにした方がいいと思うよ。

これらがずーーっと同じ音量で流れていれば、逆に、まだましだと思うんです。慣れてしまうでしょうし、いずれ無視できるかも。いやできないか。

ともかく、窓のすぐ外で突然大きな音や声がしようものなら、頭の中の訳文タワーにぴきぴきっと亀裂。動いてはダメだと分かっていながら、つい外を見てしまいます。そうなったら、もういけません。まるでトランプで作ったタワーのようにもろい訳文タワーは、あっさり崩壊。・・・という微妙な作業をいつもいつもしているわけではありませんが、思考の妨げになることは確か。

特に一階というロケーションも良くないのでしょうが、とりあえず引っ越したばかりだし、当面はこの部屋で働くしかありません。

じゃあどうするか。という点について書こうと思ったのですが、ここまででも十分長くなってしまいましたので、来月にしたいと思いま〜す。



海外ドラマの吹替えは素晴らしい

[2015.10.12]投稿者:アース
突然ですが、海外ドラマの吹替えが大好きです。いえ、海外ドラマの内容そのものももちろん好きなんですが、日本の吹替え業界ってすごい!!!といつも感心しています。いったいどれほど多くの人々が関わり、どれほどの時間をかけて(あるいは少人数で、時間をかけないで?)、あの素晴らしい吹替え版を制作しているのかと考えると、翻訳を生業としている者として、気が遠くなります。

わたしは字幕翻訳や吹替え翻訳に関する知識は一切ありませんが、他の分野と同じように、翻訳作業そのものだけでなく、日本の放送で受け入れられるように手を加えたり、若干の演出を加えたりする作業も多数あるのだろうと想像できます。

それから声優さんたち。前に我が家の近所に住んでいたアニメ・ゲームオタクのアメリカ人のおにいさんから聞いた話では、アメリカのアニメ声優は「ダメダメ」なので、わけわからなくても日本語で聞くのが「真のオタク」なのだそうです。それぐらい素晴らしいってことなのでしょう。

※ぜんぜん関係ありませんが、そのおにーさん(推定20代後半)、左腕全体に「スーパーマリオ」の入れ墨をしていました。ボディペインティングとかじゃありません。本物の入れ墨で、マリオとクッパ、キノピオが忠実に再現(?)されていました。特にキノピオがなんとも愛らしい。年取ったらどうするんだろう・・・

さて、吹替え。

声優さんもすごいですけれど、やはり翻訳者の立場としては、これ以外ありえないでしょ!!!と言いたくなるような日本語表現にいつも感心しています。翻訳者さんの考える訳文そのものが素晴らしいこともあるでしょうし、最後に全体に目配りをする立場の人(誰だか分かりませんが)が、えいっと考え出すこともあるのではと想像しています。

クライアントさんが手を入れた完成版を見て、わたしも翻訳者として最初からその表現を考えつければ、と忸怩たる思いをすることもあるのですが、やはり最後に全体に目を通す立場の人だからこそ考えつける言葉もあるので、ある程度は仕方ないのだろうと思います。(実務翻訳の場合、クライアントの担当者さんはその業界にどっぷり浸かっているわけで、だからこそ考えつける部分もあるのでしょう。翻訳者はできる限りそれに近づくよう努力するわけですが...先は長いです。嘆息)

特にわたしの場合は、いつも堅い文章ばかり訳しているので、会話調の文章を訳すときの自由度の高さはうらやましいと感じます。しかしこれは逆に言えば、選択肢があり過ぎて困る、ということでもあるのでしょうね。

もうひとつ、海外ドラマを見ていておもしろいのは、時代の変遷が感じられること。

例えばわたしは「刑事コロンボ」が大好きなのですが、第1作目の「殺人処方箋」は1968年制作と、はや半世紀前の作品です。1960年代といいますと、日本では「キイハンター」とか「白い巨塔(当然ですが古い方)」の時代。

ですから言葉自体、古くて当然なのですが、日本の視聴者には理解不能、または受け入れられないと考えたか、はたまたどうしても訳せなかったかで、今だったらまずいでしょ、と思えるような表現が出てきます。

有名なところでは「ほとけさん」。海外小説などでも、殺害された被害者のことを「ほとけさん」と訳すことがあるようですが、現代の海外ドラマでは、さすがに聞きません。例えばFBIの行動分析課の活躍を描いた「クリミナルマインド」で、チームメンバーが「ほとけさん」と言ったら、たぶん視聴者(というかわたし)はテレビの前でひっくり返ることと思います。しかしコロンボの場合、初代声優の故・小池朝男さんのうまさか、そもそも時代を感じさせる映像のせいか、いま聞いても何の違和感もありませんから、不思議なものです。

他には例えば、「黒のエチュード」という作品で、容疑者の大邸宅を訪ねたコロンボが、
「見事な居間だ! 30畳はありますねえ」
と言うんです。恐らく70年代に初めて吹替え版が放送されたときには、誰も違和感を覚えなかったでしょうし、今だって、「畳」は日本人にとって感覚的に分かりやすい単位ではあります。しかし例えば「ミッション:インポッシブル」の最新作で、トム・クルーズが「30畳」なんて言ったら、それこそ視聴者はひっくり返ることでしょう。(日本好きのトム・クルーズならあり得る!?)

「美食の報酬」という作品では、容疑者の友人がコロンボを紹介されて、
「刑事と言われると、警視庁の方ですか?」
と聞きます。アメリカに警視庁、ないし(笑)。でも当時は、そう説明するのが分かりやすい、と考えたのかもしれません。

いま手元に英語版がないので、実際になんと言っているのか分からないのが残念ですが、いつか絶対確認してみたいと思っています。

もう一つありました。「愛情の計算」では、被害者の妻にコロンボが
「ご主人はとてもその、あー、組織的な方でしたね。研究室はきちんと整頓されてるし」
と言うんです。組織的??って思いますよね。

これまた英語が手元にないので分かりませんが、おそらくはsystematicと言っているのではないかと思います。(ピーター・フォークの口元からは読み取れませんでした)

文脈からいって「几帳面」で良さそうですけれども、辞書に載っているsystematicの第一義は「組織的」ですから、これにひきずられてしまったのでしょうか。systematic自体、それほど新しい言葉ではないようですので、当時のスタッフさんたちがニュアンスをよく分かっていなかったとは考えにくく、なぜ他の表現にしなかったのか、経緯を聞いてみたいものです。

なお、コロンボの階級はLieutenantで、辞書には通常「警部補」とあるのに、日本では「コロンボ警部」で定着していることは、知る人ぞ知る話です。ま、"Lieutenant! Lieutenant!"と繰り返し呼びかけている場面で、「警部補!警部補!」と言うのもしまりがありませんから、「警部」にしてしまって、たぶん正解だったのでしょう。そもそもアメリカの階級を日本に当てはめることに無理がありますし。

それにしても、大胆といえば大胆。このくらいの自由度が金融翻訳にもあったらなあ、とつくづく思います。

「いろんな国の中央銀行が、お金をじゃぶじゃぶに出したもんだから、企業は借金しまくるし、投資家はもうみんなウハウハで、株式市場とか社債市場とか、そりゃもう上げっぱなしよ」

とか。わりと分かりやすいと思うんですけど、ダメ?




人が人として動き出した

[2015.09.13]投稿者:アース
石川県の中でも最も田舎と言える能登町(輪島市のお隣)というところから、県庁所在地である金沢市に引っ越してから、はや5ヵ月が過ぎました。一応、人口200万人を超える某都市で生まれ育ち、しばらくは東京で暮らしたこともあるわたしですが、今回は久方ぶりの都会生活ということで、若干の不安も感じていました。年に数回は東京で何日か過ごしていたものの、旅行者と居住者ではまったく違います。それは、東京から能登に引っ越した際に、嫌というほど感じたことでした。

最初に東京に引っ越したときは、地下鉄のある程度の都会から東京への移住ということで、「おお、東京だなあ」「人が多いなあ」「空気悪いなあ」「電車が複雑だなあ」と感じる程度。柔軟な20代という要素も大きかったのでしょう。

しかし、東京から能登に移ったときのショックたるや、まさに筆舌に尽くしがたいものがありました。どっちがいいとか悪いとかではなく、「これが同じ日本なの?」という、アゴが外れそうな驚き。まさに文化衝撃。「おお、田舎だなあ」「人が少ないどころか、いないなあ」「空気いいなあ」「電車がないなあ」では済みませんでした。

でも、何年か暮らすうちに、様々な理由から「こちらが本来の日本なのだろう」と思うようになりました。・・・とまあ、まじめな話はまたいつかするとして、きょうは都会へのUターンのお話を少し。

住んで5ヵ月ともなればすっかり慣れてしまいますので、いまや最初の感動もなくなってしまいましたが、鮮明に覚えていることがひとつふたつ。

まだゴミステーションの場所もちょっと不安に感じていたころの話です。自治体によって分別方法もいろいろだなぁ〜覚えるのめんどくさいなぁ〜種類によって捨てに行く場所が違うのかぁ〜とぶつぶつ言いながらゴミステーションに向かっていたとき、ふと気がつくと、わたしの前後左右を、それはそれは大勢の中学生が歩いているではありませんか。

ななななんだ、きょうは何かのイベントでもあるのか??と思った次の瞬間、はっと気がつきました。これはただの通学風景なのだと。

能登町では、半径約10km圏内の地域に住む中学生が1つの中学校に通っていますから、3人以上の中学生が一度に見られるのは、学校のごく近い範囲だけ。そもそも歩きで通う中学生なんかほぼいない。自転車の子が少しと、あと大多数は、町の仕立てた通学用バスを利用するか、親に送ってもらっています。小学生も同じ。そして大学生という生き物はいません。能登町はおろか、いまや能登半島に大学は一つもないからです。

そんな風景のなかで長年暮らした後に、イベントでもないのに何十人もの中学生を一度に見たのですから、それはもう珍しくて。女子生徒の真っ白な靴下とスニーカーが、それはそれは目にまぶしくて。怪しいストーカーさながら、まじまじと観察してしまいました。

その後もしばらく、ただ学校の回りをランニングする中学生が珍しかったり、近くの保育園から聞こえる歌声の大きさにびっくりしたり(何十人もいるので)。窓の外をいろんな人が行き来するのが見えるのが珍しかったり、一時は完全にお上りさん状態でした。

あの感覚が強烈なうちに詳しく書き残しておけば良かったと、いま強く後悔しているのですが、これまでの周囲の状況と異なり、大勢の多様な人々が「普通の生活」をしているのを目にして、逆に「非日常感」「非現実感」を感じた、とでも言ったらいいでしょうか。

能登で暮らしていたあいだ、東京に行っても、「当機は羽田空港に着陸いたしました」とのアナウンスを聞き、「ウム、東京だ」と気持ちを切り替えて飛行機を降りれば、なんなく都会の雰囲気になじむことができました。

ですから、久方ぶりの都会生活も、基本的に問題ないだろう、と思っていたのです。いや、問題はなかったのですが、予想していたよりもずっと鮮烈な印象を受けたことが、自分でも驚きでした。旅行者と居住者では、視点がまるで異なるからでしょう。

東京にいる時、旅行者のわたしにとって、多くの人は人でありながら人でなく、ただ自分の周りを流れる水のようなもの。でもいまの自宅の周りでは、すべての人がきちんと人に見えてきます。そして当然ながら、それぞれがそれぞれの生活を持っています。

近所のおばさんはせっせと野菜を作り、男子中学生はアホな替え歌を歌いながら道一杯に広がって下校し、近くの中華料理店は量が多くておいしいけど、店員のおねえさんはひたすら愛想が悪く、そして古紙回収車のおじさんの声は相変わらずやかましい。

ほんのしばらくの間でしたが、こうしたことがいちいち新鮮で、感動的ですらありました。

もうひとつおもしろかったのは、これもほんの少しの間でしたが、そこはかとない孤独感や、取り残され感を感じる瞬間があったこと。わたし自身はもともと、一人で長時間過ごしてもまったく問題のないタイプです(だから翻訳業などやっていられます)。能登でも特に濃いご近所付き合いをしていたわけではないので、いわゆる都会の冷たさに悲しい思いをした...というわけではありませんし、そもそも地縁血縁のなかった能登から、地縁血縁のない金沢に引っ越したわけですから、条件は同じはずなのですが...。

あえていえば、自分が都会を離れていたあいだ、こんなにたくさんの人々が(当然ですが)自分とは関係のないところで、どんどん前に進んでいた、しかし自分はそれにまったく関わっていなかった......それが取り残された感じにつながった、ということでしょうか。これはいまだによくわかりません。

人付き合いと言えば、近所同士の距離の取り方は特に新鮮に感じました。いまの家はわりと郊外にあるので、近所付き合いもそこそこあるようなのですが、会話をしていると、「この線から先、あなたの世界には踏み込みませんよ」と言っている線が目に見えるようで、興味深かったです。これがいいか悪いかは別として、人によってはそれが淋しくも感じられるのでしょう。ともあれ、田舎にいたあいだ、ずっと「ご近所フィールドワーク」をテーマとしてきたわたしには、大変興味深い体験でした。

※ご近所フィールドワーク:病院の待合室や、スーパーのレジの列などでしゃべりまくるじーちゃんばーちゃんの話の内容を(難解な方言に苦しみながらも)聞き取り、人類学的・民俗学的・社会学的に分析すること。

しかしあっという間に、こうした感慨や感動は消えてしまいました。ザンネン。

また1年、2年暮らしていけば、別の感覚が出てくるかもしれません。今度こそ、リアルタイムで詳しく書き残しておこうと思います。

earth89.JPGじわじわ人気上昇中(らしい)石川県公式キャラクター「ひゃくまんさん」。あまりのキモさに当初、県議会で批判続出だったらしいのですが、奈良県の「せんとくん」の例もあり、からくも生き残りました。もともとは北陸新幹線開業のPRマスコットだったのに、着ぐるみは幅が広すぎて改札が通れないわ、新幹線にも乗れないわで、話題に事欠かないひゃくまんさんです。下の写真はひゃくまんさんの後ろ姿。県名を堂々と背負ってしまう節操のなさ、もとい、勇気には脱帽。

earth90.JPG



国際宇宙ステーションはしょっちゅう見える

[2015.08.11]投稿者:アース
日本人宇宙飛行士の油井さんが7月23日から国際宇宙ステーション(International Space Station)に滞在しています。7月末には、「7月31日〜8月3日に油井宇宙飛行士が乗っている国際宇宙ステーションが見える!」等の報道がありました。他の日本人宇宙飛行士が滞在したときも、その手の報道がありましたが、このISS、日本人が乗っていなくても(当たり前ですが)見えるときは見えるんです。

ただ、
・みんなが見やすい夕方〜宵のうち
・ばっちり日本の上空を飛ぶ
さらに
・晴れている
という条件も必要ですので、実際、(楽に)観察できる場面は若干減ります。そして
・日本人が乗っている
という条件が加わって初めて、日本でのニュースバリューが出るということなのでしょうね。

わたしの場合は、オットのあきらくんが天文関係者で、観察可能な日程と時間を教えてくれるため、これまで10回以上は見ているかもしれません。

一度などは、すでに退役したスペースシャトルがISSにドッキングする寸前、ISSを追いかけて飛んでいる(というか浮かんでいる?)ところを見たこともあります。光の点が2つ並んで飛んでいて、意味もなくわくわくしました。

たいへんに難しいですが、ISSを望遠鏡で追いかけることができれば、「星ではない、カクカクした形のもの」であることが分かります。(スペースシャトルも、低いところを飛んでいるときは、双眼鏡で見ればなんとか形が分かりました。ぜんぜん関係ありませんが、イースター島に行ったとき、小さな島なのに滑走路だけはやけに立派で、なんで?と思ったら、スペースシャトルの緊急時の着陸場所に指定されていたそうです。幸い、使ったことはないようですが)

earth88.jpgオットのあきらくん撮影による全天写真です。白い線がISSの光跡。露出時間7分だそうですので、それだけかけて全天を横切ったということです(左下の白く明るいのは、残念ながら駐車場のあかりですが、ISS以外の空の点はすべて星です)。

つい先日も、とある花火大会に行ったとき、開始を待ちつつ一番星など探していましたら、つーっと空の真ん中を走る光が。

誰かが「UFO!!」とか言い出したら、自称・とんでも科学撲滅委員会の会員として「ちがいますあれは国際宇宙ステーションです!!!」と叫ぼうかと身構えましたが、だれも気がつかないままにお空の彼方に消えていき、わたしも逆の意味で怪しい人にならずにすみました。(宇宙人さんが地球に来ている確率はゼロに近いとわたしが考える理由については、2014年6月9日付のアースのブログ「宇宙人はいるけどいない話」をご覧ください)

ISSは飛行機と違い、巨大なソーラーパネルが太陽の光を反射しているのが見えるだけなので、点滅はしません。なので、金星のような非常に明るい星が動いているようにも見えます(あるいは未確認飛行物体にも?)。

いつも、音がする・・・ような気がしてしまうのですが、むろん、上空400kmのほぼ真空の空間を飛んでいるわけですから、音がするはずはありません。ただすーーーっと飛んでいきます。

そして、速いです。感覚的には飛行機と同じくらいのスピードですが、400km彼方の物体と、たかだか1万メートル(10km)先の物体が同じように見えることを考えても、ISSがどれほどのスピードで飛んでいるか、よく分かります。地球を1周するのに、約90分。1日でだいたい16周するそうです。

ISSが音もなく上空を通過していくのを見るたび、あんなものを作って飛ばしちゃうなんて、人間てすごいなあ、と思います。それを感じるだけでも、見る価値はある気がします。

やや違和感を覚えるのは、日本が関係しているときだけ宇宙開発が大々的に話題になること。つい最近では、欧州宇宙機関(ESA)が10年前に打ち上げた探査機「ロゼッタ」が、チュリュモフ・ゲラシメンコ彗星(Churyumov-Gerasimenko)に近づき、着陸機フィラエを投下して、彗星上に着陸させました。これって、日本が小惑星探査機「はやぶさ」で成し遂げたことと同じくらい、すんごいことだと思うのですが、日本ではうーん、いまいち話題になっていませんでした。先日、冥王星のフライバイ(接近・通過)を成功させた米国の無人探査機ニューホライズンズのことは、少しは話題になったでしょうか。

当然といえば当然なのですが、地球上での「国家」というくくりが、そのまま宇宙開発に反映されてしまうことに、いつも若干の違和感を覚えます。

少し極端な例ですけれども、米国では、月の「土地」を売る企業があるそうです。1967年の宇宙条約では、国家が月の土地を保有することを禁じているが、個人の保有は禁止されていないから、だそうです。

しかし、人類にとって宇宙進出は、何万年も前にアフリカを出発して以来最大の「節目」であり、正真正銘の新世界なのだから、新しい考え方を採り入れてはどうかなあ、と思います。原始共産制に戻れとかそういうことではなくて、地球の歴史すなわち領土の奪い合いの歴史をそのまま宇宙に持ち込まず、何か宇宙時代にふさわしい体制を作ってはどうか、ということです。

と、話が大風呂敷になってしまいました。

ともかく、飛行機と違うものが見えて、単純におもしろいですから、みなさんも機会があればご覧になってはいかがでしょうか。

上記の写真じゃよく分からん!という方は、こちらで早回しのタイムラプス動画をご覧ください(わたしが個人的にyoutubeにアップロードした映像です。やや暗いですが、右下から左上にすっと飛んでいきます。左上から右下に飛んでいるのは飛行機です)。

もう一つ、ISSが太陽の前を通過したときの動画はこちら。これは一瞬ですが、よ〜く見るとISSの形がわかります(声で36秒あたり)。


宇宙航空研究開発機構(JAXA)のページで、日本国内でISSが見やすい時間を公開しています(「きぼう」は日本の実験棟の名前です)。





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プロフィール

すーじー

すーじー
1998年春、研究留学する夫に同行して渡米。大の苦手だった英語をイチから学びなおすことに。現在はシカゴ在住のフリーランス英日翻訳者として、マーケティングから金融・経済まで幅広い分野のビジネス案件にたずさわる。最近、興味があるのは、DIYと健康になること。[2016年1月start!]

いぬ

いぬ
幼少期より日本で過ごす。大学留年、通訳学校進級失敗の後、イギリス逃亡。彼の地で仕事と伴侶を得て帰国。現在、放送通訳者兼映像翻訳者兼大学講師として稼動中。いろんな意味で規格外の2児の父。[2008.4.1 start!]

アース

アース
田舎の翻訳者。外国留学・在留経験ナシ。都会生まれの都会育ちだが、現在はド田舎暮らしで、ネットのありがたさにすがって生きる日々。何でも楽しめる性格で、特に生き物と地球と宇宙が大好き。でも翻訳分野はなぜか金融・ビジネス(英語・西語)。宇宙旅行の資金を貯めるため、仕事の効率化(と単価アップ?!)を模索中。[2015年12月終了]

ぺこたん

ぺこたん
高校までをカナダと南米で過ごす。現在は、言葉を使いながら音楽や芸術家の魅力を世に広める作業に従事。好物:旅、瞑想、東野圭吾、Jデップ、メインクーン、チェリー・パイ+バニラ・アイス。[2007.6.1 start!]

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さるるん@ロシア
米系銀行勤務後、米国留学中にロシア人の夫と結婚。一児の母。我が子には日露バイリンガルになってほしいというのが夫婦の願い。そのために日本とロシアを数年おきに行き来することに。現在、ロシア在住、金融・ビジネス分野を中心としたフリーランス翻訳者(英語)。[2013年7月終了]

トナカイ

トナカイ
フィンランド・ヘルシンキ在住の多言語通訳・翻訳者。日本で金融機関に勤務の後、ヨーロッパへ。留学中に大学講師を務め、フィンランド移住後は芸術団体インターンなどを経て現在にいたる。2児の母。[2010年10月終了]

昼顔

昼顔
外資系金融、在ジュネーブ日本政府代表部での勤務を経て、外務省職員として採用。帰国後は民間企業にてインハウス通訳者としてキャリアを積み、現在は日英仏フリーランス通訳者として活躍中。昨年秋からはNYに拠点を移す。趣味は数年前から再び始めたバレエと映画鑑賞と美味しいモノの食べ歩き。[2010年3月終了]

フレッヒ

フレッヒ
高校時代をドイツで過ごし、日本の大学を卒業後、再び渡独。ドイツでの日本企業勤務を経て10年前よりフリーランスドイツ語通訳者として活躍。車関係全般・ジュエリー・スポーツ関係・整形外科分野を得意とする。普段はワイン・焼酎をこよなく愛し、庭で取れたハーブやジャガイモで主人や友人達とBBQしながら休日を過ごすのが大好き。そして大の八重山諸島フリーク。[2009年2月終了]

パンの笛

パンの笛
幼少時に英国に滞在。数年の会社勤めを経て、出産後の仕事復帰を機に翻訳を本格的に学習。現在はフリーランスの在宅翻訳者。お酒好きで人好き、おしゃべり好きの一児の母。[2008年4月終了]

かの

かの
幼少期を海外で過ごす。大学時代から通訳学校へ通い始め、海外留学を経て、フリーランス通訳デビュー。現在は放送通訳をメインに会議通訳・翻訳者として幅広い分野で活躍中。片付け大好きな2児の母。[2008年3月終了]

まめの木

まめの木
ドイツ留学後、紆余曲折を経て通翻訳者に。仕事はエンターテインメント・芸術分野から自動車・機械系までと幅広い。色々なものになりたかった、という幼少期の夢を通訳者という仕事を通じてひそかに果たしている。取柄は元気と笑顔。[2007年11月終了]

the apple of my eye

the apple of my eye
日本・米国にて商社勤務後、英国滞在中に翻訳者としての活動を開始。現在は、在宅翻訳者として多忙な日々を送る傍ら、出版翻訳コンテスト選定業務も手がけている。子育てにも奮闘中![2007年5月終了]

仙人

仙人
大学在学中に通訳者としての活動を開始。卒業後は、外資系消費財メーカーのマーケティング分野でキャリアアップ。その後、外資系企業のトップまでキャリアを極めた後、現在は、フリーランス翻訳者として活躍中。趣味は、「筋肉を大きくすることと読書」[2007年4月終了]

ガットパルド(gattopardo)

ガットパルド(gattopardo)
伊・仏・英語通翻訳、ナレーション、講師など、幅広い分野において活動中のパワフルウーマン。著書も多数。毎年バカンスはヨーロッパで![2006年8月終了]

Hubbub from the Hub

Hubbub from the Hub
幼い頃から英語に触れ、大学在学中よりフリーランス会議通訳者として活躍、現在は米国大学院に籍を置き、研究生活と通訳の二束のわらじをはいている。[2006年8月終了]

雛


大学在学中に通訳デビュー。外資系企業勤務を経て、フリーランス通訳者に。会議はもちろん、音楽、舞台、映画などの分野でもひっぱりだこ。クライアントからの指名率も高い。[2005.11月末終了]

とと

とと
大学卒業後、数年のサラリーマン生活を経て、フリーランス翻訳者に。技術系から出版物と、幅広い分野で高い評価を得ている。趣味は音楽。ただいま子育て奮闘中。[2005.11月末終了]

背番号8

背番号8
イギリスに長期留学後、インハウス通訳者として数社に勤務。現在は、フリーランス通翻訳者として活躍中。若手通訳有望株の一人![2005.11月末終了]