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ビジネス翻訳・通訳で役立つ表現を学ぼう!

ビジネス・経済・金融などの分野の翻訳や通訳でよく出てくる表現をイギリスのメディアから取り上げてお届けします。

第108回 Apple、新しいiPhoneを発表

皆さんにとって9月12日は、何か意味がある日だったでしょうか? 私を含む、Appleファンにとっては待ち遠しい新モデル発表の日でした。その2日前に情報漏洩 (leak) がニュースになっていましたが、そのような情報はあまり読みたくもありません。発表会では、初代モデルの発売から10周年を迎えたということで、既存モデルの後継機iPhone 8に加えて、iPhone X(「テン」と発音)という最高機種が紹介されました。

ということで、今回はiPhone/スマホ用語を取り上げます。

1.ロック解除、指紋、顔認証

新モデルの特徴の一つは、ロック解除をする(to unlock)をする際、指紋(finger print)ではなく顔認証(facial recognision)の技術が使われるということです。指紋認証センサーがTouchIDと呼ばれていたのに対し、顔認証センサーはFaceIDと呼ばれるようです。

2.有機ELパネル

もう一つの特徴は有機ELディスプレイ(OLED [organic light-emitting diode] display)を搭載すること。そのメリットは、鮮やかな色彩が表現できる、黒色がきれいになる、省エネ、省スペース、バックライト不要など。

3.ホームボタン

またホームボタン(a home button)がなくなり、下から上に指を動かす操作(スワイプアップ/swipe up)によってホーム画面に戻ります。

4.ケーブルなしで充電

スマホ時代になってから、電池寿命(battery life)や充電時間(charging time)などがよく話題になりましたが、今回はケーブルなしのワイヤレス充電(wireless charging)が可能になったとのこと。charge padと呼ばれる充電器の上に置くだけで充電できるようになるそうです。

5.動く絵文字

少し変わった新しい機能としてはAnimojiがあります。これはAnimated emoji(動く絵文字)を合わせた造語で、自分の表情を動物などの絵文字で再現できるそうです。

実は、私は自分の感情にぴったりな絵文字を選ぶのに時間がかかりすぎるように思っていたので、上記5つの新機能の中で一番楽しみなのはAnimojiです。本コラムにもAnimojiが表示できるようになるといいのですが......。

2017年9月19日

第107回 間違いやすい表現 「~後に」

皆さん、こんにちは。イギリスでは9月中旬というと日照時間がどんどん短くなり、涼しいというより寒くなる時期で、暖房を入れる日も近そうです。

ところで会議通訳の現場では、相当英語がおできになる日本人にもよく出会います。グローバル舞台の第一線で活躍している日本人を見かけると誇らしく感じます。
ただ、日本語でも「て・に・を・は」を間違えると意味が変わるように、ほんのちょっとした文法ミス・表現ミスで流暢な英語も通じない(or 通じにくい)場合もあります。その中で、先日の通訳現場で気が付いた表現を取り上げます。

【基本編】

「~後に」というとき、例えば「3日後に会いましょう」というとき、あなたなら英語でどう言いますか?

I will see you 3 days later.

が思いついたとすれば、それはよくある間違いです!

「後に」というとlater/afterだけが思い浮かび「in」は思いつかない人が意外に多いです。「後で会う」のように具体的な時間/期間がない場合はSee you laterでいいのですが、未来のことについて具体的に~分・時間・日・週・月・年などを加わえて、「(今から)~後に」という場合、in - s' (time) となります。

つまり「3日後に会いましょう」だと
→ I will see you in three days' time. (timeは省略可)

ちなみに「2週間後に会った」と過去の話をする場合はlaterを使います。
→ I saw him two weeks later.

【応用編】

では、「2週間後に会いましょう」はどうでしょう?

上記ルールを使うと
→ I will see you in two weeks' time.

ですね。それは間違いじゃないのですが、イギリス人ネイティブはこう言います。
→ I will see you in a fortnight.

a fortnightで「2週間」という意味なので、隔週で会う人だとお別れのあいさつにSee you in a fortnight! と言います。
ビジネスなどで「隔週で水曜日に会議をする/会合を開く」だと
→ We meet fortnightly on Wednesdays.

基本編の誤りはかなり頻繁に聞きますが、人の誤りはさておき、私自身も間違って苦労したことから学びました。学生時代、アメリカ留学中、ルームメイトに「じゃあ、2時間後に会いましょう」とかなんか言おうとしたときにlaterやafterだと全然通じなくて、最終的には "It's 3 o'clock now. I will see you at 5" のように言い直してやっと通じ、ルームメイトが "In two hours' time!" と言い直してくれ、二人とも安堵で大笑いした記憶があります。おかげで、未来の「~後に」= in -s' timeは頭に焼き付きました。

応用編は、イギリスに来てから近所のママ友に言われて学んだ表現です。それまでfortnight=2 weeksというのは本で学んだような記憶はあったけれども実際に使われているのを初めて聞いたときは「fortnight、あれ、なんだったっけ? 再来週会うんだから、あぁ2週間かー」なんて現実に当てはめて理解した覚えがあります。

外国人が日本を学ぶときに「て・に・を・は」で苦労するようですが(結婚22年目の夫もまだ苦戦中)、日本人にとっては名詞の単数・複数形、冠詞、前置詞などはなかなか完璧にマスターするのが難しいですね。在英20周年の私もまだまだ学習中です。学びは永遠に続くけれども、一つ一つの知識のレンガを積み重ねていくことで大きな建物が出来上がっていくイメージを持ってコツコツ学習を続けています。

今回のトピックがお読みになっている方の知識のレンガの一つになれば幸いです。


2017年9月11日


第106回 「旧姓」を英語で言うと?

皆さん、こんにちは。早くも9月ですね。夏期休暇が終わり、仕事や勉学に本格的に取り組む季節となりました。私の方は、先週末のモザンビーク出張を終え平常の生活に戻ったところです。遠方への出張(しかも途上国)は何かと大変ですが、まったく異なる文化を体験できるのは非常に興味深く (absolutely fascinating!)、これも会議通訳という仕事の魅力の一つだと改めて実感したところです。

さて、日本では先週「国家公務員の旧姓使用を対外文書にも容認」というニュースが流れていましたが、その英訳で某メディアが「旧姓」をpre-marriage family nameと訳していたのに驚きました。皆さんなら、どう訳しますか?

在英20年(早いなあ!)で、最も馴染みのある表現はmaiden nameです。イギリスに引っ越したばかりのころ、銀行口座を開設するにあたり登録に必要な情報の一つが "your mother's maiden name"でした。「自分の母親の旧姓」というのは、自分自身は(たいてい?!)忘れない情報だけれども、ふつう人に話すこともなく、本人確認の情報としてよく使われるということでした。言われてみれば確かに「自分の旧姓を言うことはあっても母親の旧姓を言う機会ってないな」と納得した記憶があります。

ただし、このmaidenという言葉は「未婚の女性/処女」という意味もあり、女性にしか使えないことや、古臭く聞こえることから「旧姓」の意味でmaiden nameを使うことに反対する人もいるようです。そこで政治的な正しい(politically correct)表現を好む場合は、previous nameとか、birth name, unmarried nameなどが使われます。

pre-marriage family nameという表現は、通訳でPlan Bとして使う分には問題ない(十分通じる)とは思いますが、やや冗長(a bit too wordy)という気がします。「旧姓」が2シラブル(音節)であるのに対してpre-marriage family nameは7シラブルです。通訳では簡潔な表現が好まれます。

「姓」だけを言う場合も、family nameやlast nameというよりsurnameというと簡潔です。
ちなみに「(下の)名前」の場合は、first nameの他、given nameもよく使われます。イギリスで驚いたのはChristian nameとも言われることです。「(下の)名前は何か?」と聞く場合、What's your Christian name? がときどき使われます。けれども、名字が先で、キリスト教徒でない日本人の名前の場合はgiven nameが最も適切かと思います。

以上、今回は「旧姓」に関連する英語表現について取り上げました。お役に立てば幸いです。


第105回 Figures of speech その4 ants in your pants

皆さん、こんにちは。早くも8月下旬、お盆も終わり平常の生活に戻られたころでしょうか。
さて、今回は英エコノミスト誌2017年8月17日号で見かけたFigures of speechを紹介します。(Figures of speechについては第98回参照

今回紹介する記事の大見出しはChina's digital-payments giant keeps bank chiefs up at nightですが、小見出しにはAnts in your pantsと書かれ、挿絵には大きな赤いアリと小さなダークスーツの銀行マンが中国の硬貨を押し合いしている姿が描かれています。これだけの情報から、この記事の内容をどれくらい想像できるでしょうか?

170821-表現.jpg

この場合、「have ants in the/one's pants:(不安・心配・緊張などで)そわそわして落ち着かない」という慣用表現を知っていることが決め手となります。pantsは米国では「ズボン」ですが、英国では「下着のパンツ」。どっちにしてもpantsにアリがいたら落ち着かないですよね。この表現にピンと来ると、大見出しの「主語 keep 人 up: "主語" のせいで "人"が眠れない」とも関連していることが分かることでしょう。

同記事では中国のフィンテック大手の目覚ましい成長ぶりが取り上げられていますが、この記事の主人公はAnt (Financial)という名前の中国の企業なのです。そこでhave ants in your pantsという慣用句とかけて小見出しが出ているというわけですね。翻訳者泣かせな表現です。

フィンテックについては第97回で取り上げましたが、モバイル決済などの技術をどんどん普及させているAnt社は今後どんどんグローバル化を進めていくようです。このような動きに従来型の金融機関はどう対応していくのでしょうか。アリと銀行マンの戦いでは、どちらが勝つのでしょう? 今後も注目のトピックです。

2017年8月21日

第104回 glamping, staycationとは?

皆さん、こんにちは。日本はちょうどお盆休みの時期ですが、いかがお過ごしでしょうか。欧米も休暇シーズンなので、今回はホリデーに関連した記事と用語を取り上げます。

まずはglamping。英エコノミスト誌2017年8月10日号では、中国でglampingが流行っているという記事が掲載されています(参照記事)。では、glampingとは何でしょう? これはglamorous campingの略で、同記事ではcamping minus the hassle and grunge, usually in pre-erected and well-appointed tentsと説明されています。実際にテントを張って、キャンプをした経験のある方だとよくご存知だと思いますが、何もないところにテントを張って寝泊りするのは、楽しい反面、色々と大変です。そこでテントを張ったり、片付けたりなどの面倒な面を省いて自然の中でのキャンプを楽しめるのがglampingです。最近ではWifiや電源、バスルーム付きなど、贅沢度が高まっています。イギリスなどの欧州ではかなり前から流行っていて、グリーン家も7,8年前に経験しました。

glampingができる場所をglampsite、利用者をglamperといいます。

イギリスでは年次休暇(annual leave)を利用して夏に2~3週間休みを取って旅行をする(go on holiday、vacationは米語) のが一般的です。フランスやスペイン、ギリシャなどの大陸ヨーロッパで過ごす人も多いし、少し遠出してアメリカに行く人も珍しくありません。

ところがここ数年はstaycationという言葉をよく聞きます。これは、stayとvacationを合わせた造語ですが、ここでのstayは「海外に行かずに自国内に滞在する」という意味です。金融危機以降ポンドが急落し、海外旅行が高くつくようになったので国内で休暇を取る人が増え、staycationという言葉も流行るようになりました。宿泊せずに、日帰り旅行 (days out)で済ます場合もstaycationに入ります。今年はBrexitの影響でさらにポンド安となっているので、staycationが増加しているとのこと。イギリス国内で贅沢なキャンプ(staycation & glamping)も増えているようです。

グリーン家はこれまで日本で2週間ほど過ごすことが多かったのですが、今年はウィーンからブダペストまで猛暑の中360kmの自転車旅行をしました。ちょうど欧州に熱波(heatwave)が通過しているときで連日37度。ちなみに紅一点だった私は電動アシスト自転車(ebike)。それでも「もうダメか」とくじけそうになったり、涙が出そうになったりを繰り返しながらも、なんとか完走できました。毎日異なる町を訪れるのも楽しかったです。

苦しい思いをしてもやり遂げられると充実感があふれ出し、またやりたくなるのが不思議です。なんだか会議通訳と似ていますね。


2017年8月14日



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プロフィール

グリーン裕美

グリーン裕美さん
結婚を機に1997年渡英して以来、フリーランス翻訳・通訳として活躍。ロンドン・メトロポリタン大学大学院通訳修士課程非常勤講師。 元バース大学大学院翻訳通訳修士課程非常勤講師。英国翻訳通訳協会(ITI)正会員(会議通訳・ビジネス通訳・翻訳)。
グリンズ・アカデミー運営。二児の母。
国際会議、法廷、ビジネス会議、放送通訳(BBC News Japanの動画ニュース)などの通訳以外に、 翻訳では、ビジネスマネジメント論を説いたロングセラー『ゴールは偶然の産物ではない』、『GMの言い分』、『市場原理主義の害毒』などの出版翻訳も手がけている。 また『ロングマン英和辞典』『コウビルト英英和辞典』『Oxford Essential Dictionary』など数々の辞書編纂・翻訳、教材制作の経験もあり。 向上心の高い人々に出会い、共に学び、互いに刺激しあうことに大きな喜びを感じる。 グローバル社会の発展とは何かを考え、それに貢献できるように努めている。
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