HOME > 通訳 > 通訳美人道「5. 隙間時間の活用術」

通訳美人道 隙間時間の活用術
第1カ条 なぜ、隙間時間を?
 誰にとっても一日は24時間。やるべきことは沢山あるのに、なかなかこなせない。これは誰もが抱える悩みです。特にフリーの通訳翻訳者は次から次へと新しい業務があり、その勉強のほかに日々の暮らしをまわしていかなければなりません。そこで今回の美人道では隙間時間の活用術についてお届けしましょう。
第2カ条 キッチンタイマー、使っていますか?
 キッチンタイマーというと料理専用のように思えますが、実はこれぞ優れもの。細かい隙間時間を計るのに適しています。たとえば「あと15分で原稿を仕上げなければ」というとき、いちいち顔を上げて時刻を確認するだけで時間のロスが出てしまいます。でもタイマーを15分セットすればあとはひたすら作業に集中できるのです。私は複数のタイマーを活用しており、ねじ巻きタイプのアナログタイマーで最終時刻をセット。一方、デジタルタイマーは途中時刻を細切れに計るために使っています。ちなみに通訳業務の際はテンキー入力型のタイマーを愛用。「ピピピ」のアラーム音の代わりにライトが使えるので、同通ブースで重宝しています。通販で購入できます。
第3カ条 「レンジで1分」の間に何ができる?
 たとえばご飯をレンジで温めなおすとき、その1分間でできることを考えてみましょう。洗い物をする、家具のホコリをティッシュで拭く、スクワットをやる、ラジオニュースの日本語シャドウィングをするなど、ほんのわずかな時間でできることは沢山あるはずです。他にも洗濯機が回る時間が40分であれば、その40分間で完結できる仕事をするなど、家電に要する時間をうまく活用するのも一案です。
第4カ条 郵便料金、車内の読書は駅で時間を区切る
 私にとって電車の移動時間は貴重な読書タイム。好きな本を車内でひたすら読むのが理想ですが、たいていは新聞や仕事資料の読みこなしに費やされています。そこで新聞もダラダラ読むのではなく、途中駅をターゲットにしてそこへ到着するまで読了するようにしたところ、新聞にかかる時間が大幅に減りました。ポイントは立ったまま、ペンを片手に読むこと。座ってしまうとページがめくりにくく、また、紙面全体を俯瞰しにくいからです。大事な記事や気に入った表現は赤ペンでチェックし、あとで切り抜きます。ただし仕事の資料については機密情報というものもありますので、部外秘のものは自宅で読むようにしましょう。
第5カ条 勉強時間はわざわざ作らなくても目の前に
 我が家のように子どもたちが小さいと、じっくり机に向かって「さあ、勉強!」というわけにはなかなかいきません。でもまとまった勉強時間がなくても通訳訓練は工夫次第。たとえば通訳者にとって大事なのは歯切れの良い話し方。これも家族との日常会話をきちんとした発音で話すよう意識するだけで大幅に違ってきます。子どもに絵本を読み聞かせる時も、ただ何となくではなく、鼻濁音や抑揚に注意するだけで、立派な朗読の練習に。腹式呼吸の声出しは、たとえば宅配便を受け渡す際や店員さんと話すときなどに意識してみてはどうでしょう。ちなみに私は仕事がない日でも家族以外の少なくとも3人と話すようにしています。天気の話題やちょっとした会話などをするだけですが、良い気分転換になります。
第6カ条 思い切ってプロに頼む
 どんなに頑張っても自分より上手にできる人がいるのであれば、潔くプロに頼んでみましょう。たとえばレンジフードやエアコンフィルターの掃除など、私自身、長時間悪戦苦闘したものの、今ひとつということが何度もありました。「掃除=エクササイズ」と割り切るのも手ですが、レンジフードの場合、こびりついた油はそのまま。そこでプロにお願いしたところ、わずか1時間でピカピカになりました。約1万円で貴重な1時間を手に入れたと思っています。
第7カ条 時間節約アイテムを取り入れる
 我が家は4人家族で子どもたちは幼稚園・保育園通い。毎日大量の洗濯物が出ます。そこで引越し当初にガス衣類乾燥機を導入。「ハンガーや物干しサークルにかけて洗濯竿につるし、夕方取り込んでハンガーからはずしてたたむ」という手間が乾燥機だと一気に省け、わずか50分でふわふわに乾きます。毎日確実に乾くので、洗い換えを予備にそろえる必要もなくなり、たんすの引き出しにも余裕が出るようになりました。時間節約アイテムは時間だけでなく、空間も節約してくれるので重宝しています。
 一方、他の家にあって我が家にないものはオーブントースターや炊飯器など。パンはグリルで焼き、ご飯はお鍋で炊いているので特に不便を感じません。これも慣れなのでしょうね。自分にあった時間節約アイテムを取り入れてみましょう。
第8カ条 ほんの一手間 vs 手間をかけない
 限られた時間を有効に使うには、どこに手間をかけ、どこを省くかという割り切りも必要です。私が手間をかけるのは、たとえばだし昆布を一口サイズに切っておくこと、野菜のまとめゆでなどです。昆布を朝、お鍋につけておくだけで夕方までにはおいしいだしがとれます。あとは具を入れればお味噌汁の出来上がり。また、ほうれん草などの野菜は買ってきたらすぐに洗い、冷蔵庫にしまう前にゆでてしまいます。毎回冷蔵庫を開けるたびに「あ、しなびてきたからゆでなきゃ」と思いつつ腐らせてしまうより、買ってきた当日に勢いで調理してしまうほうが後々の手間が省けます。一方、市販の冷凍野菜や缶詰などをストックしておくことで、手間をかけずにおかず品目を増やせます。一日30品目を食べるのであれば、ゴマ、とろろ、麩などの乾物も大活躍してくれます。
第9カ条 本の読み方
 私の場合、仕事関連の実用書などは相当のスピードで読むようにしています。これは一仕事に対し複数の文献やネットなどを読んで背景知識を叩き込まなければいけないからです。私の本の読み方はかなりおおざっぱで、まず「前書き→あとがき→目次」にざっと目を通します。そして目次を見渡し、自分が読みたい部分に赤ペンで印をつけ、印をつけた章や項目から読み始めます。自分の関心事項を最優先させて読むと、「知りたい情報」がまず頭に入ってくるのです。必要情報を仕入れたら、あとは飛ばした部分をざっと読んで読了です。本については、どんなに大枚をはたいてもつまらないと思ったら読むのを止めます。なぜなら時間がもったいないからです。小説のように一字一句じっくり味わって読むときは別ですが、それ以外の書籍はたいていこうした読み方で対処しています。
第10カ条 本当にやらねばならないことは既にやっているはず
 世の中には時間管理術や掃除法など大量の書籍が出版されています。すべてのノウハウを取り入れるのは無理ですので、自分のライフスタイルにあったものだけを日常生活に組み込んでいくのがポイントです。大切なのは「工夫はする。でも完璧はめざさない」という姿勢。最低限の掃除、洗濯、料理といった家事は誰もがやっているはず。つまりやらなければならないことは既に着手している一方、延び延びになっている項目は喫緊の課題ではないと言えるのです。やらなくても支障がそれほど出ていないのであれば、潔くあきらめることも必要です。大事なのは隙間時間を活用して、昨日より少しでも何か達成できればそれで十分ということ。あとは工夫次第です。Good luck!!

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プロフィール

柴原早苗

柴原 早苗さん
上智大学卒業、ロンドン大学LSEにて修士号取得。ロンドンのBBCワールド勤務を経て現在はCNNj、CBSイブニングニュースなどで放送通訳者として活躍中。 アルク「English Journal」でBBC Newsを監修した後、現在はNHK「ニュースで英会話」ウェブサイトの日本語訳・解説を担当中。 現在は通訳学校でも後進の指導にあたる。ESAC英語学習アドバイザー資格制度マスター・アドバイザー。 著書に「通訳の仕事 始め方・稼ぎ方」(イカロス出版、2010年:共著)。