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英語でプレゼン

英語でプレゼンテーション

 人前で話すのは苦手、という人は結構多いのではないでしょうか。それほど苦手意識は無くても、「できることならなるべく人前で話す機会は避けたい」という人も含めれば、きっとほとんどの人は多くの人の前に立って話すとなると、やや抵抗感を感じるでしょう。そしてさらに外国語である英語で話さなければならないとなれば、それは体中が緊張で震えるような感覚を覚えるかもしれません。もちろん、すぐにプレゼンテーションが上手になるコツは存在しませんが、英語の学習と同じように長期的に物事を捉えて、今日のプレゼンより明日のプレゼン、そして明日より明後日のプレゼンがよりよいものとなるような努力を積み重ねると、必ずプレゼンテーション能力は向上します。

プレゼンテーションの意味

 有名なビジネスマンは、個人でプレゼンテーションのコーチを雇っていることが多くあります。プレゼンテーションが非常に上手だと言われているオバマ大統領も、スピーチなどの前にはかなり綿密な準備を行い、個人的に信頼のおける人をスピーチライターとして雇用しています。ある一流IT企業のCEOは、プレゼンテーションを1回するために、最低5回のドライランを行うと言っていました。ドライランというのは、聴衆がいると仮定して、プレゼンテーションを通しで行うリハーサルのようなもの。しかしリハーサルと違って、音声や照明、パワーポイントの調整をするのが目的ではなく、あくまでもプレゼンテーションの確認です。話し方、間の取り方、話す速度などをコーチと一緒に確認するのです。

 これほどまでに準備を細かく行うのは、これらのトップリーダーがプレゼンテーションを単純に情報を共有、発信する手段の1つとみなしていないからです。物事を見かけで判断してはいけない(英語ではDon't judge a book by its cover.と言います)のは当然ですが、情報の伝達方法によって、それを受け取る人の感じ方は大きく変わるもの。プレゼンテーションの出来次第で、ビジネスパフォーマンスが左右されると言っても、それは過言ではありません。ですからプレゼンを行う寸前にパワーポイントが完成したり、資料をまとめ終えたりするのでは遅すぎるのです。プレゼンテーション一時間前になったら、コーヒーを飲んでくつろぎ、好きな音楽でも聴きながら資料に少し目を通す程度の心持が望ましいでしょう。

IARメソッドを使ってみよう

 IARメソッドとは、アメリカの大学で使われる言葉です。多くの学生は必修科目としてWritingの授業を履修することが求められ、そのなかでAcademic WritingやCreative Writingを学びます。その一環として、いかにして自分の考えを論理的に相手に伝えるかを身につけます。その手法の1つがIARメソッドと呼ばれるもの。

 IはInventionの頭文字です。実際にプレゼンテーションを行う前に、様々なBrainstormingを行いますが、その過程です。もちろん、プレゼンテーションの目的がはっきりとしていなければならないのですが、それに加えて、「どのようにして視覚的にアピールできるスライドを作るか」「どのようなビデオや音楽を使うか」「文字ばかりのスライドにならないようにするには、どのようにするか」「有名なビジネスマンの名言を入れるのはどうだろうか?」など、色々なアイデアを考えます。TVドラマを作るときに、実際の撮影前にものすごい時間と労力をかけて計画を練るのと同じように、Inventionの過程でどれだけの作業をするかが、最終作品のプレゼンテーションの完成度を大きく左右します。

 AはArrangement。「英語のロジック」のコラムで詳しく説明していますが、英語のロジックと日本語のロジックには大きな違いがあります。英語では最終結果や結論を最初に述べ、その説明を後で行うほうが一般的には効果が高いとされています。英語でメールを書くときのアドバイスが、ロジックのコラムの中でなされていますが、それと同じ様にプレゼンテーションも構成できます。まずはプレゼンテーションの目的を伝えます。「このプレゼンテーションでは、2011年度上半期の業績を報告します」と言った形です。そして「A、B、Cというステップで報告します」という風に、ロードマップを示します。これによって、聴衆はどのようにして皆さんのプレゼンテーションが行われるか、明確な情報を得ることができます。また、これはそれぞれの情報が、他の情報とどのようにつながっているか、聴衆がよりよく理解できるようにもなります。それが終わったら、「ハイライトとなる情報は、D、E、Fです」というように、最も大切で、聴衆に持ち帰って欲しい情報を述べるといいでしょう。それによって、聴衆はプレゼンテーションの中身を聞きながら、どの情報が特に鍵となるか分かります。

 そして3つ目はR。Revisionです。Revisionと聞くと、編集や校正といった概念を想像しがちですが、Reviseには「変化をもたらす」という意味もあります。IARのRで重要なのは、プレゼンを作りなおしたりすることではなく、「このプレゼンによって、どのような変化をもたらしたいか」を考えることです。「プレゼンを通して、我が社への理解を深めてもらいたい」「プレゼンを通して、商品を買ってほしい」「プレゼンを通して、我が社の社会的貢献度を知ってほしい」など色々あるでしょう。「上司にやれと言われたから」という素直な気持ちもあるでしょうが、それでもこのプレゼンで何をReviseしたいかを考えてみましょう。

日本人に多いミス

 プレゼンテーションには自分らしさがあっていいでしょう。そして日本人がプレゼンをしているのですから、外国人と同じようなプレゼンテクニックをまねる必要は必ずしもありません。国際会議で発表をする日本人が、プレゼンの前後に深々とお辞儀をした、ということを目にしたことがあります。これは自らの文化的アイデンティティーを国際舞台でも失わずにいる、非常に素晴らしい例です。しかし多くの日本人に共通するミスもあり、それがプレゼンテーションの効果を失わせていることもあります。

 まずは「ご紹介に預かりました......」というのは不要ですね。日本人のスピーチを同時通訳している場合、多くの同時通訳者はI am XXXXX who has just been introduced.と訳すことはしていません。その代わりに、Thank you very much for your kind introductionなどと言い換えています。それが英語では自然です。特に紹介されていない場合は、Good afternoon, ladies and gentlemen.などとしてもいいですし、I would like to thank all of you for being here today.などの挨拶もいいですね。聴衆に対してそこに来てくれたことを感謝したり、発表する機会を与えられたことに対して感謝するのが一般的です。

 パワーポイントを進める上で、「このスライドは○○を示しています」という説明は本当に必要でしょうか? 大抵の場合は、すでにスライド上で明らかでしょう。ですから、わざわざThis slide is....やThis slide shows...などという必要はほとんどありません。その代わりに、Take a look at this slide. やPay attention to the right hand side of this slide.と言った風に、「ここに注目してください!」という内容を伝えるほうが効果的です。また、Let me show you...やThis slide may answer some of the questions you may have now...などといったバリエーションがあるといいですね。

 部下が準備したスライドを上司が発表する場合、その上司がスライドの内容をそのまま読み上げて、そこでスライドの内容を確認する、ということがあります。これでは聴衆が「ああ、この人にとって、それほど重要なことではないんだな」と感じても仕方ありません。次のスライドが何の情報なのか、それぞれのスライドの重要な点は何かなど、すべて把握した上でプレゼンをしなければ、効果は高まりません。プレゼンテーションを十分に把握していれば、次のスライドを見る前に、You will be happy to see the next page. などといって、聴衆の関心をひくこともできます。本当の意味で自分のプレゼンテーションを理解している場合、スクリーンを見なくてもスクリーン上の情報が分かっていますから、聴衆から目を離さずに、どんどんと発表を進めることができます。一流のプレゼンターを考えてください。スクリーンに目をやることはほとんどありませんよ。「時間がない」と思われるかもしれませんが、プレゼンの準備に時間を割くことは決して無駄ではありません。

 日本人が苦手とするのは間です。Silence is golden.の文化でありながら、人前に立つと焦って早口になったり、「ウー」とか「アー」とか言ってしまいますね。幼少時代に校長先生の訓話で、「エー」ばかり言う先生はいませんでしたか? 今は自分がその立場、ということも多いでしょう。自分のプレゼンを録音して、聞きなおしてみると、自分の癖が分かるものです。より多くを発声するということは、本当に重要な情報が埋もれるということ。賢者は多くを語らず、口を開いたときには端的でありながら的を得た発言をするとされますね。それをモデルにするといいでしょう。

 プレゼンの最後にThis is it.とか、That's allと言ってしまうのも、日本人の特徴。「以上です」と言ってもおかしくないですが、それを英語にするとおかしく聞こえてしまうのですね。最後のスライドが終わったら、1拍おいて、Thank you.と言えばそれで十分です。

プレゼンで一番大切なのは......

 プレゼンテーションをする上で、一番大切なのはテクニックではありません。これまで、避けるべきミスや、いかにしてプレゼンを組み立てるかなどのテクニックをご紹介しました。しかしプレゼンテーションだって、数百人の聴衆の前で行うスピーチだって、最終的には人と人のコミュニケーションです。プレゼンテーションのテクニックを学ぶことで、見た目は美しく、かっこいい、洗練された作品を作り上げることができるでしょう。それである程度の高評価を得ることもできるはずです。しかし本当の意味で、継続的に効果的なプレゼンテーションをするには、「相手に伝えたい」という真摯な気持ちが不可欠です。

 例えばシャドウイングの解説をしたコラムで、「大切な人に伝えたいと言う気持ちを忘れずに」と書きました。シャドウイングに慣れてくると、特に考えなくても20分程度のシャドウイングは簡単にできるもの。そしてある程度の正確性も達成できます。しかし、それでは本当の効果はありません。コミュニケーションはテクニックではなく、気持ち。日本の映画や文学で、話下手、もしくは自分の感情を伝えるのが苦手な人が、不器用だけれど好きな人に気持ちを伝えて、それがハッピーエンドにつながると言うもがたくさんあります。これは欧米の映画やストーリーでも同じ。人が何に惹かれるかと言えば、それは表面的な美しさではなく、その奥深くにある気持ちです。

「上司に言われたから」というプレゼンがなかなか成功しないのは、部分的にそんな気持ちがプレゼンで現れてしまうからでしょう。IARのRevisionで明確にしたプレゼンの目的を胸に、「伝えたい」という気持ちを持ちながらプレゼンを行えば、次第に自信がつくことでしょう。

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