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知ってトクするシゴトの韓国語

ハイ・キャリアに韓国語関連コラムが初登場! 大学卒業後に韓国語の学習を始め、韓国留学。海運会社勤務後、2004年に韓国語スクールを設立した幡野さん。2010年には中国語講座も開始し、自身も中国語の学習を始め、現在上級レベルを目指し奮闘中なのだとか。そんな幡野さんから、韓国語の話、語学学習の話、そしてスクール運営をする中での様々な風景について語っていただきます。

第12回 韓国「通訳翻訳大学院」合格体験記。あきらめないこと

 韓国には通訳者を目指す人々が進学を志望する「通訳翻訳大学院」という通訳訓練専門機関があります。第10回の当コラムで、チラッとご紹介させていただいたこともあります。

 通訳翻訳大学院は通常、年に一回試験が行われますが、当校の「通訳翻訳プログラム 」に通われていた若き受講生二名が、名門、梨花女子大学校通訳翻訳大学院に合格されました。お二人は今年の春、大学院進学を目指し渡韓。秋までソウルにある通訳翻訳大学院入試のための準備学院に通い、今回の快挙となりました。

 ここ何年かは通訳翻訳大学院を設置する大学も増え、私が留学をしていた90年代後半ほどの「'超'狭き門」ではないながらも、それまでに受ける訓練の厳しさに多くの志望者が脱落していく、という話を聞きます。「한국말 잘 하시네요-.(ハングンマル チャラシネヨ~/韓国語がお上手ですねえ」と、優しい韓国人に褒められながら楽しく韓国語を学習してきた学習者にとって、通訳訓練の厳しさはまさに青天の霹靂ともいえるでしょう。

 しかし、通訳や翻訳のプロとして働くとなると、それこそ厳しい世界に身を置くことになるので、厳しい言いかたをすれば、この'淘汰'は必要な過程とも言えると思います。

 合格者である出身生の中のお一人は「通訳学科」に、もうお一人は「翻訳学科」に合格されました。先日、通訳学科に合格された金木優美子(かねきゆみこ)さんにインタビューさせていただいたのですが、韓国の準備学院のとある先生からは、授業初日に「その発音なら、どこを受けても受からない」と言われたそうです......! その他、いろんなエピソードをお伺いしましたが、くじけたり、嫌になったりするだろうと思われるようなことがあっても、決してあきらめなかったんですね。

 金木さんへのインタビュー内容は「All About 韓国語」の記事としてまとめました(「難関!韓国の「通訳翻訳大学院」に合格する秘訣 」 )。通訳者になろうと思ったきっかけを聞いたときはジーンときました。このように偶然性があり、かつシンプルな出来事が、自身の将来に影響を与えことがあるんですね。

 通訳翻訳大学院を目指す方だけでなく、語学学習に興味のある方なら楽しく読んでいただけると思います。是非ご覧ください。


第11回 通訳訓練を始める前に、しておくべきこと

 韓国語「通訳翻訳プログラム 」を3クラス開講している当校で、このたび「準備クラス」を新設することになりました。既存の3クラスは「実践クラス」となり、これまでと同様、様々な韓国、日本の旬の話題を取り入れ、通訳の実践を積んでいく予定です。

 「準備クラス」を新設することにした背景にはいろんな要素があります。通訳クラスに興味があって来校される受講生の皆さんの様子を見ていると、いくら上級者であるとはいっても通訳の経験のない方は特に、文章を聞いて即時に訳出しをするということに戸惑う方が少なくありませんでした。また、普段ニュースや新聞をあまり読まない、という方も多く、その場合、韓国語の実力以前の問題として、社会事情に精通しないことによる、文章読解力の欠如が問題としてありました。

 そして、講師側からこれまで寄せられていた意見としては以下のようなものがありました。「通訳の訓練を始める前に」、

1. もっと語彙力をつけてほしい
2. もっと発音を良くしてほしい
3. 様々な話題の文章を読むことに慣れていてほしい

というものです。1の語彙力に関しては言うまでもありません。2の発音に関しては、第2回のコラム「「ご案内可能だが、努力要」の訳(わけ)」 で書かせていただいたように、上級者なら身に着けておいてほしい韓国語の音変化が実現できていない方が割と多いのです。しかし、韓国語の実力は、わかりやすいこの発音部分で計られてしまいがちなのが現実です。

 3に関してですが、通訳の訓練においては様々な分野の語彙力を増やし、知識を深め、現在・過去問わずあらゆる事情に精通するため、資料を読み込んでいきますが、自由に興味のあるものだけ読んでいた頃とは違い、中には自身にとって興味のない、苦手な分野の資料を読むときもあります。そしてここからが大変なのですが、読んで、「へぇ~」となるだけでなく、人に説明できるくらいまで深く理解しないといけません。それでないと通訳や翻訳ができないためです。

 余談ですが、通訳をしていて、「はぁ?」という顔をされたことのある方もいらっしゃるかもしれません。それは字面(じづら)だけを訳し、文脈を捉えた通訳をしていないためということもあるでしょう。

 また、日韓通訳は日英通訳などに比べるとニーズが少ないので、専門分野はなかなか作れないのが現実です。ありとあらゆる分野の通訳、翻訳ができるようにならないといけません。

 もう一つ個人的に付け加えると、KBS(韓国放送公社)ニュースのアナウンサーくらいのスピードで韓国語の文章を読めるようになるといいと思います。そうしないと、そのようなスピードの文章を聞いたり、即時に理解したりすることが難しいためです。

 以上のような条件がクリアになって、はじめて通訳の訓練ができるようになります。これまでは「通訳翻訳プログラム」の授業の中で、ご自身で努力を重ねながらこれらの課題をクリアしてほしいと思っていましたが、やはり、「訳を出す」という特殊な技術を学ぶにあたっては、その周囲の必須項目は一つでもクリアしておくと良いのでしょうし、それをクリアするためのお手伝いもする必要があるように感じました。「準備クラス」を新設した背景には、そんな理由があります。

 当該クラスは、「通訳者になるという目標はないけれど、韓国語上級者としてさらにレベルアップしたい」という方にもおすすめしたいです。これからも引き続き、韓国語学習者の皆さんの実力アップを応援させていただきたいと思っています。


第10回 一流でなくとも、「二、三流の一流」を目指す

 前回のコラム で「第7回オレカテ」に参加したことで思い出した、とある翻訳の事例について書かせて頂きました。その際、「第8回オレカテ」は私が講師になると申し上げましたが、先日、その講演を行って参りました。

 題名は「シゴトの韓国語と韓国語のシゴト」。韓国語を活かす仕事にはどのようなものがあるか、そして仕事に活かすための語学力はどの程度必要かなどについて、これまで当校で学ばれてきた多くの方の事例をご紹介しながら、お話しました。

 語学を活かす具体的な仕事として紹介が欠かせないのは「通訳者」でしょう。しかし、この「通訳者」にもいろいろあります。私はまず、「一流の通訳者」と「二流、三流の通訳者」とに分けました。

 「一流の通訳者」は、専門機関で同時通訳をはじめ、ありとあらゆる通訳の訓練を受け、国際会議などを中心に活躍する方々。現在このフィールドで活躍する日韓(日本語・韓国語)通訳者は、たいてい韓国の通訳翻訳大学院を卒業し、実践を積んでいる方がほとんどのようです。韓国にはどのような通訳翻訳大学院があるのか、その大学院に入るための予備校的な専門学校については、こちら(「All About 韓国語~韓国の「通訳翻訳大学院」と「入試準備学院」について)をご覧ください。

 自身の語学力が上級レベルに近づいてきて「通訳者」という仕事に興味を持ち出す頃に想像する姿はまずこの一流の通訳者かもしれません。しかし、優秀な韓国人通訳志望者と共に大学院に入り、厳しい訓練についていき、無事卒業をし(卒業試験にパスできないこともある)、さらにそこから安定的に仕事をもらい実績を積んでいくという王道を突き進める人はほんのわずかなのが現実です。

 現在、首都圏で活躍する一流の日韓通訳者は、私の個人的感覚としては多く見積もっても20~30人程度でしょうか(通訳の先生方からは「もっと少ないよ」と言われそうですが......)。そう、一流の通訳者として活躍するのは、例えて言うならサッカーの日本代表に選ばれるくらい、すごいことなんですよね。

 しかし、実はこのような一流の方ばかりを「通訳者」と呼ぶのではありません。「通訳者」を必要としている場所は無数にあり、必要とされる場所で素晴らしいパフォーマンスを発揮する方々もたくさんいます。このような場で活躍する通訳者を、勝手ながら「二、三流の通訳者」と呼ばせて頂きましたが、あくまでも一流との対比で、この「二、三流」の通訳者として成功するためにも、一流の方々と肩を並べるくらいの志(こころざし)、相当の訓練量、ビジネススキルや知識が必要です。

 当校の「通訳翻訳プログラム 」には、この「二、三流」のフィールドで活躍する方々がたくさんいらっしゃいます。多くの上級者にこうなるチャンスがあります。具体的にどのような場面で活躍されているのか、当校の受講生の方の中から3名をご紹介しましょう。

 Sさんは日本語ネイティブ。市の国際交流団体職員として働いています。担当業務は韓国語による窓口・電話相談対応など。外国人住民が多い市なので、外国語による相談対応需要は大変多いそう。ほかにもSさんはコミュニティ通訳者として、県の医療通訳派遣に応じたり、市民通訳ボランティアも行い、医療現場や学校教育現場において、日本語が不得意で不便な思いをする方々のお手伝いをしています。韓国語を活かして人々の生活を豊かにするお手伝いをするのは、まさに究極の社会貢献といえるでしょう。

 次にIさん。Iさんは韓国語ネイティブ。IT業界のSE、韓国語講師などの職を経て、ゲーム会社に就職し、社内で欠かせない専属通訳者として活躍しています。ゲーム会社は日韓ビジネスの中でも好調の業界。そのような業界では、一般社員に通訳を任せたり、外部に依頼したりせず、Iさんのように専属の通訳者を置いています。Iさんの仕事としては、会議通訳、各種書類の翻訳など。ゲームに関する用語は入社してから培ったものももちろんありますが、SE時代の経験も生きているそうです。

 最後にKさん。Kさんは日本語ネイティブで、エンターテイメント会社の社員です。K-POPファンならよく知る男性歌手グループの、日本市場でのリリースを担当しています。韓国側の事務所とのやりとりや契約関連、コンサートやイベントの企画や運営に携わるのはもちろんのこと、日本市場で発売するCD楽曲の日本語歌詞翻訳まで手掛けたこともあります。このように、韓国との交渉や楽曲の翻訳まで携われるのは、かなり高いビジネススキルと通訳翻訳能力があってこそでしょう。

 さらに付け加えますと、受講生の方の中にはこのように会社などの事業体に所属せず、フリーランサーとして通訳・翻訳業をこなす方もいらっしゃいます。

 以上、具体的な事例として3名の方をご紹介しましたが、皆さんに共通しているのは、専門分野で強くなり、さらに通訳・翻訳技術を磨いてそこで韓国語力を発揮する、という点です。

 とある通訳の先生が「通訳者は究極のサービス業だ」とおっしゃっていました。そう、通訳は「人と人との心をつなぐ仕事」です。自身がやりがいを持って取り組める仕事を見つけ、そこで韓国語力が発揮できることこそ、その方にとっての最大の自己実現となり得るのではないでしょうか。

 一流の通訳者になれたらそれはそれでとてつもなく素晴らしいこと。しかし、それ以外にも意義のある通訳の現場はたくさんあり、ありがたいことに多くの人にこのフィールドで活躍するチャンスがあります。ぜひ、「二、三流の一流」を目指していこうではありませんか。


第9回 「察してもらおう」とする日本人の日本語を、どう通訳・翻訳するべきか

「察してもらおう」とする日本人の日本語を、どう通訳・翻訳するべきか

先日、韓国フードコラムニストの八田靖史さんが主催する「第7回オレカテ(俺の韓流家庭教師)~韓国関係の仕事をする人、したい人たちの非営利勉強会」に参加してきました。この日の講師は、芸能界きっての韓国通で知られる女優の黒田福美さん(イベント詳細)。テーマは「となりの韓国人~傾向と対策」。黒田さんの韓国との付き合いの始まり、地方を旅するようになった理由、韓国・韓国人との仕事やビジネスでの付き合い方の心構えなど、黒田さんの、韓国・韓国人に対する変わらぬ情熱と愛に満ちあふれたあっという間の2時間でした。

その講演の中で黒田さんは、韓国の大陸性と日本の島国性について、「はっきり言わないとわからない韓国人」「はっきり言ったら失礼だと思う日本人」というふうに対比させ、その事例についてお話しくださいました。例えば飛行機の機内で日本人が「ビールありますか?」と聞く。これは「ビールが飲みたいので、ビールを持ってきてほしい」ということ。相手の反応として求めているのは「はい、ございます。お持ちいたしましょうか」です。しかし、場合によっては聞かれたほうは「あるかないか」を聞かれただけと思い、「はい、ございます」という答えしか返ってこないかもしれない......。

そう、日本人は、どちらかというとハッキリとものを言わず、無意識のうちに「察してもらおう」としていると思います。すると、通訳や翻訳の場面でどのようなことが起こるか......。私はこの日、数年前に当校で手がけた一つの短い手紙の翻訳のことを思い出しました。

「韓国語」「中国語」という看板を道ばたに掲げている当校に、「看板を見て」と、一人の初老の日本人男性が突然訪ねて来られました。なんでも、「息子がとある国の女性と国際結婚をしたいと言って困っている。ご破算にしてもらいたく(婚約を解消して欲しく)、その女性あての手紙を書いたので、翻訳をして欲しい」とのこと。「息子は何を言っても聞く耳をもたないから、相手に直接手紙をあてて(別れるよう)説得しよう」ということなのでしょう。

原稿をお預かりし、翻訳を承りました。A4用紙一枚に収まる手書きのお手紙。翻訳も手がけている当校のネイティブ先生が翻訳をしてくださいました。その内容についてはもちろんすべてをここに書くことはできませんが、かなり省略すると以下のような内容です。

「あなたたちはまだ若いからよく分からないかもしれないが、生まれた国が違うといろいろ大変なことがある。よく考えるように」

日本の文化で育っていたら、ここから「相手のお父さんが私たちを反対している。すなわち、別れて欲しいということなんだ」ということを汲めるかもしれません。しかし私は、これではきっと男性が手紙を書いた(別れて欲しいという)意図は、相手の女性の母国語に翻訳したところで通じないだろうと思いました。

そこで、翻訳をしてくださったネイティブ先生に「お父さんが別れて欲しいと思っていることは、手紙を読めば通じるでしょうか」と尋ねたところ、答えはNO。「おそらくこの文章を見たら、受け取った側は'相手の男性のお父さんは私たちを心配してくれている'としか思わないと思う」とのこと。

もう翻訳は済んでいましたが、依頼者の男性に「これでは通じませんよ。別れて欲しいなら、はっきり'別れてください'と書いた方がいいですよ」と、言うべきなのか悩みました。しかし、一度しかお目にかかっていない方に対し、そんな出過ぎた行動にはでられません。また、通訳者の基本的な心構えの一つに「私情を入れない。忠実に耳に入ってきた文章を訳す」ということがあります。

でもこれは「私情」ではないのではないか。当社は「心の橋渡し」をするために語学教育事業を行っている。男性が「当たり前」だと思っている「察し」の文化は、日本独特のものであること、そして他国では、はっきりとものを言うことが求められる、ということも伝えないといけないのでは、と葛藤しました。

例えばこれが、当事者同士が揃っている通訳の現場などであれば、「それは言い換えると、こういうことなんですね」「はい、とどのつまりはそういうことです」というやりとりを通じ、例えばこの事例で言うなら「別れて欲しい」という一言を本人から引き出すことができるのですが、文章をお預かりする翻訳だとそうはいきません。

結局、男性には何も言わず、お預かりしたお手紙をそのままその国の言語に翻訳したものをお渡ししました。ふと思い出しては、「はっきり'別れてください'と書いたら、彼女はショックを受けて二人の関係はこじれ、本当に別れてしまうかもしれない。しかしそのままだったら、'お父さんは心配しているのね。でも、私たちは大丈夫よね'と、なんだかんだ言いながら結婚して幸せになっているかもしれない」「いや、結局男女の間柄は本人同士の想い次第だから、たとえ親からの手紙でも、一通の手紙で左右されることはないのでは」など、あれこれと考えを巡らせています。私のとった行動が良かったのかどうか、いまだにわかりません。皆さんだったらどうされるでしょうか。

さて、第八回のオレカテは、「シゴトの韓国語と韓国語のシゴト」というテーマで、私が講演をさせていただくことになりました。韓国語を仕事で活かすにはどれくらいの韓国語力が必要なのか、韓国語を使った仕事にはどのようなものがあるのかなど、当校の受講生の皆さんやプロの先生方の事例をご紹介しながら、お話ししたいと思っています。どうぞよろしくお願いします。


第8回 もう少し大らかになって、韓国語も「世界語」に。

強豪、大阪朝鮮高等学校ラグビー部を追ったドキュメンタリー映画、『60万回のトライ』を観てきました。社会的問題を扱いながらも暗く重い要素を感じさせず、スポーツマン精神に溢れた若者たちの、爽やかな笑顔と力強いスクラム、タックルが感動的な映画でした。

朝鮮学校については映画の中で語り手さんが語ってくれますが、第二次世界大戦後、朝鮮半島に帰国しなかった人たちが民族教育を受けるために設立された学校です。いまでも幼稚園から大学までがあり、当校にも「高校卒業まで朝鮮学校でした」「朝鮮大学校まで進みました」という方が韓国語を、多くは通訳や翻訳を学びにいらっしゃいます。

皆さんに共通して言えるのは、語彙の豊富さと流ちょうさ。日本語ネイティブではなかなか身につかない高級語彙をサラリと使いこなします。話すスピードも速く、羨ましい限りです。

しかし一方で、イントネーションや独特の語彙などにコンプレックスを持つ人も多く、「直したい」と口々におっしゃいます。どうも、韓国出身の、韓国語ネイティブの人々に指摘され、気にしてしまうようです。

話は変わりますが、当校が約4年前に中国語講座をスタートさせたときの説明会で、「通訳案内士道場」を運営し、韓国語と中国語の通訳案内士の資格を持つ高田直志先生に「韓国語から中国語への招待状」というテーマで基調講演をしていただきました(当日の様子)。そのときのお話で非常に印象に残っているのが、「中国語は、英語のような世界語です」というお話。

中国は広く、55あまりの民族の集合体。民族によっては固有の言語があり、それ以外に共通語として使うのが中国語なので、例えば高田先生が中国で中国語を話すと、「外国人だろう」とならずに、どこか別の地方の人なのだろうなと認識される程度なのだとか。

私はその話を聞いて、「なるほど、それは居心地がいい。すぐに'外国人だろう。どこから来たんだ。イントネーションで(発音で)すぐ分かる'となる韓国、韓国語とは大きな違いだな」と思いました。

もう一つ。以前出場した「世界韓国語雄弁大会」で少し残念に思う経験をしました。中国の吉林省、延辺(北朝鮮との国境に近い中国の、朝鮮民族の人々が暮らす地域。)から出場した発表者のことを、審査委員長さんが講評の際に「この大会は韓国の大会。北朝鮮の言葉は使わないで下さい」とおっしゃったのです。彼女の発表は生き生きとしていて、表情も豊かでとても印象的だったので、驚きました。彼女のその後の残念そうな暗い表情は痛々しかったです。

以前、私は第二回のコラムで、「通訳を目指すなら、発音は良くないといけない」と書きました。確かに、テレビから流れる通訳者の日本語がバリバリの方言だったりしたらそれはそれで衝撃的なので(笑)それとは別の話として、日本で暮らす朝鮮学校の人々が話すことば、中国の吉林省の人々が話すことばも韓国語(朝鮮語)。せっかく「世界語」になり得る要素を持つのですから、もっと大らかになれないかなぁ、と思ったりもするのです。

「方言というレベルを超えた、地域独特の語彙、イントネーションがある」というのは、一時期の移民制度などを除けば、島国でほぼ散らばる必要性がなかった日本、日本語にはないことです。韓国語を愛する人間として、韓国出身の韓国語ネイティブの人たちにお願いしたいのは、すぐに「ソウルの標準語でない、おかしい!」となってしまうのではなく、あれも、これも、私たちの誇らしい言語、と大らかに捉えてほしいということ。

標準語は守りつつ、通訳者の発音・イントネーションも守られつつ(笑)、その他7,700万人といわれる朝鮮語人口(東京外国語大学の調査ページ「朝鮮語を知る~総論」)の人々が話すことばに対しては、「世界語」に近い許容性があるといいな、と思っています。



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プロフィール

幡野泉

幡野泉さん
早稲田大学第一文学部卒業。1998年、韓国・延世大学校韓国語学堂修了。韓国大手商船会社の日本総代理店に勤務後、有限会社アイ・ ケー・ブリッジ設立。04年には「シゴトの韓国語講座(現・アイケーブリッジ外語学院)」を開設し、ビジネス韓国語を中心とした講座運営を開始。同年、延世大学校韓国語教師研 修所、第20期研修過程修了。現在、「アイケーブリッジ外語学院」代表および「All About 韓国語」ガイド。著書に『明日から使えるシゴトの韓国語』(アルク)、『シゴトの韓国語 基礎編応用編』(三修社)、『リアルな表現が話せる!韓国語フレーズブック』(新星出版社)などがある。2010年の中国語講座開講をきっかけに中国語の学習を開始し、2012年にはHSK(新漢語水平考試験)の5級を取得。